1-2【今流行りの荒野行動みたいな?】
☆シンガー
アイドル風の衣装に身を包んだ、少女。シンガーはじっと座りこんでいた。今いる場所は地図の真ん中に書いてある、城の入り口。
これからどうするか。実はクリエイターとともに行動する予定だったのに、なぜか彼女はここにいなかった。本当にランダムに飛ばされたのだろう。
きっと彼女は怖くて震えてるはずだ。だって私でも怖いのだもの。みんな怖いに決まっている。
だから、私が手を差し出さないといけない。そのための力はこの手の中にあるのだから、やらないといけない。それが私に課せられた使命だ。
「——っく」
ゾクゾクする。こんな大役をやる事になるなんて、ここに来る前だと信じられなかった。大方これはテレビの撮影か何かなのだろう。
だからここで活躍しないといけない。視聴者に私は優しい女の子だと、教えてあげなければいけないのだ。
手にあるのはハートの装飾が施されたメガホン。どうやらこれを使えば辺り一面に声が届くと書いてあった。
ならばやることは一つ。メガホンを握りしめて、彼女は城の中に入っていく。高鳴る胸を抑えつつ、それでもニヤニヤと歪む顔は抑えることができなかった。
◇◇◇◇◇
☆クリエイター
「つまりこの世界は……」
「そうそう!今流行りのVRってヤツだよ!んで、このゲームはバトルロワイアルを体現したヤツ。今流行りの荒野行動みたいな?」
「それパクリゲーじゃ……いや、なんでもないっス。とにかく、みんなを倒せばゲームクリアってことっスね」
「もしくはあのジョーカーを倒せばいいのさ!」
クリエイターは目の前にいる少女と話をしていた。内容は、このマジカル☆ロワイアルについてどう思うか。だった。
少女……名前はヒーローというらしく、彼女いわくこれはゲームだと。なるほど確かにそう言われたら納得できる部分が多くなる。
しかし、このやけにリアルな草木の匂いなどはどう説明するのだろうか。そのことについてもヒーローは「ゲームも進化してるんだ」としか答えない。
この世界は夢じゃない。と。クリエイターは先ほど直感で理解した。だから、これはゲームだと理解するのは難しい。しかし理解したい自分もいた。
「もう一度確認するけど……僕のスキルは30分だけ変身できる。で、キミが……」
「あっはい。物を改造できるっス。このレンチ突っ込めばできるんスかね……?」
「まぁ、アレだね。試してみないとわからないってヤツ……それじゃ、どこに行こうか」
そう言ってヒーローは地図を眺める。どこにいくかなんて、突然言われてもよくわからない。なんとなく、ここに居続ける方が安全に思えた。
そう言えば自身のスキルだが、物を改造という、えらくふわっとした範囲ではあった。もしかしたら、自分の体も改造できるのではないか?やる勇気はないが。
「じゃ、ここ行こう!温泉!」
ヒーローが地図を見ながら突然声を出す。温泉に行くというが、念のため。なぜいくかを聞いてみた。
「えっと……なんでっスか?」
「入りたいから!ささ、ゲームでどこまで再現できてるか……試させてもらうぜ!!」
彼女は元気に歩き出した。クリエイターは少し悩んだ後、一人でいるよりマシかと決めて、彼女の後を追いかけたのだった。
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