「過去」
中学生という生き物はどうしてこうもすぐに好きな人が変わったり彼氏彼女を入れ替えたりするのだろうか。
ついこの間まであそこの二人とあそこの二人、そうかと思えば入れ替わってあそこの一人とあそこの一人、あそこの一人とあそこの一人なんてペアが綺麗に変わってたりもする。まったくもってわけがわからない。
まあ、かくいう僕も好きな人くらいは居たものだ。しかたないよな、健全な中学生だもの。
ただし、相手が問題だったのだ。だって、ねぇ、僕なんかよりもよっぽど明るくてみんなをまとめる、
こんな漫画みたいな展開あるのか、なんて当時の僕は慢心しながらちょこちょこアピールを続けていたのだが、あるとき上坂が行動に移した。行動に移すとはつまり「告白」である。
まあ、告白などといっても、もっと上の年代の、それこそ大人の告白とはわけが違う。
「好きです!付き合ってください!」
みたいな、そういうアレだ。とはいえ、大人の告白っていうものも偏見であることに違いはないし、それがそもそも幼稚なものであるのかどうか、僕は知らない。
小説なんかはよく読んだが、講○社はすぐベッドに倒れこむ。角○はベッドに倒れこむ前の段階の描写がハッキリしている。僕はそういう恋愛で行けば有○浩先生の本が好きだが、まあ、僕の好みなんてのはどうだっていい。
そういう小説を読む限りでは、こう、なんか流れで好きですとかは言わないような印象があるのだが、気のせいだろうか。こう、講○社の話をすればすぐに倒れこむのだから恋愛とか、告白とかもはやそういう概念は消し飛んでいる。有○浩先生の本なんかは自然と恋愛に発展していくことがおおいから…。
違う、僕はいいたいのはそういうことではない。
上坂は男子全員に、
「今日!放課後!アイツに!告白する!!」
と触れ回った。当然僕の耳にも届いたわけで、僕はとても気になり、他の男子たちにくっついてその様子を見に行くことにした。
校舎裏、上坂とその女の子が立っている。我々邪魔者はあちらからは見えぬよう、校舎の影に隠れて見守る。
「あの!好きです!付き合ってください。」
おっ、どうだ。
「ごめんね。私、好きな人他にいるから。」
ほう、好きな人が他にいる、とな。誰なのであろうか。
見事に上坂が振られ、上坂は三日ほどは落ち込んでいた。かと思えば四日後にはまたアプローチを始めたのであった。また、周知の事実となったことから場所を選ばずにアイツに「好き」だの「付き合って」だの言ってついてまわる。よくまあ鬱にならないな、なんて思いつつも僕も少し気になって上坂を遠くから眺めてみていた。
ある日、とぼとぼ帰っていると公園から上坂の大声が聞こえてきた。どうやら、また振られたらしい。上坂が公園から走り去っていくのを見届けてから公園を覗き込むと、彼女は
「あ、」
といって親しげに話しかけてきた。
「もう、やんなっちゃうよね、上坂くん。」
そんなこんなで帰り道、途中まで帰っていると、唐突に彼女は、
「ねえ、好きだよ。付き合って。」
「はあ?」
「だから、好きだよ、付き合って。」
「そりゃあ、別に、構わないけど、またなんで僕よ。」
「前から…」
正気の沙汰じゃないなんて超失礼なことを思いつつ、僕の彼女となったその女の子と一緒に帰る日々が始まったのだが。
数日後、いつも帰るときに時間が合わなかったらここ、と決めていた場所に彼女は居なかった。
探してみると、靴はあるようで、いろいろなところを探した。
すると、校舎裏からなにかおびえたような声が聞こえてきた。急いでそちらにまわってみると――
強引に彼女にキスをする上坂がいた
そして見事、寝取られてはいないのだが、彼女をとられ、僕は何もすることができなかった。
僕は、無力だった。
――もう恋愛はやめよう。
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