三年生
第一話「計画」
とうとう、高校最後の一年である。受験があるから、と勉強を沢山がんばる人が居るよこで、高卒と、ある程度余裕のある組はそれまでと変わらず遊んだり部活に打ち込んだり…。とりあえず、遊んでいるのである。
そういえば、クラス替えがまたあったのだが、見事、超高確率を引き、僕鳥海杉原村田高井小向の計六名は一緒のクラスになったのである。そして、何がおきてしまったのだろう、担任はあの、あの、例の、楠山妙である。何を思ってこのクラスを編成したのか、僕には少し分かりかねるが、まあ、よかろう。友達が居るというのはそれだけで心強いものである。五人って少なくね、なんて思ってはいけない。
なんだかんだ、僕たちはどきどき遊んだりしていたのだが、あるとき杉原が突拍子もなく、
「おい、夏休み、1週間くらい六人+一人で旅行いかねぇか?」
「プラスの一人は誰だよ。」
「決まってんだろ、妙ちゃんだよ。」
なんていいだした。別に楠山妙が行くのは何ひとつ問題ないのだが、何故旅行、そしてどこに。
「どこがいいだろうな、八野、なんかねぇのか?」
「あるわけないだろ。」
なんでそんな唐突に言われて案なんてあるわけないだろうに。
「鳥海さーん、どっかねぇんですか!」
そういえば、修学旅行は無いのか、とか時々超小さい頃から友達だった奴に聞かれたことがあるのだが、答えは「無い」だ。何故か、この学校には修学旅行がない。そう考えると、その旅行というのもなかなかいいものなのではなかろうか。考えてみれば、仲のいいひとしか居ない修学旅行なんて言うととてもいいものではないか。
「やっぱり、せっかくだからちょっと奮発したいでごわす。」
誰だお前は、と言いたいところだが、いつの間にか会議に参加していた楠山妙はそう言った。でも、僕に金はないぞ。
「四ヶ月に分けて集金して、八月に行くってのはどう?」
今度は高井さんである。
「八月だとやっぱり海も行きたいよね。」
そう言ったのは鳥海さんであったがすかさず高井さん、
「海に行くなら水着着なきゃだよね。水着だとカラダのラインがはっきりわかるよね。あっ…。」
「あーっ!うるさいうるさい!別にいいもん!!」
なんてまた何度も見た光景だし、いつだか忘れたが僕もアクシデントで鳥海さんの胸を触ったことがあるから分かる、鳥海さん、小さい。ここまでネタにされればいっそ清々しくも感じるイジりだが、それを悠々と眺める三人の中で一番、小向さんの表情がなんとも面白いものでもある。ちなみに王者の風格で言えば楠山妙がダントツなのだが、それはまた別の話。
「うーん、とりあえず、んー。」
「よし、それじゃあ、私に任せてもらおうか!杉原とタッグを組んで私が予定を組み立ててやろうじゃないか!」
そう言い出したのは楠山妙だったが、教師ってこんなに生徒と私的な関わりをもってよいものなのだろうか。中学のころの先生の印象と言えば、彼女の存在を仄めかしつつ個人情報などと言って明かさない、卒業までは連絡先交換も厳禁、的な、そういった印象が濃いのだが。
中学と高校は違うのか、そうだな。そういうことにしておこう。問題になっても知るか!楽しければいいんだよ!
そうして、この計画は徐々に進行していたのだった…。
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