第八話「ストーカー気質な鳥海さん」

 ドアを開くと雨がしとしと降っていた。玄関にいくつかある傘の中から比較的ボロいビニール傘を抜き取る。少し骨が錆びているが、十分に使えるだろう。

 ぽつぽつと雨がビニールを叩く音を聞きながら見慣れた道路を歩いていると、ふと猫の鳴き声が聞こえた気がした。

 ――これはあれだろうか、よくある捨て猫みたいなアレだろうか。

 幸いいつも早めに家を出ているので、まだ少し余裕がある。周りを見回してみると、ダンボールが置かれていた。中を見れば、見事に子猫が一匹入っていた。

 子猫といっても生まれたて、というわけではなく、ある程度大きくはなっている。

 とりあえず急いで子猫を保護、家につれて帰った。

 我が家では昔にも猫を飼っていた。だから、おそらく飼わせてもらえるだろう。


 「ねえねえ八野君、猫、飼えた?」

!??!!?!?!??!?!?!?!?!??!?!??!???

「猫!猫!八野君って結構やさしいよね。」

なんだこの人ストーカ…そういえばストーカー気質が…。

「ああ、許してもらえたよ。ちなみにどこから見てたの?」

「えーっとね、近くの電信柱の陰。」

なにやってんだこの人…。

 なんて鳥海さんのストーカーっぷりを聞きながら、さて問題の放課後である。

 次第に雨脚は強まり、陸上部は中止。中止。そう、中止である。何されるか分かったもんじゃない。

 早いところ帰ってしまおう。

 例のビニール傘を持って外に出ると、思っていたよりも風が強い。この風だとこのビニール傘は壊れてしまうかもしれない。

 見事に駅前で壊れた僕の傘は、もう使い物にならない。複線回収が早い。

 ビニール傘を新調すべくコンビニに入ると、鳥海さんが居た。鳥海さんが居た。

 とりあえずビニール傘を買って店を出ようとすると、

「まってよ!スルーってひどくない?」

案の定鳥海さんが声をかけてきた。

「いやだって、ね。」

「だってねじゃないよ!チラって見られたときちょっと期待したのに!」

鳥海さんの期待なんて正直知ったところではないが、適当に受け答えをしつつ改札を通ると、鳥海さんも我が家側のホームに降りてきた。

「どしたん。」

「ちょっと八野君の家の近くに用事があるから八野君と一緒に行こうと思って。」

ああ、そう。

 僕らが乗った車両には僕鳥海さん他二名程度な空きっぷりな電車に揺られること20分くらいだろうか。僕の家の最寄り駅に到着した。鳥海さんがどうするのかと思ったら、鳥海さんもここで降りるようだ。

「そういえば、用事ってなんなの。」

「えーっとね。八野君と一緒に帰ること!」

うれしそうにそういったあとふひひと魔女みたいな笑い方をしたのがとても気になったが、

「冗談はよしてくれ。」

と一喝。そういう冗談はあまり好きではない。

「むー…。」

どこか不満そうな鳥海さんは結局僕の家の前までついてきたのだった。

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