第四話「再チャレンジ」

「おはよ八野くん。」

登校し自席で本を読んでいると鳥海さんが声をかけてきた。

 ちなみにイケメン男子が鳥海さんに告白したのは先週の金曜日だ。翌日とかだととてつもなく気まずいが、休みを二日挟めばまあまあ緩和される。

 鳥海さんはいつもどおりに見える。特に後悔している様子も無いし、悪く思っている風でもなさそうだ。普段の様子から察するに鳥海さんはそういう感情は表に出やすい。前に大会でコンマ一秒差で二位だったときなんかはもうひどかった。敢えて言うことはしないが、ひどかった。

「ねぇねぇ、八野君。八野君は告白されたらどうする?」

思った以上に引きずっているようだった。

「どうするってねぇ。相手によるだろうけどね。まあ、まずされないんで…」

と自分で言ってて悲しくなるが、もうこの際どうでもいい。

「あ、そう…。」

ここは、気にしてあげたほうがいいのだろうか。

「鳥海さんはどうなの?」

「わっ、私?わ、私は……この間、お断りしたよ。」

珍しく言葉が丁寧になる鳥海さん。少し面白い。

「はあ、それまたなんででぇ?」

少し落語調に聞くと、

「それは…秘密!」

と少しうれしそうな顔をしてどこかへ行ってしまった。


 「おーい、優一、ちょっと。」

今度は良と茂とその他数名がやってきた。

「よし、これで全員だな。」

良がそうつぶやいて我々を連れて喫茶店へ。

 面子を見るに、先日の鳥海さんへの告白を見届けた人物を誘っているのだろう。

――カランカラン。

 喫茶店は、有名なクラシックが掛かっていて、こじんまりとした店内にはテーブルと椅子が沢山置いてある。

「おーい、来たぞ。」

良がそういって例のイケメン男子の横に座った。僕たちはそれぞれ近い席に腰掛けた。

 暫くはただの雑談、お茶を飲みながら話をしていたのだが、一段落ついたところでイケメンが口を開いた。

「みんなに来てもらったのは他でもない、鳥海さんのことだ。俺は、リベンジしようと思う。そこでだ、みんなにはどういう作戦でいくか、考えてほしい。」

いや、正攻法で行けよ。

「特に八野、お前よく鳥海さんに話しかけられてるだろ、頼むぞ。」

僕かよ。

 さて、みんなそれぞれ考えているが僕はあんまりそういうことに詳しくないので、頼まれたがスルーしてお茶をちびちび飲む。

「あ、そうだ。いっそ襲っちまうのはど」

「ダメだ。法律に従ってやりたい。」

当たり前だよ。法律は守れよ。

「うーん、じゃあ、プレゼントで釣ってみるのはどうだ。」

まあ、それならいいかもしれないな。

「うーん、何をプレゼントすればいいんだろう。八野!」

「知らんがな。」

一蹴&お茶を飲む。

 結局、この日いい案は出ず仕舞い、その後数回同じように喫茶店で作戦会議をしたが、いい案は結局出ず、また正攻法で告白することになった。


 今回は学習して、階段の上、つまり屋上で出っ張っているアレの上に乗るメンバーと裏で居るメンバーに分かれることとなった。

「今度は、なんですか…?」

鳥海さんは静かにドアを空けて屋上へ出てきた。

「やっぱり、俺ァあきらめきれねぇんだ!付き合ってくれ!」

二度目の告白。こうなってくるとあんまりハラハラしたりはしないし、まあ、失敗しそうだな、というのも雰囲気で分かる。

「ごめんなさい。やっぱり、あなたとは付き合えません。」

「なんで!なんで俺たぁ付き合えないんだ!」

そうイケメンが声を張り上げてたずねた。

「私には、好きな人が居るから…。だから、ごめんね…。」

そういってまた、鳥海さんは去っていった。

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