幕間
「昔のこと」
「私ね、お母さんもお父さんもいないの。交通事故で死んじゃった。」
とある町の小さな児童館で、女の子がそう云った。その女の子の横に座って絵を描いていた男の子は女の子のほうを向いて、
「でも、お母さんが居ないんじゃあ、どうやって暮らしてるの?」
そう問うた。
「私みたいにね、お父さんお母さんが居ない子供が暮らせる“しせつ”があるんだよ。私もみんなとそこで暮らしてる。」
女の子はそう云うと、手元にあった折り紙で鶴を折り始めた。
「さびしくないの?」
「さびしくは、ないよ。だって、お友達が居るもん。」
「そっか。でもさ、いじめられたりしない?」
男の子はそうやさしく聞いた。
「いじめられることも、ある。でも、楽しいことも、沢山あるよ。」
女の子は少し笑って、鶴を完成させた。
それから何日も、互いの名も知らぬ二人はいろいろな話をした。女の子は、ずっとこの楽しい日々と、男の子のことを覚えていた。もっとも、男の子のほうはすっかり忘れてしまっているが…。
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