第11話 発覚

 葵と総司の口論が終わったところで、テストのように魔法をみてもらうことになった。


 私は、練習のときと同じ要領で基礎魔法を使っていった。その様子を総司はまじまじと真剣に見つめていた。私は、その期待にこたえられるように、力をこめて魔法を使った。すべての基礎魔法を見せ終わると、総司と葵が拍手をしてくれた。


「すごい学習能力だな。それに、強魔力の持ち主だ。すばらしい。じゃあ、せっかくだし、俺の魔法でも見せておくか。」

「なんで、総司の魔法を結衣ちゃんにみせる必要があるの?」


 総司が言うと、決まって葵が反応して言う。仲がいいのか悪いのか、どちらともいえないけど、私にとっては羨ましかった。そんなことを思っているうちに二人の話は終わり、総司が私たちから離れる。


「よく見とけ。プライマリーの頭首の魔法の実力をな。」


 総司は少しだけ目を閉じて集中する。それから、目をあけ、手をだす。


「アクティベーション!」


 総司の手に、黒い粒子が集まり、映画やアニメで見るような魔法の杖があらわれた。それから、総司は続けて唱える。


「アステカの創造神テスカトリポカよ、悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ、リバース!」


 強大な魔力が杖の先に集まり、完了とともに、その黒い塊は壁へ向かう。そして、壁にあたると、一面の壁を包みこみ、ものすごい威力を放出して、壁ごと消えてしまった。圧倒的な威力に私は固まってしまって動かない。そうしてる間に総司が戻ってきた。


「どうだ?みたか、俺の魔法を。固有魔法、ものを無へと還す魔法だ。俺にしか使えない、この組織の最大の切り札だ。ちなみに、俺は暗闇魔法の使い手だ。覚えておいてくれ。まあ、リバースは切り札といっても、かなり使い古してるんだけどな。もうひとり、俺がほしいくらいだよ。結衣も固有魔法の持ち主だったらよかったのにな。」

「たとえ、結衣ちゃんが固有魔法を持っていたとしても、結衣ちゃんは物理魔法だから、総司のようなおっそろしいのは使えないわよ。」

「そうか、まあ、結衣は強魔力で、膨大な魔力量だからすごく期待してるよ。」


 そんな二人の話を聞いて、私はようやく動き出した。どうしてか、やらなきゃいけないような気がして、魔法を展開させる。


「アクティベーション!」


 突然の魔法展開に二人は注目した。私は気にせずに続ける。目をとじて総司のがやったとおりにする。自然と頭に呪文が浮かび、


「アステカの創造神テスカトリポカよ、悪魔と化し、あらゆるものを無へ還せ、リバース!!」


 剣の切っ先に集まった黒い魔力の塊が修復したばかりの壁へとむかう。そして、先ほど以上の規模で効果があらわれ、威力も大きく、消えた。それをみていた二人はさきほどの私と同じ状態になっていた。私は魔法を解除し、うつむく。しばらくして、葵が声をだした。


「すごいよー結衣ちゃん。まさか総司の固有魔法を使えるなんて。信じられないけど信じるよ。」


 葵は、ものすごく興奮して抱きついてきた。総司は、なにやら考えているようだ。総司がこっちをみる。


「結衣。おまえは人の魔法をコピーできるのか?そういう魔法は確かにあるが、お前は物理魔法の使い手だと・・・。なら、葵の魔法をやってみてくれ。確かめておかないと気が済まない。あんな簡単に俺の固有魔法を使われたんだ。しかも、魔法のど素人に。」


 総司からの圧力が強く感じ、葵もそれ感じ取ったのか許可してくれた。もういちど、魔法を展開する。目をとじると、頭に呪文がうかぶ。


「ぽつりぽつりと水が滴る、7つの波紋が重なり、ひとつとなる、オキシダンビーム!」


 空中で7つの波紋ができ、そこから勢いよく水がでる。それをみて、総司は納得したようだった。


「なるほど。生物魔法ってわけではなさそうだな。結衣に系統魔法なんてものはない。すべての魔法を使える、まさに異例だ。」


 そういって、総司は不気味な笑みを浮かべる。


「これは、反撃ののろしをあげるいいチャンスだ。結衣、おまえがいてくれて本当にありがとう。すべての魔法を使えるのなら、やつらなんて簡単に倒せる。」


 総司が私の肩に手を置く。それをみていた葵は嫌悪感を一瞬出したが、にやっと笑って、演習場を出て行った。総司はかまわず、目線を私に合わせて、見つめてくる。この時間がとても長く感じた。心臓の音がすごく早く聞こえる。体が熱くなっていくのがわかる。そして、総司は口を開いた。


「結衣。俺の嫁になってくれ。俺には結衣が必要なんだ。」


 生まれてはじめての告白だった。

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