第10話 演習

 お昼を食べてから、再び演習場に戻ると、今度は基礎魔法の練習が始まった。


「結衣ちゃんなら、すぐに覚えられるよ。だから、今日中に終わらせてしまおう。」


 それにうなずくと、早速レクチャーが始まった。


「防御魔法は大事だから、これから始めよう。よく見てて。両手を前に出して、壁をイメージする。そして、唱える。ウォール!」


 水色の魔粒子が葵を包み込んで消えた。


「これで完了。効果時間は人それぞれの魔力で決まるから、自分のは自分で覚えててね。今度は結衣ちゃんの番だよ。」


 教えられた通りに手を前に出して、壁をイメージする。


「ウォール!」


 そしたら、黒い魔粒子が私を包み、消えた。


「うん、魔力の色がおかしかったけど、できたね。なんで色が違うのかわからないけど、気にしない、気にしない。次に行こう。」


 そして、次々と魔法を教えられた。物体を飛ばす『アウェイ』、破壊する『バースト』、銃のように射撃する『ショット』、相手を驚かせたり、痺れさせたりする『スパーク』や『スター』、魔力を一気に放出する『リリース』、魔法の威力をあげる『レインフォース』、集中力をあげる『コンセントレイション』、ウォールとレインフォースとコンセントレイションの3つを同時に発動させる『フィールド』。これで基礎魔法はクリア。


「結衣ちゃんは、天才かもね。本当に今日中に終わっちゃった。う~ん、どうしようかな、総司とかいればなあ。」


 葵が悩んでいると、葵の後ろに人影がみえた。こちらに向かってくる。


「呼んだか。」


 葵が、びっくりして振り向く。


「総司!なにしに来たの?私と結衣ちゃんとの仲を邪魔しにきたの?それなら、帰って。」

「おいおい、お前が呼んだんだろ。」


 総司があきれる。そして、こっちを見ると


「で、どんな感じなんだ?出来映えは。」

「基礎魔法なら全部覚えたわよ。まあ、わたしが教えて、優秀な結衣ちゃんだからこのくらいちょろいもんね。」

「なんでお前が自慢げに言うんだ。俺は結衣に聞いたんだ。よし、せっかくだから、結衣の魔法を見せてもらおう。頭首として、しっかり戦力を確認しとかないとな。」

「結衣ちゃんはあげないよ。私の、だもん。」

「お前のじゃないだろ。結衣はプライマリーのもんだ。」


 二人の会話を聞いて、私は誰のものでもないのだけれど、そんなことは通じそうもなかったので、喉の奥に飲み込んだ。

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