第9話 私の系統魔法

 目を覚ますと、葵が私の顔を覗いていた。


「おはよう。ぐっすり眠れた?」


 優しい笑顔と声で聞かれる。私はすごく安心した。そして、この人のために頑張ろう、と思った。

 私は、声を出さずにうなずいた。それから、起き上がる。葵がもってきていた朝食を食べて、出された服に着替えた。ミニスカに半袖Tシャツという格好だ。


「よし、準備できたね。じゃあいこうか。」


 葵が私の手を取って、部屋を出る。そういえば、まだこの屋敷について知らない。廊下は明かりが少なくて薄暗かった。あっちいったりこっちにいったり、迷っているようにおもえたが、葵いわく、ここはプライマリーの総本部だから、敵に侵入されても大丈夫なように魔法で廊下が繋ぎかえられているそうだ。こんなに複雑な道をよく覚えているなあ、と感心してしまった。迷うと大変なことになるから、葵は手をつないできたのだろう。5分くらい歩いたら、体育館のようなところにでた。とても広く、天井の高さもかなり高めだ。葵は私の手を放すと前にすすんで振り返る。


「ここが、演習場だよ。この場所自体が魔法で作られているから、何をやっても平気。それじゃあ、さっそく結衣ちゃんの魔法を見せてちょうだい。でもまあ、一応、念のために私も発動させておくか。アクティベーション!」


 葵は、水色の魔法陣を浮かべ、魔法を発動させると、その手には水でできた鞭が握られていた。そして、私も葵の指示の通り、魔法を発動させる。


「アクティベーション!」


 手に光が集まって、剣を出現させた。葵は腕を組んで少し悩んでいるようだった。


「結衣ちゃん。何か、魔法使ってみて。」


 魔法なんて、何ができるのかわからなかったので、よく使っていたフロートを使ってみた。そしたら、ため息をつかれた。


「結衣ちゃん、その魔法、基礎魔法だから、系統魔法とか関係ないんだよね。系統魔法っていうのは、まあ、見てて。

 ぽつりぼつりと水が滴る、7つの波紋が重なり、ひとつとなる、オキシダンビーム!」


 葵の周りに波紋が7つあらわれて、そこから一斉に高圧力の水が出てきた。それは、壁を破壊してしまったが、壁はすぐにもとどおりになった。


「これが、系統魔法によるものよ。私の系統魔法は物理魔法と生物魔法。2つの系統魔法をもつのはちょっとレアなの。そして、属性は見ての通り、水。今のは、そこまで強くない魔法だけど、結構つかう魔法なの。一番強い魔法は、いざというときに備えておくものだから、あまり使わないほうがいいね。なにか、すぅっとでてくる魔法はない?」


 私は、目を閉じて集中する。あの夜ときの魔法を思い出してみた。同時に、嫌な記憶が頭をおさえつける。けど、あきらめない。剣を上に掲げ、目を開けて、唱える。


「ざわめくものたちよ 灼熱の炎に焼き焦がれよ その身を果て 塵となれ! アパートファイアボール!」


 私の周りにあらわれた8つの大きな炎は、高くあがり、壁に向かって飛んで行った。そして、ものすごい轟音をたてて、壁を崩してしまった。葵は驚いて、壁と私を交互に見ていた。


「す、すごいね、結衣ちゃん。想像以上でびっくりしちゃった。結衣ちゃんは、炎属性の物理魔法だね。しかも、すごく強力な魔力。」


 こうして、私の系統魔法をわりだすことに成功した。

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