第12話 悲劇は突然やって来る

「リリン、これ」

「えっ?!」


山菜採りをしながら集めた花で輪を作ってリリンに手渡したロッツォ。

それに驚き固まるリリンの頭にロッツォは花の輪を乗せる。


「うん、やっぱり似合ってる」

「…うん…ありがと…あのねロッ…ツォ?」


照れながら小声でお礼を言うリリンは勇気を振り絞って顔を上げた。

しかし、ロッツォは横を向いて不思議な顔をしていた。


「どうしたの?」

「聞こえない?何か…叫び声みたいな…」


そう言われてリリンもロッツォと同じ方角を見たときであった。

煙が上がり始めた。

位置的に…


「あれ、村の方だよね?」

「リリン、ここで待っててくれ!」

「ろ、ロッツォ?!」


その場からリリンを残して村へ向かって走り出すロッツォ、そして村に近付いてそれを見て固まった。


「そ、村長…」


離れた場所から見下ろすように見たのは村の広場であった。

広場の真ん中に張り付けにされた村長の足元に火がつけられていた。

更にその村長に向かって村人が順に石を投げる。

逃げることも出来ず火に体を焼かれながら投石による怪我が次々と増えていく。

既に意識はないのかぶつけられた石の衝撃以外では村長が動くことはない。

そんな中、一人が石を投げるのを拒否した。


「ツムギ兄ちゃん…」


それはロッツォの慕う兄のような存在の村人であった。

正義感が強いツムギだからこそ、そうしたのだろうとロッツォは村の異様な光景から我に返った。

そんなロッツォの目に飛び込んできたのはツムギが沢山の矢に貫かれ崩れ落ちる光景であった。


「う、うぁぁぁぁぁ!!!」


ロッツォの叫びが上がり村の人々はロッツォを見た。いや、見てしまった…

それが原因で村の人間でない数名がロッツォに気付いてしまったのであった。

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