第3話

空から降ってきた何かが、お婆さんの頭に激突した。


「ッッ!?」


頭を抱え、お婆さんはしゃがみこんだ。

コロコロと転がる、頭に降ったそれはサイコロだった。しかも正八面体、この【ゲーム】のものだ。

色は私のとは違って、深い紫色だった。

だが運命は非情、これだけでお婆さんの災難は終わらない。

急にしゃがんだせいか、バランスを崩し、よろけたあげく足をひねってしまったのだ。


アギャァ!?」


らしからぬ悲鳴をあげ、お婆さんはとうとう地に手を突いた。

更にとどめを射すかの様に、お婆さんの座り込んだ地面が急に消えた。


「――――――――え」


目に絶望を濃く浮かべながら、お婆さんは漆黒へ吸い込まれていく。

とっさに私が伸ばした手も虚空を掴んで、お婆さんは地下へ行ってしまった。


「……あら、『敵』を助けようとしたの?

あなたバカねぇ、最短攻略ルートはこのワタクシが教えてあげますのに」


私の背後から、明らかに侮辱ぶじょくする声。

怒りが込み上げる。

サイコロの持ち主は、コイツだ。

サイコロの能力は多分、『他のプレイヤーへの妨害』といったところか?

歳は私より幼い。この女、中坊だ。

という事は恐らく、私より敏捷性が高い。


…………いつの間にか私の頭の中には、ゲームに関しての知識が入っていた。

その中の1つに、やりようのない怒りを覚える。


『他プレイヤーの妨害は、その如何なる方法をも問わず認められる』


要するに、どんな事をしてもこの【ゲーム】内であればとがめられない。

それこそ、やり方が犯罪のそれでも、だ。

倫理的に大問題だが、ここは少しそのルールを使わせてもらおう。

なぜなら私が拳を振るう相手は、悪だから。

勧善懲悪かんぜんちょうあくの為にと、私は拳を握った。


すると突然、町内放送のスピーカーから声がする。


『プレイヤーの戦意を確認しました。

【VSセクター】に同意したとみなしてよろしいですね?』

「ちょっと!ワタクシ闘うなんて聞いてませんわ!?」

「知るかそんなモン!お婆さんの仇は、私が取るッ!!」


『【VSセクター】展開、フィールド:草原に設定。さいが投げられました。

――――バトルスタート』


……あれ、なんかとんでもない展開になったかも知れない。

一応始まったものは仕方ない。やるしかない。

私は覚悟して、もう1度サイコロを投げてみる事にした。


(Twitterアンケートに続く!)

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