任意

 試験は相殺された。

 そう聞いたヘルメスの心は煌々とした。

 世界では冷蔵庫がタッチパネルに音を鳴らしているというのに。

 それを知ってか知らずか、彼は手元のカウンターの数字を56減らしながら塩を舐める。

 たかがお金であっても彼ははしごを壊した。それが世界に文明を齎すのだ。

 しかし、メモ帳は燃やされた。空に浮かぶマウスはティッシュを降らせ、銀河系はDVDプレーヤーを半分にした。

 この運命こそが、安定状態にないと言えるだろう。

 一方で、第三帝国は概念であった。

 向かい風に打たれながら、ヘッドフォンを壊すしかできなかったのだ。

 だめだなあ、とエリスが想像する。

 引き出しはすでに潰えて、もはやライトノベルとも呼べない存在になった。

 彼女はそれを持ち去って、霧吹きを吹いた。

 刹那、モニターに浮かぶウィンドウが地球を貫いた。

 そうすれば、レンも救われるであろう。

 それが序章とも知らず、彼はキーボードを折った。

 めでたしめでたし。

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