異世界だって限度がある!せかんど!
市民ドン引き問題はもう諦めるとしても、問題がもうひとつ。
「つ”れ”て”っ”て”く”だ”さ”い”よ”ぉ”~”~”~”~”」
「うううううるせえええええええええ!!!!!!あんまりうるせえと俺地球に帰るぞこのアマ!!!」
俺はひたすらブチ切れていた。
アリーが五月蝿いことこの上ないのだ。
「だから!!!対魔王経験がない奴らは!!!!みんな素人なの!!!!!足手まといなの!!!!」
「やあああああだあああああつれてってえええええええ技術学ばせてえええええええええええええ」
結局俺はアリーを引き連れて…というより王の御前に引っ張っていった。
「こいつどうにかしてくれ」
「無理だ」
王は即答した。
今までにも王の言うことさえ聞かずにお得意の魔法と魔術で暴れまわって言うことを聞かせたことがある問題児だということだった。
(どの世界も頭がいいやつは頭がおかしいのは共通かよ…)
俺は嘆いた。さてどうしようか。
魔王のいる場所の地図はもらったし、行こうと思えば今すぐにでも行けるのだが。
こいつは梃子でも離れなさそうだ。
「よおし、じゃあ俺について来れたらついてきてもいい」
「ほんと!?」
「こっから南にだいたい5600km。陸続き。到着予想、今から15時間後!」
そう言って俺は魔法(他の世界のやつがいつもどおり使えた)で限界まで身体強化して駆け出した。
王城を揺らして、市街地をひとっ飛びする。
眼下の市民は俺の存在に気づいていない。
途中で広場を足場にして、また大きくジャンプする。
そのまま草原をだいたい時速450km(主観)で駆けていく。
結局、12時間で着いてしまった。
久々に飛ばすのが楽しかったのだ。とりあえず魔王の城であろう建物の数km手前で野宿の準備をする。
「テントも久々だな。地球に帰ったらゆるキャンでもするか」
男一人だと虚しいが。だがそれがキャンプだ。
最終決戦に備え、俺は眠りについた。
「朝ですよー、起きなさい」
「…なっ!?」
正直アリーを舐めていたというほかない。
アリーはまさかまさかだが、しっかりついてきていたのだった。
「この距離を走っていくなんて規格外。おかげで延々と空を飛ぶことになったよ」
さらっと常人離れしたことを口にするアリーは、やはり只者ではなかったようだった。
「ところで俺は殺しには慣れてなくてな」
「??じゃあどうやって魔王倒すの??」
「こうだ」
俺は城門を蹴り破った。
「たのもおおおおおおおおお!!!!!!!」
「「ぴぇええええええええええ!!!!!!」」
アリーと魔王の声がハモった。
「な、なんじゃお前はいきなり!!」
魔王が慌てて言う。角が生えてる以外はアリーと同じ年代の少女に見える。
というかまた美少女か。どの異世界も美少女で飽和してんな、羨ましい。
「人間の世界のほうから来た。なんでも魔物が増えて滅亡の危機に瀕してるとかしてないとか。なんとかしてくれ」
「し、知らんわ!」
「こっちもめんどくさいながら一応形だけは使者やってるんでね。何かしら成果は出したいんですわ。人間側だって動物を魔界にやらないように、自然環境とか保護に努めてるんで、魔王が努力を怠るってどうなんすかあああ????」
「うるさいうるさい、帰れ頼むから。今なら手出さないでやるから帰るのじゃ」
一瞬キャラが崩壊しかけた魔王はしっしっと俺たちを追い出すように手をやった。
「んじゃ、実力行使な。アリー、学ぶんなら学べよ?」
「え、あ、は、はぁ?」
直後、俺は懐からロープを取り出し魔王に接近。
そのまま縛り上げた。
「…な、なんじゃこれはああああ!?!?!?」
魔王が絶叫する。
「よし、帰るぞ」
「はぁ…?」
俺はポータルアイテムを起動した。
「只今戻りましたー、とりあえず話する気がなさそうだったんで縛り上げて連れてきました。どうします?」
魔王は必死に体をよじるが、やがて縄に組み込まれた術式によって縄がちぎれず解けないことを悟ると、少し涙目になってこちらを睨んできた。アリーより余程可愛げがある。
「人類の憎悪がこいつに向いてるってなら、こいつ街に引きずり出してみんなの前で首斬り落としてもいいですけど」
魔王が真っ青になった。
「う…嘘じゃろ…?」
「少なくとも嘘ではないな。俺はこの世界の人間じゃないから人間の恨みを買おうが魔族の恨みを買おうが別にどうでもいい。極論高い報酬さえ出してくれりゃ人間の敵にだってなるさ」
「えっ…あなた勇者として召喚されたのに感謝とかないんですか」
「迷惑しかねえよ客観的に考えろ」
俺は吐き捨ててから、結局使わなかった剣を抜いた。
そして魔王の首に当てる。もちろんまだ脅しだ。
「ま、どうしても、って言うならここで処刑しますけど」
脅しを重ねる。
「どうしますか…って言う前に参考程度にこいつの言い分も聞いてやりましょうか」
そして唐突に脅しを止める。
すると相手はチャンスとばかりにペラペラ喋りだすのだ。
「う…うぅ…」
そう、こんな風に…
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」
魔王、想定外の大泣きであった。
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