神界第3役所転生課異世界部

「23089番さん、145372番カウンターへどうぞ」


 わたしは次のナンバーを呼んだ。

 すぐさま、火の塊みたいなものがカウンター前に飛んでくる。


「えーと、あなたの前世は…」


 データベースを確認する。

 -73.9935484度の宇宙、第54386151646番銀河団に属する第94694番銀河、そこの第646186466番恒星系の第三惑星…


「地球人…個体名、有村ありむら智樹ともきで間違いありませんね?」

「私の記憶が間違っていなければ、そうですね」


 魂は答えた。


「魂自体の状態も良い感じなので特に転生に問題はありませんね。じゃ、同じ地球にまた転生ってことでいいですか?」

「うーん…転生ねえ」


 魂は渋るように言う。


「生きてる間は忘れてるけど、なんかここ、かなりの回数来てると思うんですよ」

「それは転生回数が多いってことですか?」

「まあ、そうですね。天使さん、ちょっと確認してくださいよ」


 わたしはその人の転生回数を確認してみる。


「ほげえっ!?!?!」


 そして画面の数字を見て卒倒した。


「ど、どうしました?」


 魂…もとい、智樹さん(暫定呼称)が心配そうに話しかけてくる。

 いけないいけない、魂に心配される天使など。

 でもこれを見たら、仕方ないと思うんです。


「こ、これを見てください」


 とりあえずわたしは画面をくるりと回して、智樹さんに見せた。


「…これはグラハム数の一部か、それとも円周率の小数点以下10兆桁の一部かなんかですか?」

「円周率がどの世界においても3.14だと思ったら大間違いですよ」


 わたしはそんなことを言いつつ、修正する。


「これがあなたの転生回数ですよ!智樹さん!少なくとも桁数だけで76.8×10⁶⁷⁹⁰⁰⁷⁵ 桁ですね…って!!!!わたしより!!!!!年上じゃないですか!!!!!!」


 結局わたしは叫んでしまった。智樹さんの魂が明らかに引いていますオーラを醸し出している。


「ご、ごめんなさい!」

「もしかしてこれがラノベでよく見るドジっ子天使ってやつか…」

「ひどい言われようだけど反論できないー!」



「つまり、もう転生は疲れたと?」

「まあ、そうなりますね…嫌ってわけでもないんですけど」

「本来、魂が転生不可能なほど傷ついたら修復サイクルに回されて全記録リセットでまた転生サイクルに戻ってくるって形なんですけど、まあたまに転生サイクルに嫌気がさして天国に行く人もいますけどね。私が見た中でもまだ5200恒河沙人くらいしかいませんけど」

「それは"くらいしか"って範囲を越えてません?」

「神界全体で管理している魂の数を見れば0.0001%にも満たないですよ、それに魂はそこそこの頻度で新規生成されますし」

「…ちなみに天国に行くとどうなるんです?」

「無限の幸福に包まれます、ただし地上の娯楽はもう楽しめなくなりますね。本来天国というのは人生に疲れた人たちが行くところなんで大抵の人はそれでも承諾するんですけど」

「うーん…ラノベ読みたい」

「死んでなおそれですか…」


 わたしは溜息をついた。そして話を続ける。


「さっき上に確認してきたんですけど、あなたは現存する魂の中でも最も古いナンバーの個体です。というか二位を大きく離すダントツです。だから、天使としての働きをする権利が先程あなたに与えられました」

「天使としての働き?俺が?具体的にはどんな感じ?」

「まあ、わたしみたいな感じですかね」

「ドジっ子天使?」

「その話はもうやめてくださいー!」

「冗談ですよ、すいません。その仕事って楽しいですか?」

「楽しいかと言われると…うーん…でも地上よりは新鮮かと。せっかく、初めての人間からの天使ルートですよ?働いてみる気はありませんか?」

「んーと、じゃあ…やります」

「よし、決定ですね!じゃあこちらの書面にサインを…って、まだ魂でしたね」

「はい…というか、名前はどうすれば」

「あー…自分の好きな名前と容姿を選べるんで、なにか希望はあります?」

「俺、けっこう地球での名前と容姿気に入ってたんで地球そのままでいいっすよ」


 おっ、智樹さんの口調が崩れてきた。


「わかりました!」


 わたしはそう答えて指を鳴らす。

 ぽん!みたいな音がして、若い男の人が現れた。

 あらやだ意外とイケメン。


「えっと、じゃあ…有村、智樹…と…はい」

「ありがとうございます、じゃあ一緒に来てください」


 そうしてわたしは上司のもとへ向かった。


「個体名有村智樹、ようこそ我が第3役所へ。歓迎するよ。早速だが配属指令だ。キミの部署は、転生課異世界部総合担当だ。簡単に言えば転生課異世界部の各部署の手助けに入るところだ。まあ仕事はそこまで多くはないから安心してくれて構わない。今日から新設して、数ヶ月後に数人入ればよかったかなと思っていたが、キミが来てくれて思った以上に早く動けそうだ。給料は月7430レクトだ」

「はい、わかりました…レクト?」


 智樹さんは何か言いつつも頭を下げた。いいなあ、なんで私より数倍も給料高いんだろ。エリートじゃん。

 とりあえず、わたしはカウンターに戻ろう。


「じゃあわたしはこれで…」

「待て、個体名ルル=アノール。辞令だ。キミを現在の転生課異世界部受付担当から、転生課異世界部総合担当に異動させる。それに伴い、給料も月7430レクトになる。昇給おめでとう。新設部署で君たちが良き同僚として、まあ当面は二人三脚で進んでいくことを期待する」

「…え?」


 突然言い渡されたことに困惑を隠せないまま、わたしは間抜けな顔を晒していた。


「よろしくおねがいします、ルルさん」


 智樹さんがめっちゃ爽やかな笑顔で握手を求めてきた。


「…ええええええええええええーーーーーーーーーー!!??!?!?!??」


 が、わたしは応えられなかった。



 …To be continued?かもね

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