【マッドサイエンティスト】

『ごろごろごろ、

ぴかー!

………………、

ずがーーーん!!』


それは嵐の日の夜。

たった一人でだれもいない実験室にこもり、

月水は何か得体の知れないものの製作に没頭していた。


「この部分は上手く作れたかな。

どれどれ?」


『ぷにぷに』

とりあえず触る。

う〜ん。


『すりすり』

頬ずりしてみる。


しかし………。


「駄目だー!

やっぱりまだぜんぜん本物とは違う。

本物触ったこと無いけど。

まだ何というか感触が無機質すぐる。

 とは言ったものの、シリコンの他に合わせられる材料なんてもうこれくらいしか。

 くっそー!

何でこう上手くいかないんだよ〜!」




『ピンポ〜ン♪

宅急便でーす!』

するとそこへレインコートを着た二人の宅配業者がやってきた。

 そして、玄関のドアを通すのがやっとな程の巨大な箱を運び入れる。


「お荷物はこちらでお間違い無いでしょうか?」


「え? あの……」


「大丈夫でしたらこちらにサインをお願いします」


「は、はあ」

しかし、月水は煮え切らない返事しかできない。

この大きな荷物に心当たりが無かったからだ。


 しかし、実家から送ってきた可能性も考えられるので、月水はとりあえず送り状に目を通すことにした。


「え、これは一体どういうこと……?」


発払いの送り状には不可解な点が2つあった。

一つは日付の部分が空白になっていたこと。

 そしてもう一つ。

送り主の欄に自分と同性同名の

と書かれていたことである。


(僕自身の名前。これってどういうこと?

新手の送りつけ詐欺かな)


「あの、お客様どうなされましたか?」


「い、いいえ」

月水はこれ以上宅配業者を待たせるのも申し訳無いと思い、送り状にサインしてしまった。



荷物を残し宅配業者が帰ると、

月水は再び中断したパーツ製作にとりかかる。


(気になる)


「駄目だ駄目だ!

今はとにかく製作に集中しなきゃ」


(だけどやっぱり気になる。

箱の中に一体何が入ってるのかな?)


「いかんいかん」


(だって、もし本当に送りつけ詐欺だった場合、

箱を開封しちゃうと送り返すことが出来なくなるって聞いたことあるし)


「製作に集中……!!」



僕は誘惑に負けた。


そして、開けて中身を確認する為、

縦にハサミを入れた直後だった。


『ずががーーん!!!』


「わっ、何ー!?

今の」

背後からの凄まじい雷鳴。

月水はとっさに後ろを振り返った。


きっと近くに雷鳴が直撃したのだろう。

実験室は一瞬まっ暗になったがすぐにまた明かりがついた。


月水はほっと胸を撫で下ろす。

そして再び開封作業の続きをしようとダンボールの方を向き直る。

しかし、月水の安堵の時間は一瞬で終わりを告げた。


月水は、まるで見たものを石にしてしまう怪物メデューサに睨まれたかのように硬直してしまっていた。


月水の前には見覚えのある女性が……、

一糸纏わぬ姿で立っていた。



続く(本編エピローグの後)


———————————————————————

【登場人物】

月水げすい(ゲス)

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