実は宇宙は存在していない
「成る程ー、
そういうことなんスねー」
「そう。
つまりな、地球に生命が生まれるまでには地球外からの影響も含め沢山の偶然があったという訳じゃ」
「えーと、谷先生?
なんか、さっきから眠そうにしてません?」
「真智?
うち、そんなことないでぇ……」
「コラ、寝るな谷!!」
「はっ!はいっ、先生!」
「あ、
丘先生の一言で谷先生起きた!」
「谷、目が覚めたか?」
「あ、すんません、丘先生」
「わしもつい癖で長々と話しすぎたな。
すまんかった。
わしが谷に伝えておきたいことはもう少しだけあるんじゃ。続けてもいいかな?」
「は、はい」
「ある物理学の実験から宇宙は存在するはずがないという結果が出たんじゃ」
「へえ、そうなんですね。
・・・・・・。
って、
はいー?
それ、おかしくないですか!?
そんなこと言っても、
宇宙が存在するからうちらが存在するはずですよね?」
「な、妙じゃろ?」
「はい!
どうしてですか?」
「ひょっとすると、これまでわしら人類が信じ発展させてきた物理学や宇宙論に間違いがあるのかもしれん。
今から話すのは、反物質と宇宙の始まりについてじゃ。
宇宙はビッグバンのすぐ後に起きた物質と反物質のはげしい争いの結果生まれた。
谷も知っておるじゃろうが物質の勝利じゃ。
そして、そのおかげで、銀河や星、惑星、わしらや身の回りの世界が存在しているわけじゃ。
ところがじゃ!
残念ながら現代物理学の理論からはなぜ物質が勝てたのか説明が出来ん」
「どうしてですか?
うち、私はきいたことありますよ!
物質の総数の方が反物質の総数よりもほんの少しだけ多かったんですよね?」
「谷の言うように理論的にはそれが有力じゃ。
しかし、CERNでのある大掛かりな実験から導かれた答え、それが問題だった。
その問題とはつまり、
宇宙が存在する為にあるはずの物質と反物質の非対称が無かったことだ。
CERNでのその実験はBASE プロジェクトと呼ばれる。
BASE とは、“Baryon-Antibaryon Symmetry Experiment”の略。
つまり、バリオンと反バリオンの対称性を調べる実験なのじゃ。
具体的には、陽子と反陽子の磁気モーメントを非常に精密に計測して驚くべき精度で差異があるかどうかを調べる。
もし差が発見出来ればこの宇宙に反物質がほとんどなく物質ばかりであることの説明がつく。
しかし実験の結果、差異は発見されんかったんじゃ。
つまり、この実験から言えることは2つ。
一つ目は前提条件が間違っている。
物質だらけになった理由が違う。
そして、もう一つはな……」
「もう一つは、何ですか?」
「そもそも今、この宇宙は存在していない」
「え?」
———————————————————————
【登場人物】
•谷先生
•
•丘先生
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