65537 ※谷先生視点↓

「その65537のことやけどな、

これ以上ヒントを出したとしてもお前達にはまだ難しいかもしれん。

やから、もう答え言うな。

いいか?」


「はい!」」」


「実は正 六万五千五百三十七 角形のことなんや」


「え?

谷先生、今何て言いました?」


「だからな、正65537角形や!」


「え〜と、

セイロクマンゴセンゴヒャクサンジュウナナカッケイ……ですか?」


「ああ、そうや」


「んなモン解るかいーい!!」」


「まあまあ〜、

真智ちゃんも宙ちゃんも落ち着いて〜」


「四葉ちゃんそこどいて」


「あ、うん〜」


「なんですかぁ!?

その、トンでもなくチートな多角形って!!?」


「ま〜、真智。

お前が驚くのも無理はないな。

これだってもちろん多角形の一つで、65537本の辺と65537個の頂点を持つ図形なんや。

内角の和は11796300°、対角線の本数は2147450879本や。

 図形は変の数を増やして行けば行くほど円に近づいていく性質があるんや。

 やからな、1角形の形とこの理屈がわかっていたら、うちがおらんでもお前達だけでこの問題解けたかもしれん。知らんけど」


「知らんけど、ですね」


「ああ。

話続けるで」


「はい!」」」


「辺の数が途方も無く多いからほとんど真円と見分けはつかん。

やけどな、定規とコンパスによる作図は不可能や無いんやで」


「え?

どうして定規とコンパスで作図出来るって言えるんですか?」


「先ずな、65537という数は現在知られているうちで最大のフェルマー素数なんや。

ちなみに、フェルマー素数っちゅうのはな、2^(2^n)+1(n は自然数)で表される素数のことや。

そして、フェルマー素数の辺を持つ多角形が定規とコンパスで作図可能なことを昔ガウスって人が証明したからなんや」


「なんか、凄まじい数の世界ですね!


「そやろ〜♪」


「谷先生、ホント嬉しそうに話しますねー?」


「まあな♪

じゃあ、もういいか?

この『⚫️』のボタン押すで?」


「は〜い!」」」


「それっ、ポチっとな」


『ギギィー!!

ミシミシミシミ』

谷先生はボタンを押した。

すると、工場入口の大きく重い扉は

鈍い重い音を立てながらゆっくりと開いていく。


「ま、眩しいー!!」」」


両扉の隙間から漏れる真っ白な光。

暗い空間に長くいた為、四人の目はすぐには明るい光に順応できなかった。


「お前ら、早よ入るで?」


「谷先生?

待ってくださいよ〜!

いいんですかー?

眩しすぎて周りが全然みえませんよ」


「目はすぐに慣れる!

真智? お前だけ置いてくでー!」


「ちょとー、待ってくださいってばー!!」

こうして、うちら四人は工場の中へと足を踏み入れた。


◇ここは時間が永遠に引き伸ばされ止まった世界じゃよ◇


「誰や!?」

うちは声のする背後を反射的に振り返った。


まだうちらの視界は明るさになれず相手は見えない。

だけど、うちには確信があった。

この声は、この話し方は間違いない。


———————————————————————

【登場人物】

•谷先生

真智まち

•四葉

そら

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