可織がくれた大切な『コト』
「なんだろう……。
どこからかあたしに話しかける声がする」
あたしの両手の中にある灰になったヘルティック・マチは、あたしにテレパシーような力で語りかけてきた。
◆アタシの記憶消去の計画は失敗よ。
あんた達の勝ち。
実はね、発端は真智の後悔から生じた二つの迷い。
一つは今のアタシの意識。
そしてもう一つはね、悪夢の記憶消去の為にメンタルポイントで迷い苦しんでいるもう一人の真智の意識。
二つはお互い量子的にもつれて分裂した片割れ同士なの。
安心していいよ。アタシ ヘルティック・マチが消えてもさ、もう一人のあたしが全てを引き継ぐ。
だから未来のあんたが死ぬことも記憶が消えることも無いから。
昔のあんたにも辛い思いをさせてごめんね◆
「ねえ」
◆何?◆
あたしはヘルティック・マチと向かい合い言ってやった。
「あたしはさ、可織が命をかけて助けてくれた自分の人生を粗末になんかしないよ!」
◆え?◆
あたしは続けた。
「あたしだって!!……、
自分の不注意から可織を失ったあの事故の記憶や後悔、そんなのさ、
一生忘れることが出来ないに決まってんじゃん!!
だけど……、可織のことは絶対に忘れたくない!
あたし達にできることってさ、起きてしまったことを悲しい顔で悔み続けることだけじゃないんじゃない?
嬉しかったことや悲しかったこと。
思い出全部ひっくるめてさ、一度きりしかない人生で可織と巡り会うことができた奇跡に感謝しようよ!
大切なのは、可織の分まで自分やまわりのみんなを笑顔にしながら生きていくことじゃない!?」
◆ウワァァァー!!◆
ヘルティック・マチの悲痛の叫び声が響き渡った。
「しまった!
ヘルティック・マチは自ら生み出した闇地獄に落ちようとしているわ。
もたもたしていると私達まで引きずり込まれてしまうわ!
真智?
早くここを脱出しましょう!」
「だって……ヘルティック・マチをそのままにして行けないよ!」
崩れゆく精神世界。
「真智!
あなたって本当に馬鹿ね!
私もすぐに後を追うから」
「ちょっと、クオリアさん!?
小さな結界を張ったりして何するの!?」
「いいから。あなたは先に戻っていなさい!」
「ちょっとー!
クオリアさん!!」
あたしは、半ば強引にもとの時代の現実世界に戻された。
———————————————————————
【登場人物】
•
•クオリア
•ヘルティック•マチ
•可織
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