咎を背負う少女・真智視点

悲しい夢からも覚め、あたしは我に返っていた。

意識を取り戻してからあたしの前に存在るのは、ずーと遥か先まで真っ暗な空間。

だけど、水面の波だけは違う。

暗くて見えないけどお日様があるのかな。

水面の波は暖かい光に照らされキラキラと反射している。

ぼんやりとした意識の中であたしは波に身を任せる。

背泳ぎをしながら静かな波の音を聴いているんだ。


『……』


『ねえ?』


「ん!?」

ぼんやりと、本当にぼんやりとなんだけど何かが聴こえる。


『ねえってば?』


あれ?

今、たしかに誰かの話し声が聞こえたような気がする……。

だけど、不思議。

声色が掴めない。

近くから話しかけられているって感じじゃないの。

まるで、あたしの身体の奥から話しかけられているよう


『アタ……、いいえ、あんたよ!』


「え、あたし!?」

あたしは自分の耳を疑った。


『そう、あんた』


「だ、誰?」

あたしはどう対処したらいいかわからずに、

意味も無く自分の両手のひらで頬を強く圧迫する。


『言う必要ないでしょ?

だってアタシは……、

あんたに理由を聞きに来ただけだもん』


「あたしに、理由を?」


『そう。あんたはどうして妹を見捨てたの?』


「やめてー!!」

あたしは強い口調で彼女の質問を拒絶した。


『そう言って現実から逃げてるだけなんじゃない?

だって、あんたが可織を殺したんでしょ?』


「い、い、い、嫌ー!!!」

彼女からその言葉を浴びせられた瞬間、

「痛ぃい!」

あたしの頭には破裂しそうなくらいの激痛が走る。


「痛い痛い痛い!

折れっ!!」

激痛の悪魔は頭だけで終わる訳は無く、

あたしの両手両足の関節までも立っていられない程に激しく締め上げる。


『ドクン、ドクン!』

「ぐっ、ぐるじ〜!

あたしの心臓の鼓動はみるみる早くなり、そして心臓の音もそれに比例してどんどん大きくなる。

『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、

………………………………………………………………………………

………』


「下水博士!?」


「今度はどうしたと言うんだい!?

名前の発音同じだから読者にしかわからないだろうって僕の名前で遊ぶ電話戦士(ぱしり)君?」


「ちっ、バレテーラ♪

博士え〜とっスね、

真智さんは今、急増したアドレナリンの影響で大量のカルシウムが胸腔内に流れ込んで心室細動が始まっているっス!」


「それは、本当にまずいよ!

仕方無い。

※えみたん にもしもの時に使えと言われていた

これ を使うよ」


「博士、その機械ってアレですか?」


「そう、乱数発生器だよ」


※えみたん

月水博士が谷先生を呼ぶときの呼び方。


——————————————————————— 

【登場人物】

•真智

可織かおり

真智の妹。

姉には似ずしっかりしているらしいが、

その他一切が謎に包まれている。

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