ブレインネット・四葉視点

「ん、ん……。

ここは、どこかな—?

私、幼い頃の夢をみていたみたいね—」

私は今こうしてはっきりと目を覚ますと、

仰向けに寝ていた状態から腰を上げ立ち上がった。


一部天井だけを除いて一面真っ暗な世界。

自分の体内から聴こえる心臓と肺の音以外一切音はしない。


『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン』

意識を心臓の音に向けると、心臓の音はどんどん大きくなってきているのがわかった。

私は恐ろしくなってきた。

「とにかく、今は気をそらさなきゃ—)

私はゆっくりと天井を見上げる。

すると……、

きっとここは水中で、あそこは水面なのだろう。

頭上遥か高いところには、ゆらゆらゆらぎながら煌めく眩しい場所がみえる。

まるで海中にお日様の光が差し込み、

波が海面をキラキラと輝かせるところを海中からみているように。


『ドクン! ドクン!!ドクン!! ドクン!!!』


(余韻に浸ってる時間は無いんだ〜。

早くこの空間から移動してみんなと合流しなきゃ〜)

「ね—!

みんな—、みんな—、どこ〜!? どこ〜!?」

私の声は真っ暗な空間をどこまでも反響する。


『……先生!?』


(ん—!?

今の声は—!)


「谷先生ー! 谷先生ー!谷先生ー!

真智ー! 真智ー!真智ー!

四葉ー!四葉ー!四葉ー!」


「その声—!!

宙ちゃん—!?」


「四葉おった!

見つかってよかったぁ」


孤独からの不安を脱した嬉しさから、

宙ちゃんは私の両手首をしっかり掴むと上下にブンブン振り回す。

「宙ちゃん痛いよ—」


「おっと、スマンスマン」


「ところで宙ちゃん一人〜?

谷先生と真智ちゃんは—?」


「あたいは一人だ。

四葉も一人なのか?」


「私も一人だよ〜」




「お前らここにいたのか!?」


「谷先生!!」」


「二人とも見つかってよかった!

真智は、真智は知らんか?」


「真智ちゃんですか〜?

私達も……わかりません」


「なんやて!?

うちは四葉達をみつけたこの地点以外も

この真っ暗で案外狭い空間を一通り手探りで散策してみたのに。

それなのに、四葉達も真智と合流しとらんかったん言うんか?」


「はい。あたいと四葉だけ。

谷先生はどうして真智だけがみつからないと思いうんだ?」


「臨死体験中のうちら四人の意思疎通にはブレインネットっちゅー技術を使っててな、

四人は無線接続で記憶の一部を共有させているはずなんや。

それなのにや、

うちら三人だけは共有が上手くいって真智だけが上手くいっていないとしたらな、

真智の脳波に何か異常が起こっているのかもしれん!」


「先生、それってあいつの命に関わることで

今相当ピンチなんじゃないの!?」


「ああ。宙、お前の言うとおりや。

うちにも相当嫌な予感がするわ。

やけど、うちに任せときーや!」


「え!?」」

理由もなく心配はするなと言う谷先生の一言に、

二人は戸惑いの色を隠せない。


「うちにはな、研究者として、教師として、

真智やお前らを実験に巻き込んだ責任があるんや。

それに、うちら四人は……」


「仲間…ですか〜?」


「そや、四葉。その通りや!

うちら四人は教師生徒の関係以上に大切な仲間なんや!

やから、うちは絶対になんとかしたる!!」


———————————————————————

【登場人物】

真智まち

•四葉

そら

•谷先生

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