真智の記憶の中の妹 かおり・真智視点

『ピコーン、ピコーン』

脳波なのか心拍数なのかはわからないけど、

あたしの脳や体のあちこちに接続された装置は、

あたしの体を測定し続けている。


(ああ、雑念捨てなきゃいけないんだった。

無心、無心〜と!)


あたしは心の中で何度も自分にそう言い聞かせた。

すると、まるでジェットコースターで落下する時のように脳と目と耳に強烈な負担がかかった。

そして、同時に不思議な症状がすぐに現れた。


あたしの目のピントがみるみるズレていって、

谷先生の研究室が万華鏡のような混沌とした光景に変わってしまった。

全体的にまとまった普通の状態から、

まとまりが無くなってバラバラにみえてしまうやつ。

え〜とそれなんで知ったんだっけ?

そうそう、思い出したー!

確か家庭科の時間だ。

実習タルト崩壊!!

いつか谷先生はそんなこと言ってたっけ?




〜〜〜一方その頃谷先生は


「はー、はー、ハクショ〜ン!!

なんや? だれかうちの噂でもして

あること無いこと語ってるんやないやろなぁ?」



〜〜〜真智の体験に話は戻る


(ちょ、ちょっとこれ、どういうこと!?


あたしは戸惑った。


(あっ、またぼやけてきた!)

目は確かに何かを捉えていたが、

なかなか焦点が定まらなかった。


しかし、ほんの二、三分の時間経過の間に、

目と脳が少しずつではあったが環境に順応して

ピントを戻し始めた。


間違いない。

それは、布団を被って寝ている幼い頃のあたしだった。


そして、幼い頃のあたしの目の前に、

何かを話しかけている妹の顔がぼんやりとみえてきた。


(妹!?

何で?)


「お姉ちゃん、起きてよー!

雪積もってるよー! 雪だるま作ろうよー!」


???

「寒いしや〜だ〜、あたしはまだ眠いから冬眠中なのらー!!」


「ママー!!

お姉ちゃん約束したのに遊んでくんないんだよー!」


「こら、真智! いつまで布団被ってるの!!

もうお昼よ! 早く起きなさーい!」


「ヤダー!! 絶対嫌ー!」



(どうして……あたしがあそこにいるの?


昔事故で死んじゃった かおり もいるから、

きっとこれは走馬灯ってやつなのかな?


でも、わからないよ。

どうして!?


ねえ、どうして妹 かおり の姿だけ、

真っ黒に塗り潰されているの!?)




———————————————————————

【登場人物】

•真智

•かおり

真智の妹。

姉には似ずしっかりしているらしいが、

その他一切が謎に包まれている。

•真智の母親

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