第35話 覚醒せし力
「悪意に曝されて目覚めたあたしの魔、見せてあげるわ」
世界が嚇灼に染まり、あたしの魔が目覚めた。
あたしを取り囲む不良共からあたしに向かって発せられる淀んだピンク色の線、悪意の意思を見る視る捉える。
「なっなんだ、この女急に目が真っ赤に染まったぞ」
「怖くて、目を真っ赤に腫らしているだけだ」
「そうだ。けっヒーローにでもなったつもりかよっ。思い知らせてやる」
不良達が一斉に悪意を向けて襲いかかってくる。
あたしなら出来ると念じて、サイドステップ、その着地した足を機軸にターンステップしつつイナバウアー、背を逸らしそのまま手をついて後転。
あたしはダンス部で鍛えたリズム感と体裁きであたしに向けられる悪意を躱していく。それはハリウッド映画でスパイが赤外線センサーを避けていくのに似ていた。
「なっなんだ」
「はれ俺は何をしている?」
自分が発した悪意が対象物に届かない。不良達は意志はあってもそれを向ける対象を認識できずにおろおろし出す。
それでも彼らは悪意を放つのを辞めない。あたしの躍動する体が悪意の線をギリギリ躱していき、狙いを定めた不良達のリーダーに接近していく。
「こいつ自分から向かって来るぞ」
あたしは丁度リーダーと手下達の中間地点まで来た。
前からはリーダーが発する悪意の線、背後からは手下共が発する無数の悪意の線。
ここだっ。
出来るかどうか分からない。
でも出来るとあたしの魔が確信させる。
出来なければならないとあたしの復讐心が決意させる。
あたしは止まって、ハンターン。右手でリーダーの悪意の線を左手で手下達の悪意の線を受け止めた。
「うっ」
あの日を数倍したかのような気持ち悪さと悪寒が走る。強烈な悪意に意識が持っていかれそうになるが、憤怒があたしの意識を保たせる。
「あたしは復讐を果たすっ」
悪意の線を掴んだまま、あたしは右手の悪意の線と左手の悪意の線を繋げた。
「うぐっ、はあはあはあ」
あたしは強烈に襲う脱力感に床にへたり込んで肩で息をする。体が鉛のように重い。もう何をされても人形の如くされるがままだろう。
あたしは自分が行った結果を確かめるべく。不良共を見る。
「うおおおおおおおっ」
「へひゃあああああ」
不良共は飢えた野良犬のように舌を誑し涎を垂らし走ってくる。
失敗した!?
走ってあたしの傍を通り過ぎ手下達はリーダーにリーダーは手下達に襲いかかった。
「ひゃっほーー犯してやるぜ」
「けつだせけつ」
数の差か、手下達はあっという間に必死に抵抗するリーダーを押さえ込み犯し始める。
成功したんだ。あたしは不良達の悪意の対象を変えることが出来たんだ。
目覚めたあたしだけの力、これがあればあたしは復讐を達成できる。
体中の細胞が歓喜し力が湧いてきて、あたしは立ち上がると池の元に近寄った。白濁まみれのかつての自分と重なるその痛ましい姿。でも感傷に浸っていてもしょうがない。まずは拘束を外さないと。あたしは無言で池を拘束する足の鎖を外し、次に腕を拘束する鎖を外す。
「池さん大丈夫? うっ」
自由になった池を支えようとした時だった。突然腹に激痛が走った。腹を見ると針が突き刺ささり、みるみる腹の部分が赤く染まっていく。
一体何が?
気配を感じて蹲りながらも見上げれば、あたしを見下して冷笑を浮かべる池が見えた。
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