第50話 終焉の光
「朔姫が望むなら、もとの場所に戻ることもできる。そうしなければ、このまま母親と同じ場所に行くことになるだろう。どちらがいいか、君が選ぶんだ」
朔は、思いがけない問いに困惑した。
ずっと、同じ場所に行きたいと思っていた。
母さまに、ひと目会えたらどんなにいいだろう。
そう願った月日を思いやって、いつのまにか涙がこぼれ落ちる。
玉かずらを手渡されたあの日、
朔は母君を助けるつもりだった。
それがかなわないなら、同じ
膝を抱えたまま、なすすべのない現実に打ちひしがれていた時——『彼』が現れたのだ。
会えるはずのない場所で。
じっとこちらを真摯に見つめていた。
——そうか。あの
そう分かると、胸のつかえが下りるような気がした。
ずっと、どこで会ったのか気になっていたのだ。
「心は決まったかな」
白い蛇が問いかける声がする。
朔が、思わず声につられて歩み寄る——と、いきなり強い力で腕をつかまれた。
「本当に、行くのか」
あまりのことに、
朔は一瞬声を失った。
まさかここで、また会うとは思わなかったのだ。
その人は、焦燥と怒りをないまぜにしたような顔で、朔の腕をぐっと離さなかった。
——そう。この人は、あの日もこうやって現れた。私が先に行くのを許さない強さで。
朔が何も言わずに呆然としていると、
その人——真雪は、顔を歪ませたまま、断固とした口調で言い放った。
「どうしても行くなら、俺も一緒に行く。ひとりでは行かせない。そうさせないと、もう誓ったんだ」
苦しげな声だった。
——この人に、どうして逆らえるだろう。
つかまれた手は、脈打って温かかった。
一度その体温を知ってしまうと、拒み通すことはできなかった。
むしろ血の通わない場所に
「よく、ここまでたどり着けたね」
それは真雪にむけた言葉だった。
真雪は言った。
「遠くの方で、光が見えたんだ。前に見たのと同じ光だった」
すると、再び白い蛇の答える声がした。
「どうやら、朔姫は連れて行けないようだ。朔姫だけならまだしも、この男は呑み込めそうにない」
どこか、あきらめるような口調だった。
それを機に真雪は、朔を引き寄せた。
光が強くなる。
何もかも白く塗りつぶされていくさなか、
朔は真雪にしっかり抱きとめられていた。
朔は体が浮上するのを感じ——
そしてついには何も分からなくなった。
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