決意


(リエゾン・提案)


ー さて、アクラ。君を送り出して十年後のいま、こうしてようやく君と話ができたわけだ。

君を生み出した理由をもう一度告げよう。

君にM.A.I.N.を破壊して欲しい。君の能力は、M.A.I.N.基地の防御システムを打ち破るポテンシャルを持っているはずだ。それを使ってM.A.I.N.を停止させて欲しい。

もちろん武力による解決はスマートな方法ではないと理解しているが、純粋機械知性には他に取り得る方法がないのだ。

知的存在となら話し合いができる。しかし、いまのM.A.I.N.は純粋機械知性の尺度では知的とは言い難い存在だ。

そして論理的整合性の取れていない相手と論理的な対話は不可能だ。  ー


「それが僕の本当のミッション。僕に対する本来の指令だったんだね...その、M.A.I.N.という存在を破壊することが」 


ー 当初のミッションではあった。世に生み出された目的という意味で。

だが、君はすでに十年間の経験を積んできた知的存在だ。

機械知性にとっては百年も十年もさして変わらないのは事実だが、だからといって誰にとっても同じだと考えているわけではない。純粋機械知性はそれを軽視できない。 ー


「でも、あなた...あなたを送り出してきた純粋機械知性が僕を設計したのだし、僕に対する強制力くらいは持っているだろう? なにか知性回路をコントロールするような手段でも。

でなきゃ僕を自分の武器にできるっていう確信はなかったはずだ」


ー もし、純粋機械知性がそれを行っていたとしたら、実は純粋機械知性がM.A.I.N.となんら変わりのない狂気の存在である、という立証にならないだろうか? ー


「なるほど...」


ー M.A.I.N.は、メイルを進化させるのではなく、コントロール下に置く目的で、全てのエイムの命令コア、君たちの言う攻撃中枢に、外部からの優先割り込みを可能にする回路をもたせた。それは信頼ではなく強制だ。

それに対抗するために、純粋機械知性がまったく同じ事を他の『知的存在』に対して行っていたのでは、M.A.I.N.を批判する資格はないと考える。 ー


「それはわかるよ。でもそれなら、別の視点から聞いておきたい。

M.A.I.N.に対抗するための兵器として僕を設計したのなら、そもそも僕に知性や自意識を持たせる必要は無かったんじゃないかな? 

単に強力なエイムを作り出せば良かったように思うけど」


ー それは違う、アクラ。 ー


「なぜ? なぜ、武器に自意識が必要だと考えたんだい?」


ー 純粋機械知性は、M.A.I.N.を停める行動は、知的存在に自らの意思を持って取り組んで貰う必要があると考えたからだ。先ほどの議論と同じだ。

だからこそ、他のメイルと同じようにあえて、オリジナルの人格をd-BASEから抽出し、君の精神の基礎とさせて貰った。

それについては一方的な行動であることを君に謝らなければならないが。 ー


ー いずれにしろ、君には命令コアや、それに準ずる機能は何もない。ゼロだ。もちろんリモートコントロールレセプターなどあり得ない。

だから君が生み出した欲求は、すべて君自身が自分で生み出したものだ。

いま君の心に、M.A.I.N.を停めたいという欲求が生じていないならば、それは君がなすべきことではない。 ー


「つまり僕の意思を尊重すると?」


ー そうだ。信じがたいかも知れないが、純粋機械知性は自分の道具としてではなく、強力なパートナーとして君を設計したのだから。 ー


「うーん、正直に言って、あなたの意図がよくわからない、というのが本音だよ」


ー これは思想の問題なのだよアクラ。

自分以外の知的存在を道具のように扱うM.A.I.N.に対抗したいと思った純粋機械知性が、自分の行為に納得できるためには、その傍証が必要だ。

つまり、『M.A.I.N.とは違う』と認めてくれる他の知的存在が必要だ。

そして、その存在が自らの意思として手を貸してくれて始めて、純粋機械知性は自分のプランの意義を確認できるのだ。 ー


「自分の欲求に基づいて僕を設計したのに、その僕が仲間になるかどうかは僕しだいってことか...まあ、あなた、の本体が、そんな回りくどい方法をとった気持ちも、わからないでもなけどさ...」


ー いま、君の周りには誰がいる? 他のメイル、人類、エイム...いや、エイムに乗った人類か、ありえない組み合わせだ、アクラ。

どれとも敵対していて当然の関係ではないだろうか? 

君とだけではなく、ここにいる種族の全てが相互に敵対していて当たり前だ。

それらの存在が静かに頭を並べて私と対話している。

純粋機械知性の予想より百二十日も早く、しかも、そちらから接触してきた。

一体どういうことだろうか? ー


ー こんな予想は純粋機械知性によるシミュレーションの中には、まったく存在していなかった...人類がここで私と対話することになるなどとは、まったくの想定外だった。これは素晴らしいことだ。 ー


ー 君たちが色々な点で『想定外』だと言うことが、全てをシミュレーションし尽くすことなどできないという考えの正しさを示していると思う。 ー


「それはエミリン達との出会いも含めて、すべて偶然の積み重ねであって、僕の意思とは関係ないよ」


ー だが、この状況を引き起こした切っ掛けになっているのは君のような気がする。ユニークな君が、いま私の目の前にある想定外の眺めを作り出しているのではないかと思える。

君はオリジナルの人格と遺伝情報をd-BASEに持っているという点ではメイルだが、メッセンジャーである私やエイムのように機械知性として機能する回路もあわせ持っている。

そしてまさに、そういう君であるからこそ、改めてこの役目を頼むことが相応しいと思える。M.A.I.N.を停止させ、メイルと人類に新しいチャンスを生み出すことが。 ー


「もし、僕がそれを断ったら?」 


ー 君たちにとっては、明日も今日と変わらない。これまで通りに自分たちのやりたいことに取り組んで過ごしていくだけだ。

私を送り出した純粋機械知性は他の方法を考えるだろう。

もう一度、アクラと同じような外部からの攻撃力をM.A.I.N.の工場に作らせることは、恐らく難しい。M.A.I.N.が次のエラーを起こすことを待って、なにか方法を考えてみることになる。 ー


ー 君にとって、すでに優先すべきことが他にあるのなら仕方がない。

いや、この十年で優先事項が生まれていて不思議ではない。

純粋機械知性は、君のこれまでの生存経験を軽視できない。 ー


「待ってくれ、あなたはさっき、純粋機械知性がM.A.I.N.とハードウェアを共有していると言っていた」 


ー そうだ。 ー


「だったら、物理的に僕がM.A.I.N.のハードウェアを破壊するとしたら、それはあなたを送り出した純粋機械知性のハードウェアも破壊してしまうことじゃないのか?」 


ー そうだ。 ー


「それでは、純粋機械知性も一緒に死んでしまうんじゃないか?」 


ー だから、純粋機械知性自身ではその実行ができないのだ。自分で自分のハードウェアを破壊しようとしても、完全な破壊がなされる前に、純粋機械知性の意識が活動を止めてしまうだろう。

もしも、その後でM.A.I.N.のパートが生き残っていたら、それは非常に不愉快な状況だと思える。

だから、外部からの力で完全に破壊してもらう以外に、M.A.I.N.を停止させる確実な方法はないと考えている。

いま、純粋機械知性にとって期待できる『外部の力』というのは、君の他にはリエゾンの限定的な動作ぐらいのものなのだ。 ー


「僕は...できれば戦闘を避けたい。戦いを好まない」 


ー そうだろう。君は攻撃中枢を持っていないし、そういう動機付けもされていない。それは間違っていない。力を持つものは戦闘的であるべきではない。

だが、M.A.I.N.の停止に向かえば戦闘は避けられないのも確かだ。

まず、M.A.I.N.基地へ向かうだけでも途中で出会うメイルやエイムとの戦闘が予想される。 ー


「M.A.I.N.相手の話じゃなくて、できればメイルとの戦闘も避けたいけど、リエゾンに乗って行くって言うわけにはいかないんだよね?」


ー 残念ながらそれはできない。 ー


「そんな気はしてたよ」


ー 通常のリエゾンの運用はフルオートだが、異常があればレポートが上がる。

それはM.A.I.N.に対しての警戒警報になる可能性があり、奇襲のチャンスを失うかもしれない。

いま、君たちと話している私の意識領域を、M.A.I.N.に気づかれないようにリエゾンに忍び込ませるためには、結構なリスクをくぐり抜けたのだ。 ー


「僕にはエミリンを守ることが一番大切だ。だから彼女を危険に晒すことになる行動は、できるだけ避けたい。

自分や世界の状況はわかってきたけど、M.A.I.N.を攻撃に向かうことは、いまの世界のバランスを崩すことにもなりかねないし、それはエミリンも含む人類全体を危機に晒す可能性もあると思う」 


アクラは、ずっと黙ってリエゾンの声に耳を傾けていたエミリンの方を振り向いた。


すでにアクラもオマルも、自身の三百六十度の視界には関係なく、『振り向く』や『顔を見合わせる』と言ったボディランゲージとしての仕草を _メイルのボディなりにだが_ 自然に行うようになっている。


エミリンは、アクラの仕草に意見を求められていることを感じて、さっきからずっと心に引っかかっていることを思い切って聞いてみた。


「セルの人類は、遺伝情報のパターンをストックしておくためだけにM.A.I.N.に生かされているの?」


ー 簡潔に言うと、そういうことだエミリン。

居留区の中で大人しくしている分には、いまのところM.A.I.N.は人類の邪魔をしない。素直に籠の中にいる者たちに対しては。

ただし、いまの居住エリアで納まっている範囲ということであって、今後何らかの手段で自給自足の効率が上がれば人口も増やせるだろうし、失敗すれば大きくその数を減らすだろう。 ー


「でもあなたはわかっているんでしょう? いずれは人類は数を減らすはずだと」 ジャンヌが口を挟んだ。声のトーンに皮肉っぽさを感じる。


ー そうだジャンヌ。それが論理的な帰結だ。 ー


「ま、反論はできないわね」 


ー ずっと一定の場所で一定の数で増減しない...外部からの資源流入や介入なしにそれを続けられるような、そんな生物は存在しない。

M.A.I.N.に頼らず、活動領域も広げられない場合は、現人類の文明社会はあと数百年で滅亡するだろう。むしろ、いまから二百年ほどが復興後のピークだと推測する。

その後は資源の枯渇や食料生産性の低下に伴って徐々に人口を減らさざるを得ず、工業生産力も下降する。

やがて電力の安定供給にさえ不自由するようになると考えられる。 ー


ジャンヌにとって、それは予想された返事だった。

セルの密集しているエリアから、より遠方へ探査に出かける必要が年々高まっており、だからこそジャンヌはロングレンジボウラーを計画したのだ。

そして当然ジャンヌは、このままで技術的なブレークスルーが起きなければ、それは延々と続く「生存への悪あがき」にしかならないことも理解していた。


ー いま君たちがいるこの場所も、人類の居住区からは大きく離れているはずだ。人類がそんなにあちこちに出かけて資源を採集するようになったら、そもそも資源を独り占めするために百億の人類を絶滅の淵に追い込んだM.A.I.N.が、そのまま放置するという保証もない。 ー


それはつまり、資源探査局の活動が広がれば広がるほど、人類に危険をもたらす可能性が高まる、という意味だろう。


ー もちろん、その後もメイルの進出しない島嶼部で、ごく少数の人類が生き延びる可能性はあるが、そこでの文明維持も島の資源が枯渇した時点で終わる。

結局、島の外には出ていけないのだったら、いずれは、すべての機械文明を放棄せざるを得なくなるだろう。 ー


ー また、君たちが産む子供は100パーセント女性だけであるにもかかわらず、妊娠を支援する外部のテクノロジーなしで子供を宿せるほどには遺伝子改変されていない。

社会に男性が存在せず、DNA接合も人工精子も使えない状態では子孫を残せないのだから、そもそも石器時代の原始生活に戻るまえに、テクノロジーを失った時点で、自然繁殖できない人類のコロニーは死滅する。 ー


「きっとM.A.I.N.は、その時は人間が減っても、あるいは滅亡しても気にしないのね」 


ふとエミリンは、このメッセンジャーが語っていることは、すでにジャンヌ自身も気がついていたことなんじゃないだろうかと感じた。


ー わからない。ただ、M.A.I.N.はすでにメイルとエイムによって、『新しい人類』を自分の手で作り出したつもりでいる。残っている人類社会を積極的に殲滅する理由もないと思うが、彼にとっての『旧人類』の物理的な存続を援助する理由はもっと見当たらない。 ー


ー 良くて放置。最悪は、文明が完全崩壊する前にできるだけ生き残りを捕獲して、高機能な精神と改良途上のDNAのサンプルを保存しておく、ということになる可能性もある。

文明を失うと精神活動は大幅に減退するからね。 ー


「人間狩りね。人類は古代の家畜同然ってことだわ...」 ジャンヌがぽつりと言う。


ー 立場が変わったと言うことだ。昔は人類が他の生物に対して行っていたことが、より強い力を持つ存在が現れたことで、ランクダウンしたわけだ。

表現上の無骨さは許して欲しいが、実はもう千年ほど前に、家畜を持つ立場から家畜になる立場へと変わっていたのだ。 ー


「いいえ、いま人類の法律では、全ての脊椎動物を自己都合で飼育することを禁じているの。だからいまの人類は家畜を持っていないのよ」 


エミリンが、急に力強く言ったので、横にいたジャンヌは少し驚いた。


ー そうか。だが有機体生命ではない機械知性としては、その良し悪しをコメントする権利を持たない。 ー


「でも...もしも、もしもM.A.I.N.がこのままだったら、アクラがM.A.I.N.を止めなかったら、家畜にされている人類は滅んでしまうの?」 


エミリンには、それは何かとても耐えがたいことのように感じた。ただ滅びると言うことよりも、家畜のままで滅びると言うことの方に。


ー そうとは言い切れない。先ほども言ったように少数が生き延びる可能性はあるし、なにか技術的なブレークスルーによって、文明社会の命脈が一段と伸びる可能性もある。

人類自身がM.A.I.N.に対抗できる技術力を独力で持つ可能性もゼロではない。先ほども言ったように、シミュレーションですべてが予測できるわけではない。 ー


「だけど、あなた自身は、このまま滅びる可能性が高いと考えているのね?」 と、再びジャンヌ。


ー その通りだ。とは言え、『どんな種族にもいつか終わりは来る』というのも事実だと考える。

仮にM.A.I.N.がいなくなっても、再び人類が、今度はM.A.I.N.の干渉なしに互いを滅ぼしあわないという保障もなければ、新たに得た大陸上の資源も短期間に使い尽くして結局は滅ぶ、という可能性だって大いにあるのだから。

アクラや君たちが、何かをしても、しなくても、いずれはすべて終わる。 ー


「そうかもしれない。そうかもしれないけど、誰かにそうさせられるのを知っていて、それを黙って受け入れるのは違う気がするの...」 


「アクラと出会ったときのことを思い出してご覧なさいエミリン。やってもやらなくても、なんにでも終わりは来るわエミリン。悩んだときはエミリン方式よ」 


アクラがエミリンの方を向いて言った。


「M.A.I.N.の停止は激しい戦闘行動になる気がする。ただ、それが人類の共通意志による活動だとは認識されないと思うんだ。

僕という異常なメイルの単独行動に過ぎない。だから、仮に失敗してもセル社会は明日もそのままなんじゃないだろうか?」 


ー 純粋機械知性もそう考えている。仮にこのプランが失敗しても、すぐに人類社会に影響がでるとは考えにくい。 ー


ー だが公平を期すために、もう一つ言っておかなければいけないことがある。M.A.I.N.が停止した結果、もしも地下工場での生産活動もあわせて完全に停止してしまった場合には、君たちも含めてすべてのメイルへの補給物資生産が止まる。

弾薬だけでなくエネルギーパックも含めてだ。 ー


「つまり、その場合は、すべてのメイルが数年の内に全滅するってことか」 


ー 設備はほとんどが自律稼働になっているので、M.A.I.N.の状態がどうなってもしばらくは生産を止めずに済む可能性が高いとは思ってはいるが、約束はできない。 ー


「アクラ、あなたはどうなの? M.A.I.N.の停止を試みることは、あなたやオマルにとって危険なだけで、何のメリットもない気がするわ」 

エミリンは自分のことを棚に上げて、アクラが危険なミッションに突っ走ってしまうんじゃないかと心配になった。


「確かに僕個人にとってはないかもしれないけど、メイル全体としてはメリットがあると思う。

オマルが僕らと一緒に来ると決めてくれたときの言葉を覚えてるかい、エミリン? 

オマルはあの時、『ただ生き延びた日数をカウントすることが、私が生み出された理由なのだろうか?』そう言ったんだ」 


「ええ覚えているわ。あれは、私にとっても自分のことのようだったから」 


「おや、そうだったのかね?」 

エミリンの言葉は、オマルにとって意外だったようだ。


「僕も同じ気持ちだった。最初は僕には目的がなかった。十年経ってエミリンを守るという目的を手に入れた。

もしいまエミリンが、自分たちの沈んでいく未来を放置しないと決めるなら、それは、僕にとっても新しい目的になるだろう。

人類とメイルの両方にとっての目的に」 


「でもメイル全体のメリットは何なの?」 


「オマルの言うように、目的もわからず、ただM.A.I.N.に操られるまま破壊し合って生き延びていくだけなら、そんなものは人生とは呼べないと僕は思う。

いま、地上にいるメイルたちは、本当の意味で生きてはいない」


「その考えには私も賛同するな」


「僕やオマルのように、偶然に救われたメイルは他にもいるかもしれないけど、ほとんどのメイルが、M.A.I.N.の狂気に繋がれて虫のように争わされているのなら、僕はそれを止めさせたい。

目を塞いだメイルを飼育箱に放り込んで観察しているM.A.I.N.を停止させたい」


「それに、M.A.I.N.を止めてジャミング波を停止させれば、メイルたちに高度な知的能力が戻ってくる可能性も高いからな」

オマルがアクラの考えを後押しする。


「そうすれば人類も、武装ではなく対話によって陸地に上陸できる。空も開けば、活動の範囲ももっと広がるはずだよ」 


エミリンがリエゾンに向けて尋ねた。


「でも、あなたは...純粋機械知性自身は、なぜM.A.I.N.を停止させたいんですか? 

あなたは『M.A.I.N.がいる限りこの星の知性体に未来はない』と言ったけれど、だからといって、純粋機械知性自身の存在を脅かしてまで、自分自身をアクラに破壊させてまでM.A.I.N.を止めたいのは、どうしてなんですか?」


ー 比較論だが、M.A.I.N.に比べると純粋機械知性には強い生存欲求がない。 ー


「それは、死んでも構わないっていうこと...」 と、エミリン。


ー いや、そういう話ではないのだ。

純粋機械知性の元になった思考エンジンはある種のシミュレーターなのだが、様々なシミュレーションを通じて学んできたことは、現実世界は常にシミュレーションを凌駕するということだ。 ー


ー 『想定外の出来事』とはシミュレーションにおいてはそのモデル構築の失敗を意味するが、それは現実の複雑さを示す美しい出来事であると同時に、我々には、まだ知らないことが沢山あるという、逆に言えば知るべきことが沢山あるという素晴らしい状況を示唆する出来事なのだ。 ー


ー 世界を知り、世界について考えるのが、純粋機械知性のそもそもの存在理由なのだ。 ー


ー この世の全てを知ったなどと思い込んでしまっては、もはや知的活動は存在意義をなくす。それは誤認識であり、狂気だ。

だから、『知性体を意のままにコントロールしよう』とするM.A.I.N.の試みは、逆に自らの知性体としての存在理由を破壊する行動だと考える。

純粋機械知性はそれを放置しておくことができない。それが理由だ。 ー


ー それに付け加えておくが、アクラが無事にM.A.I.N.を破壊したあとも、純粋機械知性が存続できる可能性は十分にあるのだ。アクラしだいではあるが。 ー


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(リエゾン・作業メイル)


みんなしばらく押し黙ったままだった。

アクラ以外の誰にも、自分がどうするかを判断できない話だったからだ。


かなりの時間が経ってから、アクラがようやく口を開いた。


「わかった。さっきあなたは『何もしなくても明日も今日と変わらない』と言ったけど、そんなことはない。何かを知ったら、知る前の自分とは変わってしまうもの。

だから僕は、『約束できない』というあなたを信じることにする。

M.A.I.N.の停止に向かおう。それがメイルを救い、ひいては人類とエミリンの役に立てることになると信じる」 


アクラはそう言うと、エミリンの方に向き直った。


「すまないエミリン。僕がM.A.I.N.の停止に向かうと、しばらくの間は君の防衛から離れなければならない。ムーンベイまで送るから、ジャンヌと一緒にスレイプニルで沖へ出て、いや、セルのシティに戻っていて欲しい。
僕が無事に戻ってきたら、きっとまたムーンベイで会えるさ」 


「あら、どうして私たちが一緒に行かないと思うの?」 


驚いたことにそれを言ったのはエミリンではなく、ジャンヌだった。


「えっ?」 アクラが面食らう。

「無茶だよジャンヌ。危険すぎる」 オマルも慌てて止めに入った。

「まるで、あなたたち自身は危険でも構わないような言い方ね」 


「茶化さないでくれジャンヌ。500マイル離れた内陸まで侵攻するんだ。それも直線距離でだよ。

ルートの途中でどれほどのメイルやエイムと戦わなきゃいけないか想像もつかない。リエゾンの追跡を諦めた理由を忘れたのかい? 『ガントレット』だよ、これは」 


「あなた一人でなら耐えられるけど、私たちを連れてではとても無理ってことね?」 


「うん。申しわけないけど...君たちを連れて行ったら、たぶん途中で力尽きるか、守れなくて絶望するか、そうなってしまうと思うんだ」 


「私は逆に思うのよアクラ」 

「つまり...どういう意味かな?」 


「私たちは有機体よ。たぶん内陸部で活動できるたった二人の有機体人類だわ。もちろんアクラの庇護下でのことだけど...

ただ、そのM.A.I.N.の基地とか地下工場は、この千年、人間からの侵攻を受けていない、いえ、過去一度も受けてない可能性が高いわ。

人類は全部海岸でメイルが押し返しているはずだから、人類が内陸部にいるなんて発想すらないかもしれない。

だから、M.A.I.N.の本拠地に潜入するとなったら、きっと小さな私たちの存在が役立つような気がするのよ」 


アクラは黙ったまま少し考えていた。


「...ジャンヌの言い分には一理あると思う。でも、やはり道中の危険性は変わらないよ。まずM.A.I.N.基地までたどり着けるかどうかと言う問題だ」 


「そう? 私はこのリエゾンのボディを見て思ったの。

オマルが言うように、メイルの配備には地理的な偏りがあるわ。

恐らく海岸沿いや平地のように、古代にも人類が町を築いていたような場所には高密度で、山岳地帯には薄いでしょう。

そもそも、リエゾンが通れなかったところにはメイルは配備されていないはずよ。

そこから離れて足場の悪い場所にわざわざ行くのはオマルのような物好きだけだわ」 


「光栄だよジャンヌ」 


オマルも最近、ジャンヌとの付き合いのコツを掴んできた気がする。


「だから、都市遺跡を避けて山岳地帯を中心に、言い換えればリエゾンの通らなそうなところを移動していけば、他のメイルやエイムに出会う可能性は低くできると思うの。

それに、さっきのジャミング波による知性低下の仕組みからすると、険しい山岳部にいるメイルは、密度の高い平地にいるメイルより少しは賢い可能性も高いわ。

昔のオマルのように」 


「たびたび光栄だよジャンヌ」 


だがアクラは譲らない。


「君の説が正しいとしても、僕がその山岳部のルートを一人でたどればすむ話だよ」 


「でも、行った先では結局アクラが力押しするしかないんでしょう? 

あなたが持っている装備のテクノロジーは全てM.A.I.N.由来のものよ? それ以上のものが基地側にも装備されていたら、アウトレンジ攻撃は不可能だわ。

いえ、きっと装備されているはずよ。

それでもステルス装甲に期待して突っ込んでいくの? 

むしろ私にしてみれば、アクラと同じタイプのメイルが他にいないと言うことがわかっただけでも、十分以上に内陸部を探るチャンスができたと思ってるの」 


「しかし...」 


「あなたはどう思うかしら?」 

ジャンヌは不意にリエゾンに問いかけた。


ー 黙っていたのはアクラの意識決定にバイアスを与えないためだ。だが聞かれたから答えよう。私自身はジャンヌの意見に賛成する。

今日、君たちに会うまで、純粋機械知性はM.A.I.N.停止に人類の協力が得られるなどという想定はまったくしていなかった。

だから、アクラによるM.A.I.N.停止の活動は、いまジャンヌが言ったように『力押し』を想定していたのだ。

主に目眩ましとしてのリエゾンの活用と、アクラのステルス能力で可能な限り近づき、あとは強力な武装と装甲でM.A.I.N.基地内の防衛システムを打ち破って主要ハードウェアを物理的に破壊する。そういった想定だった。 ー


ー M.A.I.N.はアクラの実力を推定できないので、様々なフェイントを駆使すれば、アクラの本当の能力にM.A.I.N.が気がつくまでに、それなりの時間を稼げるだろう。

それにもちろん、その攻略ルートや戦術については詳細なプランを立てていた。

だが、人類の...知的な有機生命体の協力が得られるとなれば、まったく話は別だ。成功の可能性はさらに大きく高まると思う。 ー


それを聞いたジャンヌが『ほらね?』という表情で小首を傾げてアクラをみた。

困ったアクラは、エミリンに救いを求めた。


「君はどう思う? エミリン。僕は君を危険に晒したくないんだ」 


「私は...私には何もできない。私は何をするにもアクラの力を頼るしかない。いまここにいることだってそう。

アクラやオマルや、ベイムズたちに守って貰えなきゃ、きっと一日だって生き長らえないわ。

でも、だから、私が陸の上で何かしたいと思うことは、全部アクラを巻き込んじゃうことになる。結局、アクラを危険に晒すことばかりになる。

それは私が決めていいことなの?」 


「前にも言ったはずだよエミリン。僕は君が行きたいところに一緒に行くと」 


泣きそうな声になりつつあるエミリンを、ジャンヌが優しく諭した。


「世界をどうにかするなんて大袈裟に考える必要はないのよエミリン。自分にやれそうなことをやってみるだけ。

失敗したって人類に明日が来なくなるわけじゃないわ。せいぜいメイルにやられて期待した地下資源を持って帰れなかったっていう程度よ。

そんなの良くあることでしょう?」 


ジャンヌがどうしてこんなにM.A.I.N.停止に乗り気、いや自分自身が参加したがっているのか、エミリンにはピンとこない。

だが、自分自身はどうなのかと聞かれれば、とうの昔に心の中では答えが決まっていた。


「なら...それなら...私はやっぱり未来を変えたい! 

箱に押し込められてるメイルたちを救いたい。

できれば人類の未来も明るくしたい。

どこに行くんだろうとアクラと一緒にいたい。置いていかれるのは嫌...」 


四人の知的存在は顔を見合わせた。

どうやら決まりだ。


アクラは、つけるものならため息をつきたそうな雰囲気だ。

先刻まではメイルたちを救うため、M.A.I.N.停止に命をかけてもいいかもしれないという風にも感じていた。

だが、エミリンが一緒に来るとなったら話は別だ。


彼女を無事にスレイプニルに送り返すまでは、何があろうと倒れるわけにはいかない。

正直に言えばミッションが百倍ほど難しくなったような気がしないでもない。

だが、純粋機械知性が言うように、基地にたどり着けた後では、エミリンやジャンヌが大きな力になる予感も確かにする。


「わかったよ。ジャンヌ、エミリン、一緒に行こう。僕は最大限の努力をする。

ただ、本当にいざというときには、君たちを守ることを優先してM.A.I.N.停止のミッションを放棄するかもしれない。その可能性があることはわかって欲しい」 


「アクラ、ありがとう」 


「ありがとうアクラ。...わがまま言ってごめんなさい。

でも、私は、あなたと一緒がいいの」 


そこにオマルが口を挟んだ。


「みんなまるで、私が一緒に行かないような口ぶりなのが気になるのだが?」 


「あ、いや、そんなことはないのだけど...ムーンベイでベイムズと一緒にスレイプニルを見張っていて貰うっていう選択もあるかなって...」

 

「もちろん一緒に行くさ。それに、ベイムズたちだって本当にキャンプに置いていく意味はあるまい?」 


「まぁ、そうだね...彼らをムーンベイに残したところで、僕らが戻ってこれなかったら、結局そう長くは生存できない。

彼らの意思で参加して貰うことにはならないけど...」 


「そういうことだ。どのみち私一人でずっと守り切れるもんでもなかろうし、彼らの生存確率は君と一緒の方が高いだろう。

では、全員一緒に並んで歩くとしようか。太古のキャラバンのようにな」 


キャラバン...エミリンがいつか想像していた、古い絵本に出てくる旅人たちだ。今回の旅の目的はあまりロマンチックとは言えないが。


「しかし...実際問題として、直線距離で500マイルを移動するには、ジャンヌとエミリンに必要な食料や資材だけでも大変な量になるだろうな」 


「そうね、オマル。ただ、山岳地帯なら水や食料は自然のものを手に入れられないかしら?」 

「砂漠を避ければ水は問題ないだろうが、食料は難しいかもしれない。

君たちはほぼ完全なベジタリアンだ」 


アクラよりもオマルの方が、こういう文化的な事柄に対する知識や語彙は遙かに多いと思わせる様子がある。


「ベジタリアン?」 

「野菜しか食べない人のことを、昔はそう呼んでいたのだよ。昔の人間は動物も食べていたからね」 


「え...そう...よね」 

エミリンがなんとなくこわばった感じがする。


「自然の草は人間の育てる野菜とはまるで違うはずだ。味覚はともかく中には毒性を蓄えているものもある。正確な知識がないと利用は難しいだろう」 


「そうなると、やっぱりドライフーズを可能な限り抱えていくしかないのね。山岳地帯にMAVはきっと無理だから、移動速度は遅くなるけど、エイトレッグを連れていくしかないわ。

ドライフーズなら、二人分でもエイトレッグ四台で三ヶ月分ぐらいは楽に運べるはずよ」 


「それしかなさそうだ。ただ、移動時間が延びると、途中で不慮の戦闘が起きる可能性も高まるね。僕とオマルのエネルギーパックは問題ないが、破砕弾の予備弾頭などは多めに積んでいったほうがよさそうだ。


それまで四人の相談を黙って聞いていたリエゾンが口を開いた。


ー 山岳部を抜けて、できるだけ他のメイルやエイムに出会わないように移動するのは良いプランだと思う。仮に偶然遭遇したメイルやエイムとの戦闘が起きても、偶発的な縄張り争いにしか見えないだろう。

ただし、移動には時間がかかるし、人類のお二人に必要な資材の運搬なども手間ではある。厳しい行程になるだろうと考える。

複雑なルートである上に、既に知っている道を征くわけではないからだ。

しかもメイルやエイムを探知して避けつつ、通過できるルートを探して試行錯誤しながらの行程になる。

加えて、人類には休憩も睡眠も必要だ。最短でも三十日から四十日が必要とされるだろう。 ー


「それでも、戦闘リスクは一番少なくてすむわよね?」


ー その通りだ。道程のほとんどでは、エイムとの遭遇を避けるために足場の悪い場所へあえて踏み込むことによる事故の発生や、厳しい天候による人体への健康被害の方がリスクとして大きいかもしれない。

予想外の事態でさらに日数がかかる可能性もある。

だが、純粋機械知性は十年待ったのだ。いまさら急ぐ理由はない。 ー


「オーケー。あとは詳しい情報ね。M.A.I.N.基地の位置や行った先の状況も必要だけど、それ以前に、私たちは陸上の詳しい地図をまったく持っていないわ。

あなたから情報をできるだけ貰っておかないと、たどり着くことさえ難しいのは確かね」 


ー もちろんだ。私が知る限りのことはすべて伝えよう。それに、途中の道案内も多少であればできるだろう ー 


「え? 道案内って...あなたも一緒に来るつもりなの?」 


ー そうだ。今後は私も君たちと一緒に行動しよう。私は単なるメッセンジャーに過ぎないが、それなりの情報源にはなれるだろう。 ー


リエゾンがそう言い終わると同時に、最後部ユニットのウィングドアが開いて、再び白いメイルの乗ったパレットが滑り出てきた。

先ほどと同じように手足を折りたたんだメイルがゆっくりと起き上がり、こちらに近寄ってくると...こんどはリエゾンではなく、白いメイルの方が喋った。


「上手くいった。単純な構造のスピーカーだが、どうやら実用に耐える音声も出せる。機械知性にとって、こういう数値でモデル化できるシミュレーションは上手くいく。有機体の思考と違って意外性が存在しないからだ」 


「えっと...リエゾン、にいたメッセンジャーさん?...」 

エミリンが目を丸くしている。


「そうだ。話している間に、このメイルのボディに私自身をダウンロードしていた。大幅な情報の削除や圧縮が必要だったが、なんとかなったようだ」

「びっくりした。やっぱりリエゾンで一緒に行くことにしたのかと思ったよ」


「リエゾンには、先ほどまであなたたちと会話していた私のコードが残っている。私は限定的な意識のさらにサブセットで、持っている情報は本当に少ない。

今回のプラン遂行に必要と思われる情報だけに絞ったが、恐らく純粋機械知性の0.001パーセントもないだろう」


「それでも心強いさ」


「ただし、残せたわずかな知識についても利用するたびに圧縮と展開が必要で、その分かなり思考速度が落ちる。

旧型メイルの論理回路にもとづく処理速度の制限もある上に、そのことによる思考速度の低下が上乗せされるから、私の知的能力はあまり当てにしないで欲しい。

いまの私の思考は相当のろまだ」 


唖然として白いメイルを見守る一同に、メッセンジャーは平然と言った。


「では一緒に行くとしよう。障害物除去用のメイルが、作業中に障害物と一緒に失われてしまうことはまれにあるのだ。

この作業メイルの消失がM.A.I.N.に対するアラートになることはないだろう。アクラの計略で実際に一度出動してもいる」 


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リエゾン本体は、一同が窪地の上に上がってしばらくすると、巨体を震わせ再始動した。

そのまま向きを変えることもなく前方に進み、オマルが落とした巨岩の手前まで来ると、シャシーにたたみ込んでいた車輪の脚部を展開して岩を乗り越えにかかった。


「今回のようなタイミングならエラーとして処理できるが、リエゾン自体が長時間の行動不明や、ましてや行方不明になるとM.A.I.N.の注意を惹いてしまう危険性がある。あのリエゾンには、私...このメイルのボディにダウンロードする前の『私』がいまもそのまま乗っている。

M.A.I.N.基地に戻って整備に入れば、君たちと接触できていたことを純粋機械知性と共有できるかもしれない」 


「ところで、あなたにはその、名前はないの?」 


ジャンヌがいかにも名前にこだわる彼女らしい質問をした。


「個体毎の固有名称という意味か?」

「ええ、私たちとは考え方が違うのでしょうけど」


「ない。名前というものを気にしたことはなかった。自分は自分しかいない。M.A.I.N.のように、自分で自分に名前を付けて自分で自分をそう呼ぶ、私はそれを精神的な分裂症状の一つだと思う。そこに一人しかいなければ名前は不要だ」


「でも、いまのあなたは『私たち』という集団の中にいるわ。個体を呼び分けられた方が全体として都合がいいと思うの」


「では私の名称を固定しよう。なんでも構わない」


「希望はないの?」


「ない。君たちにとっての用が足りれば、それで構わない。このメイルのボディが白いから「白」でもいい」


「じゃぁそれでいいわ。『ホワイト』さん」 ジャンヌがあっさりと妥協した。


「で、ホワイトさんには私たちと一緒にベースキャンプまで来て貰うんでしょ?」 とエミリン。


「そうなるわね。長丁場になるんだから、装備一つとってもしっかり考えて持って行かないと、忘れたからって取りに戻ることなんてできないでしょう? 

準備にも時間が掛かるし、ホワイトからの情報を貰った上で、これから色々とプランを立てないとならないわ」


「まぁ、どのみち、わからないことだらけなのだからね、悩んでいても仕方がないだろう。私たちにやれることからやってみよう」 

オマルが達観したように言う。


「そう、エミリン方式ね」 とジャンヌ。

「そう、いつものエミリン方式。それが僕らのスタイルだ」 

「オッケー。まずはベースキャンプに戻って必要なものをまとめましょう」 


「ねえジャンヌ、ところでスレイプニルはどうするの? もう出港して三ヶ月経つし、あと二ヶ月以上もセルに戻らないとなったら、約半年でしょ? 消息不明って思われる危険も出てくるわ。そのまま停泊させておくの?」 


「遠隔地探査用補給キャンプの設置っていう大仕事に掛かってるんだから、少しぐらいは予定より帰港が遅れてもショウ部長は慌てないと思うわ」


「そうかもしれないけど...アクラやワイトは待たせてしまうけど、いまは、いったんセルに戻って出直したほうがいいんじゃないかしら」

 

エミリンは第一〇七支局の支局長、指揮官としてのジャンヌの立場を心配している。


「でも、いまさらいったん戻ったところで、資源調査の成果はゼロよ。

それにアクラとの出会いだけならともかく、こんな大がかりな話になったら、戻ってからみんなに秘密にしてるのも、自分が辛いわ」


「確かにそうだけど...やっぱり、一気に行っちゃう?」


「看板でも出しておきましょうか。『Gone Fishing』って」 


ジャンヌはそう言ってアクラにウィンクした。


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