補給路


(ムーンベイ・ビーチ)


「はい、そのままじっとして!」 


草地の上で、水着姿のエミリンはフギンとムニンのボディを洗っていた。

洗い落としやすいようにフギンとムニンに少しづつ姿勢を変えさせながら、久しぶりに降った雨中の森林作業でこびりついた泥を丹念に擦り落としていく。


もちろん、エイムのボディは完全防水だし関節部もパッキンされているから泥が付いていても機能には問題ない。


問題はないが、エミリンには二体が泥だらけのままなのは我慢がならなかった。

昔働いていたマッケイシティの農場で、雨の日に作業していた重機型マシンたちの泥だらけの姿が思い起こされる。


あの頃のエミリン自身は雨の日を好きだと思ったことはなかったが、雨の日の情景が好きだと言ったキリエとの会話が、偶然にもジャンヌとエミリンを引き合わせてくれたのだ。


これまでにフギンとムニンが、自分からジャンヌやエミリンに触れようと試みたことは一度もない。

あの大型獣の一件で示されたように、すでにベイムズたちは人間のボディの脆弱さをしっかりと理解していた。


バケツに汲んだ水をデッキブラシに浸し、エイムのボディの下側に入り込んで、脚部の関節にあたる部分にこびりついた泥を落としていく。

あらかたの泥を落とし終わってすすぎ水を二体に注ぎ掛けると、大きく伸びをしながら、ふうっーと深呼吸をした。


眺める先は初夏のムーンベイの明るい風景。


ここ数日で急に暑くなってきたので、ジャンヌは平気で水着になって砂浜で泳いでいるが、やっぱりエミリンには気が進まない。

プールやジャグジーで寛ぐのは楽しいけど、サメやら有毒生物やらがいるかもしれない海中では、とても寛げるものじゃないと思う。


水着の使い道は、こうやって水浴びがてらに草地の上でバケツを振り回しているくらいで十分だ。


そこにアクラが森から戻ってきた。一人だ。


「オマルは?」 

アクラの姿を見てエミリンが聞いた。


「ジャンヌにもらったポータブルディスプレイで読書中。森の中に小川が流れてる静かでいい雰囲気の場所があるんだって。

彼ってさ、峡谷で生き延びる作戦うんぬんって以前から、本当は水辺が好きだったんじゃないかなって思うよ」

 

エミリンはずっと考えていたことを口にした。


「やっぱり、リエゾンに声をかけてみるっていう素朴なプランしかないのかしら?」 


「そうだね、でも君が言うように、根っこを調べるにはいい枝だと思う。どうにも調べにくそうなのは難点だけどね」 


「それで返事がなかったら振り出しかぁ...」

 

「でもエミリン、リエゾンを辿る調査は手法の一つに過ぎないし、探せばまだ他にも手がかりは出てくるかもしれない。オマルのようなメイルだって、きっと他にもいると思うんだ」 


「ええ。もちろん、リエゾンの調査がダメでも、それで諦めるつもりはないわ。ジャンヌには悪いけど、彼女も、気が済むまでとことんやりなさいって言ってくれたし」 


「もちろん諦めないよ。ただ、僕もオマルもリエゾンは自我のないただのマシンだという気がしている。

エイムよりも、むしろスレイプニルに近い存在のイメージだよ。大きくて強くて自律的に動けるが、欲求や目的意識は何も持っていない。

そういう意味では、最初からリエゾンに返事をしてもらえると思ってないんだ」 


「それはわかるわ。でも、それこそスレイプニルと同じで、自我がなくても自動防衛装置はあって不思議じゃないと思うから、いきなり乱暴なことをするのは避けたいかな」 


「それについてはオマルとも何度も話してみたんだけど、僕もオマルも、エミリンと出会うまではリエゾンについて知ろうとか中身を見てみたいなんて、一度たりと思い浮かべたことさえもなかった。

たぶん、メイルにとってリエゾンは自分たちの生命線だし、一切のちょっかいを出さないように動機づけられていたのだと思う。

エミリンが言い出さなかったら、今回のリエゾン調査だって、僕たち自身では思いつかなかったかもしれない」 


「ごめんなさい...」 


「違うよエミリン、むしろ僕が『ありがとう』と言う側だ。で、メイルは陸の王者で、そのメイルにとってリエゾンは大切なもので、だからリエゾンにちょっかいを出す奴なんて地上に存在しない。

だとすれば武装を持たせる意味がないんだ。仮にあっても、自然の障害物を除去するとか、そういうことが主目的なんじゃないかと思う」 


「アクラも随分、森の木を伐採したものね!」 


「ああ、いまではもともとメイルは土木建設機械だったんじゃないかって思ってるよ。同じ流れで考えてみると、リエゾンも、もとは単純な大量輸送システムが発祥だったように思える。あえて武装を追加していなければ、本来は持っていないだろう」 


「でも...昔の人類は戦争を...大勢が戦い合う行為を行っていたわ。メイルやリエゾンがそのときの技術を元にしているのなら、武器として作られている可能性も無視できないと思う」 


「いやエミリン、それは構わないんだ。それならそうで仕方がない。ただ、相手がメイルやエイムだったら、こちらから先制攻撃するのはためらわれる。でも相手が自意識を持たないMAVだったら話は別だってこと」 


「結局...リエゾンを攻撃することになるの?」


「そうなるかもしれない。でもさっきも言ったように僕らはリエゾンに自意識があるとは思っていない。なぜと聞かれても明確な根拠は提示できないけど、あれはとても大きなMAVのような存在なんだ。

僕はなぜかそう感じている、としか言えないけどね」 


「つまり、フギンやムニンのようにはならないってことね」 


「そう。だから攻撃というよりも襲撃だな。僕らは昔話に出てくるような山賊になって物資を運んでくるリエゾンを襲撃するのさ」 


もしも集合センサーに蓋が付いていたらアクラは絶対にウインクしていたはずだと、エミリンはいつかのジャンヌと同じことを、知らずに思い浮かべていた。


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(高原地帯・アタックキャンプ)


MAVはいまでもスレイプニルや資材置き場とアタックキャンプの間を往復しているが、リエゾンの推定到着時期を間近に控えて、すでにかなりの資材を運び込んであった。


プレハブのシャワールームも建てて長丁場に備えているが、水の補給に難があるのだけが、このキャンプの欠点だ。

スレイプニルに積んである材料でホースを作り、近くの水場からポンプアップすることもできない相談では無かったが、このアタックキャンプをどれくらい長期的に利用することになるかは、まだ未知数だ。


いまのところは、森を出たところの渓谷でタンクに水を汲み、エイトレッグかMAVに乗せて運んでくるしかない。

マシンの手で自動化している作業とはいえ、水の供給ペースを考えるとジャグジーというわけにはいかなかった。


ジャンヌとエミリンがアタックキャンプの装飾と快適性向上、もとい基地能力の向上に腐心している間、アクラとオマルの相談で、幾つかのルートが絞られていた。もちろんジャンヌとエミリンはサボっていたわけではなく、ルートの決定には参加のしようがないだけだ。


そもそも、内陸部の地図なんて人類には存在しないのだし、この高原地帯の様相だって、アクラが実際に見たというかスキャンした範囲と、オマルが同様に過去に見た範囲からの推測にすぎない。

二人がそれをジャンヌ謹製のインタラクティブディスプレイを使って表現し、ルートを絞り込んでいく。


ジャンヌは水周り、つまりキッチンとバスルームの貧弱なアタックキャンプよりも、スレイプニルでの生活が好みだったが、エミリンの方は、朝起きてから夜中まで、広大な高原の風景に浸って過ごせるアタックキャンプに心奪われていた。


ジャンヌの手料理が食べれないのは難点だが、ドライフーズもパウチ食品も、思っていたほどひどくはない。

それよりもなによりも、一刻一刻と違う表情を見せる高原地帯の姿に目を奪われっぱなしだ。

エミリンは生まれてこの方、農場以外には広大な平地というのを見たことがなかったし、スレイプニルに乗ってからも、ここまで内陸に進出したことはなかった。


まず明け方、星の瞬く漆黒の空の片方が少しブルーを帯びてきて、その縁がわずかにピンクがかってくる。

やがてピンクからオレンジ、そして薄いブルーのグラデーションを背に太陽が昇ってくる。


太陽が昇ると、こんどは真っ暗だった大地の方が色づいてくる。


地面に影が生まれるとともに、岩肌のピンク色がどんどん鮮やかになっていく。

同時に岩自体も、ピンク、茶、黄土色、白、と複雑な縞模様やグラデーションを現し始め、気がつくとさっきまでの暗闇に、とてもこんなに多彩な起伏が隠れていたとは想像もつかない景観が現れる。

そして岩陰を中心に、わずかにへばりついている灌木や多肉植物のグリーンが、グラデーションから逸脱した彩りを平原に添える。


日が完全に昇ると、こんどは三百六十度の抜けるような青い空とレンガ色の大地のコントラストが視界を上下に二分し、自分がまるで世界の中心に立っているかのような錯覚に陥る。

船に乗って三百六十度の水平線に囲まれている時とはまったく違う。

自分の足がついているその場所から大地が広がり、そこに巨人のごとく自分の影が伸びているのだ。


午後を過ぎて日が陰り出すと、時計の針が朝とは逆に回り始める。

全ての方向が逆向きに、粛々と影が伸びはじめ、色彩が穏やかに落ち着いてゆく。

やがて、空が紺色に塗りつぶされる頃には巨岩たちも姿をくらまし、月のない日にはすべてが闇に飲み込まれていく。


ふとエミリンは、この風景をマッケイシティの農場脇のレストランにいるキリエに見せたいと思った。

彼女ならきっと、この風景を素晴らしい言葉で表現してくれたに違いない。


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「寒くはないかね?」 


夕闇に佇むエミリンの背中に、不意に声がかけられ、振り向くと少し向こうにオマルがいた。


初めてアクラの背に乗せてもらい、この高原地帯へオマルに会いにきたときに、アクラが作動音的な物をほとんど立てないことに驚いたのを思い出した。

アクラほどではないが、やはりオマルやベイムズたちも、ゆっくり動く時は極めて静かだ。


「ううん、大丈夫。でもありがとうオマル」 


「私たちは自分のボディの動作範囲内であれば周辺温度はさほど気にしないが、人間はそうもいかないと学んだのでね」 


そう言いながらオマルがゆっくり近づいてきた。


「確かにここは、昼と夜の温度差がとっても激しいわね。昼間はあんなに暑いのに、日が沈んだら夏でもジャケットがないと風邪ひきそう」 


「この昼夜の寒暖の差が奇妙な形の岩を作っているという説があった気がする。いつどこで知ったかは忘れてしまったが」 


「そうなのね。ありそうな気がするわ。一年中、こんな温度差に晒されていたら、岩だって変な風に割れてしまいそうだもの」 


キャンプゾーンの高原側では、アクラが立ったまま警戒している。

一応、ジャンヌのポールはここまで立てているが、アクラは、ことエミリンに関する限り心配性だ。

アクラの聴力というかセンサーならエミリンとオマルの会話も聞こえているのだろうが、いまは口を挟んでこない。


「エミリン、少し質問して良いだろうか?」 

「ええ、なあに?」 


「なぜ、そんなにメイルのことが知りたいのかね? いや、もちろんアクラの身を案じて、あるいはアクラと一緒の未来を考えてだと思うが、それにしても、君自身もメイルの生い立ちに強い興味を抱いているように思えるのだ」 


「そうかもしれない....私はね、オマル、人間の未来が知りたいの」 


「ふむ...なぜメイルの謎が人類の未来につながるのか、わからないな」 

「人類の未来っていうか、人間の未来だけど」


「そういえば、君は人類と人間という言葉を使い分けている感じがするな。基準があるのかね?」


「うーん、気分の問題なんだけど、いまのセル社会で育った私たちにとって『人類』って言うと、イコール女性種のことって感覚なの。だから、昔の...男性種も含めて考えるときは『人間』って言いたいかな」


「なるほどね。それで人間の未来、か。しかし、わしらの出自がどうであれ、現実の問題としてこれからの人類というのは、エミリンたち女性種の行く末ということだろう?」


「そうかもしれないけど...上手く説明できないかもしれないけど、メイルの起源に過去の人間が、男性種も含めて...関わっていることは間違いないと思う。

じゃぁ、なぜメイルを生み出したのか? 何がしたかったのか? いま何をしているのか? それを知れば、人間がこの先どうなっていくのがいいか、少し分かってくるような気がしているの」 


「誰かがメイルを生み出したのは、その誰かが自分たち自身の未来を考えた取り組みだと、そう思うわけだね?」 


「うーん、直接関係あるかどうかはわからないけど...きっとね、いまの人類のセル社会には、何か...よくわからないけど何か問題がある気がするの...ジャンヌはそれをわかっているみたいだけど...私は、メイルの後ろにあるものを知ることで、それが見えてくる気がしてる。そうして人間の未来を知りたいの」 


「それにはメイルの存在理由を知る必要があるというわけか」


「うん。本音を言うと、それを知るまでは人間は、女性種であっても男性種であっても、未来の計画なんて立てられないんじゃないかって思う」


「....エミリン、いまの君の言葉を聞いていると、まるで君がメイルを人間のバリエーションの一種だと思っているように聞こえる。

メイルは単に、人間...旧人類かもしれないが、人間が生み出した機械知性に過ぎないのではないかな? 少なくとも人間そのものではないだろう」 


「そのものかどうかは関係ないと思うわ、オマル。私は...アクラもオマルも、やっぱり人間だと思っているの。他意はないのよ。でも、話をしていると人間だとしか思えない」 


「旧人類の作り出した機械知性の能力が、いまの人類の持つマシンの思考能力より優れている、それだけの話かもしれないよ」 


「私はCOREがサインだと思う。それに宣言だと思う。メイルが人間であるという宣言。ある一人のメイルの由来が、どの人間の記憶やDNAかということを、個々に区別するためのサイン、そういうものだと思ってる。

オマル、あなたが『自分の名前』を欲しいと思ったことも、そこにつながる気がするの」 


「なるほど...実に興味深い話だ。...ありがとうエミリン、邪魔したね。風邪をひかないうちに中に入るといい」 


「ありがとうオマル。お休みなさい」 

「ああ、おやすみエミリン」 


風邪をひくというのは少し大袈裟な言い方のような気もしていたが、気遣ってくれたオマルに悪いと思い、エミリンは素直にプレハブハウスの中に入ることにする。

エミリンは、キャンプのプレハブユニットへ歩き出したが、二、三歩歩いたところでふと立ち止まり、くるりと振り返って大きな声で言った。


「おやすみなさいアクラ!」 


「おやすみエミリン。また明日」 アクラが静かに答えた。


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大きさの違う二体のメイルが並んで立っている姿は、月のない暗闇の中では、機械というよりは奇妙な石像のようにしか見えなかった。


オマルのポップなボディカラーも、いまは闇に溶け込んで見分けがつかない。


「アクラ、聞いていたと思うが、君は自分を人間の一種だと思うかね? ボディは別として」 


「なぜ、自分が人間の言葉や情報、メイルとして生まれて以降に経験したわけでもないことを、これほど知っているのか? それは謎だよ。

ただ、そういった知識や感覚を持っていることが、すなわち人間の証かと聞かれると、どうも怪しい気がするんだ」 


「私も同感だ。人間を基にして作られていることは確かだと思うがね。

私たちの持っている知識や感覚の多くが、メイルとして生きた経験から得たものでないことは確かだ。だが、ジャンヌやエミリンと会話が成り立つから人間だ、というわけでもあるまい」 


「そうだね。単純に考えれば、人間由来の情報をインプットされている理由がわからないというだけの話かもしれない」


「インプットか...そうだな。体験したことの記憶ではなく、インプットされた情報だ」


「僕もオマルも、生まれた時というか意識を自覚した時からメイルだったし、かつて人間だったという明確な記憶も持っていない。

だから、自分が人間であるかどうかにこだわりがないし、人間の脆弱なボディに対する憧れも持っていない。言い換えると、人間になりたいとは思っていないだろ?」 


「確かにそうだが、最近私は、自分の中に奇妙な感覚が生まれていることを察知している。それは...ある種のもどかしさのようなものだ」

 

「もどかしさ? 何に対して?」 


「人間と同じ行為ができないことに対して。ジャンヌのライブラリーでピアノという楽器を演奏している人間の映像を見た。衝撃を受けたよ。

一般的な作業なら、工夫すれば私のマニピュレーターでも、エミリンやジャンヌと同程度のことがこなせると思うが、あれは別だ。たぶんできないと思う」 


「それは追従速度の問題?」 


「違うのだ。同じ動きを真似することは、精密にコピーすれば可能だろう。ただ、自分の精神にはゼロからあの動きを生み出せる気がしない。それがもどかしい」 


「どんな種族であれ、なんでもできるわけじゃないさ」 


「もちろん私たちのボディには、人間にできないことができる。人間には、私たちにできないことができる。種が違い、体の構造も違うのだから当然のことだ。

ただ、それが最初からできなくて当然だと思うことではなく、できないのにできそうな、あるいは、かつてはできていたような感覚がかすかに浮かぶ。それがもどかしい」 


少し風が出てきたようだった。

アクラとオマルの周囲にあるわずかな草が、静かにそよめく。


「...オマル。やはり僕らは何かを失ってしまっていると思うんだね?」 


「ああ。平たく言えば、まあそういうことだろう。たとえば私が君と会う前、あの峡谷に潜んでいた時代に、偶然、ジャンヌのポータブルディスプレイとライブラリーを手に入れていたとしても、それだけでいまのように鮮明な思考ができるようになったとは考えにくいのだ」


「話し相手は必要さ。僕だって、エミリンと会う前は物事を大して深く考えていなかった気がする」 


「それはそうだ。だが私たちメイルには根本的に何かが足りない。

いや、何かが削られていると言う方が正しいのかもしれない」


「失われた僕のミッションと同じように、メイルはみんな何かを失ってしまっているのかもしれないね。だとすると、やはり、そこには近づいてみたいな」 


「そうだな。しかし...私は、正直に言うと、その結果がジャンヌやエミリンを失望させるものになってしまうことも危惧しているのだ。

知識や体験は不可逆だ...知りたいのだが、ということでもある」 


「わかっているよ。でもオマル、僕もエミリンを初めて見たあの時から何かが変わってしまった。とっくの昔に、二度と後戻りできなくなってるのさ」 


「私にとっては、君に破壊されずに話しかけられたあの時から、世界が回り始めた。私を峡谷の隙間から引っ張り出してくれた君に、そして君が動き始めるきっかけを作ってくれたジャンヌやエミリンのために、なにか私も役立ちたい。

それは自分自身の興味を充足させることと同じであって欲しい」


「リエゾンの調査結果がどうあれ、きっと僕の意志は変わらないさ。僕はエミリンを守り、自分を知る。その二つはきっと両立できる」 


「ああ。きっとできるだろう。私も君たち...友人たちの役に立って、自分の欲求も満足させられるだろう」 


並んで立っている二人は、会話の機能のためには体を動かす必要性はまったくなかったにもかかわらず、自分たちが会話しながらわずかに体を動かしていることを意識していなかった。


それは、動きを持たない石像ではなく、静かな巨人たちの身振りを交えた会話のようだった。


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[  第三部:ノー・マンズ・ランド 〜 挑戦 ] へ続く

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