登場人物紹介


 *ムテ人とは


 人間の言う『魔族』であり、長命種族である。

 銀髪・銀目を持ち、常にかすかな銀色の結界に包まれていることから『銀のムテ人』と呼ばれている。

 魔族すべてが滅びの危機に瀕しており、徐々にその力を失っていて、ムテも例外ではない。

 かつては、千年を超える長寿を誇ったが、今は三百年ほど、寿命には個体差があり、人間並みの寿命しか持たない者もいる。

 また、魔力は寿命を費やして発揮されるので、長寿の者ほど力が強いと言われている。

 成長にも個体差があり、見かけの年齢と実年齢は大いに異なる。

 が、寿命を迎えると、一年で百歳一気に年を取り、骨や灰にまでなってしまう。

 寿命がわずかと察すると、旅立ち、他には老いた姿をさらさない、死を見せないという。そういう者を、時に捧げられし者という意味で「メル・ロイ」と呼ぶ。


 自然を信仰しており、光を自らの力の媒体としている。

 心話しんわ、つまり、言葉になるほどのはっきりした思いを受け取る力があり、時にそれだけで会話を成り立たせることもある。

 が、同時に、敵意・憎悪などの負の思いを受け取ってしまい、精神を保てずに死に至る場合もある。彼らの結界は、物質的な攻撃を防ぐものではなく、精神的な防御のためである。

 心話の能力の強い者は、相手に『暗示』をかけて、勘違いをさせ、思いのままに操ることもできる。

 祈りは、結界を強めるために必要だが、近年、魔力の衰えとともに、祈りの力も弱まっている。



 *巫女姫とは


 神官の子供を産むために選ばれた女性。

 最高神官の巫女姫は、霊山に篭り、祈りなどの仕事の補佐をする役割を担う。

 子供が授かれば、『癒しの巫女』としての地位と特権が与えられる。

 子供が授からない場合、再度妊娠できる状態になるまで、祈り所に篭って、部外の者と接触することを禁じられる。

 途中で解任されるのは恥とされるが、稀に、優秀な者は『癒しの巫女』の地位を与えられることがある。



【エリザ】


 辺境の小さな村出身の巫女姫。

 最高神官サリサ・メルの血筋を残すために選ばれた少女だが、能力は平凡でまだ未熟であり、霊山での祈りも、子供を作るのにも、荷が重い。

 一途で何事も一生懸命なのはいいが、妄想癖があり、時々、とんでもない事件を起こす。



 *最高神官とは


 並外れた能力と寿命を持つ者は、霊山に篭り、寿命を温存しながら、ムテの人々のために、祈りの生活を送ることになる。

「ムテの宝玉」「ムテの珠玉」「神のごとき存在」などと呼ばれることもある。



【サリサ・メル】


 今の最高神官。

 見た目は完璧だが、百年以上も子供だったこともあり、実は未熟者。

 小心者で臆病だが、その実、したたかな部分も。

 巫女姫としての責務を到底果たせないだろうエリザを、好きだから……で選んでしまった。

 実は、甘党。



【マサ・メル】


 サリサの祖父にあたる前最高神官。すでに故人。

 合理的で厳しい巫女制度と霊山の仕組みを作り上げ、実践してきた。

 サリサの指標ともなる人。



 *仕え人とは


 すでにメル・ロイであり、霊山でしか命を保てない身であり、個を捨てて、最高神官のために全てを捧げている。

 仕え人たちは、名前を捨て去っているので、役職名を呼び合う。仕事が変わると、呼ばれ方も変わる。

 命が間延びされているせいか、皆、無表情で、感情の起伏が少ない。

 また、最高神官を煩わせず、寿命を保つためにも、霊山の気を安定させるためにも、それが望ましいとされている。



【フィニエル】


 巫女姫の仕え人。それ以前は、最高神官の仕え人だった。

 前最高神官マサ・メルの巫女姫として、また、仕え人として長く霊山にいることもあり、意思を持たないはずの仕え人の中にあって、発言力は強い。

 サリサとエリザの架け橋にもなるが、彼女の的確な忠告は、二人には常に無視される運命にある。



【最高神官の仕え人】


 最も霊山の仕え人らしい存在で、最初はエリザの「巫女姫の仕え人」だった。未熟なエリザに対しては、最高神官を消耗させるので、あまり好意を抱いていない。



【薬草の仕え人】


 エリザに薬草学を伝授。

 厳しい指導を行なったが、勉強熱心なエリザには好意を抱いているようだ。

 また、フィニエルとは仲が良いらしく、授業態度などを報告したりもしている。

 のちに捨て去った名前が「リールベール」と判明する。



【医師の者】


 医学的見地から、巫女姫の妊娠しやすい周期を予想し、逢瀬の夜を決定する立場である。

 最初の検診でエリザに卒倒されて以来、彼女の未熟さに呆れていたが、徐々に好意的になってゆく。

 物事をはっきりいうのが苦手で、癒しの仕え人とは立場上協力するが、正直、気が合わない。



【癒しの仕え人】


 やや神経質で性格のきついタイプのようだが、癒しの能力が高いエリザを熱心に指導した。おかげで、エリザは例を見ないほどの早さで、癒しの技を身につけた。

 魔の力を使った癒しが仕事なので、医学的見地に立つ医師の者とは、協力しあっているが、正直、気が合わない。



【唱和の者】


 巫女姫の祈りを唱和で補助する仕え人。三人いるが、そのうち、一人は祈りの力が人並み以下のエリザを敵視している。



【リュシュ】


 食事係の者。

 甘いお菓子づくりが得意なので、サリサのお気に入り。

 サリサが、捨て去った名前で呼んでいる数少ない仕え人の一人。




 *その他


【マリ】


 エリザが救った女の子。

 流行病で死にかけていた。

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