第3話 じゃあ、違う未来に進んでみる?

人気のない四阿。

アルベルトはサッとスカーフを引いてエリザベスを座らせると、自身は斜め向かいの柱にもたれ掛かった。


胸元のボタンを一つ二つと緩めて息をつく。


何故座らないのかとでも言いたげなエリザベスの眼差しに、彼は吐息を零すように笑った。


彼女はどこよりも雄弁に目で語る。


変化の乏しい、その白皙の美貌に目が行きがちだけれど。


アルベルトは彼女の瞳が何よりも好きだった。



「男が嫌いになったか、ベス」


唐突な彼の言葉に、エリザベスは瞬いた。


「………え?」


「君は結構潔癖だろう」


また、瞬いた。そうかしら。


「気付いてないのか?君はいつだって、正しくあろうとしている」


「………そう」


少し、エリザベスの瞳が翳った。

時折、彼女は陰鬱で物憂げな瞳をする。


「ベス?」


「……正しさって、本当は全然正しくないのよ。多分、ちょっと間違ってるくらいの方が、よっぽど正しく生きていけるわ」



アルベルトは剣呑な顔をした。

ポツリと呟く。気に入らない。


「誰がなんと言おうと、俺は君の己を律する姿勢を尊敬している。むしろ君は、もう少し言い訳をした方がいい」


「言い訳をしろ?何だがあなたが言いそうにない台詞ね」


「いいから。ちゃんと思っていること言え」








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彼女は手段を選ばない 八月文庫 @leefie_no

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