団体戦(前編)

 やたら黝が前線に出たがっていたのにはやはり訳があった。黝の能力を覗いてみると近接破壊が増えていた。近接破壊、本当に名前の通りだな。あ、称号に致命的な思考力不足が増えてるな。そんなに頭が良く無かったのだろうか。もう少しまともだと思ったんだけどな。

「蘇芳さん、絶対何か失礼なこと考えてますよね!?表情に哀れみが見え隠れしてますよ!?」

「別にそんなことはないぞ(棒読み)」

「わざとらしいですね!大方、私の称号でも見たんでしょう?」

なぜバレたし。やっぱり本人も気にしてたのか。まあ、それはそれで置いておいて、俺はいくつか申し立てたいことがある。まず第一に、何でそんなに戦闘向きの能力が増えたんだ?それと、それをやられると俺の立つ瀬が無いんですが。

「どうです?凄いでしょう?」

なんか褒めてほしそうにこちらを見ているので、適当に褒めておく。

「まあ、凄いのは認めよう。」

「何ですか、そのしょうがないみたいな態度は。もう少し純粋に褒めたらどうなんですか?」

「いや、キレられかけても困るんですが、それと僕の立場って物を考えて頂きたいんですが。」

そういうと、黝は不思議そうな顔をする。

「え?二人とも殴りにかかった方が勝率は上がりますよね?」

いや、索敵大事って昨日言ったばっかりだよね?

「索敵は?」

「無しで。やっぱり索敵に回ると攻撃できませんから。」

おい、しっかりしろ!ここで寝たら死ぬぞ!!じゃなくて、索敵を怠ったら死ぬぞ!

あ、もう恒例ネタ(一度目)となってきたけど死んでたわ。このお嬢さん、かなりの戦闘狂なんですかね。自分が殴る事が最優先の模様です。まあ、殴りながら索敵できれば二人で殴りにかかることも出来るだろうけどもさ。

「二人で殴りにかかっても良いが、攻撃中も索敵出来るか?」

「できますよ。」

即答かい。何でできるかは知らないがそれなら別に問題ないか。

「じゃあ良い。」

「遂に折れましたね!此度は私の完全勝利です!合体技の名前何にしようかな~?」

合体技のためかよ。


「よし、じゃあ次の戦闘は二人で殴りにかかりにいってみる。」

作戦としては、黝は殴れれば問題ないようなので、ギリギリまで存在力を奪ってから黝の近接破壊でとどめを刺してもらう寸法だ。いや、ちょっと待て、こいつ何気とどめを刺してるな。不殺生はどうした不殺生は。先ほどの霊には、お悔やみを申し上げるしかない。

「黝は近接破壊を存在力吸収後に使っても良いが、手加減すること。」

「存在力吸収中は駄目ですか?」

「まあ、それでも良いけどな。」

存在力吸収中に殴られて、敵が死ぬと完全に吸収できないまま存在力が失われるのが問題点だろう。まあ、殺す気はない。別に殺戮を楽しんでいるわけでもないからな。

しかし、一つ気になったことがあるのだが、近接破壊で攻撃して減った分の存在力はどうなるのだろう。先程は存在力が流れ込んでくる気配が無かった。もしや…消えているのか?そうだとしたら、近接破壊はそこまで多用するわけにはいかない。俺の目標は今のところ上になること(初出)だからな。

「では、次は集団で行動している奴らそ殲滅しに行きましょう!!」

おい、いきなり難易度上がったな。

「いや、そいつらは知性がある、というか自分の置かれている状況を理解している筈だから攻撃するのはよしたほうが良いんじゃないか?」

「大丈夫です。私の感がそう告げています。獲物はすぐそこだと。」

「完全に攻撃しに行く前提だろ、それ。」

「当たり前です。肉弾戦がメインのこの業界において、能力という名の裏技持ちの近接職が二人もこちらにはいるんですよ?」

業界とかあるのか…、初耳だな。それと、能力過信しすぎだろ。まあ、負けるとも思えないから別にいいが(同レベル)


 恒例となりつつある物陰からの敵の視察を開始する。すでにかなり接近しているので、両方索敵持ち(不正含む)の俺達であれば、この時点で存在くらい感知できるんだが…奴らには無理なようだ。

「ほら!やっぱり弱そうじゃないですか!」

「静かにしろ。こちらの居場所がバレたらどうする?能力の有無関係ないだろ。」

黝は不満そうな顔をしつつも黙る。頬が僅かに膨らんでいるところが可愛らしい…って何考えてるんだろう俺。そんなことはどうでも良いが、敵はまだコミュニュケーションが取れていない模様である。その証拠に、やたら互いの周囲を回ってそれがなんであるかを確かめようとしているような様子が見て取れる。

「では、周防さん、カウントダウンで行きますよ〜。3,2,1,GO!」


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存在をかけるのはもう少し後にしましょう Mt.韋駄天 @bismuth_wismut

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