不正

 朝だ。まぶしい日の光が窓から差し込んでくる...と、なんかまじめな小説風な感想を寝起きの景色に抱いてしまったが特に意味はない。目覚めたらまずするべきことは体を起こすことだ。俺は体を起こそうとして、そのまま再び倒れ込んだ。うん、まだ眠いからもう少し寝よう。お休み。


 

 やあ。今度こそ本当に朝だ、というか昼だ。こんなくだらない文章で約160文字ほど消費してしまったという事実に愕然とするしかない。時計をみれば、二度寝してから約2時間近くが経過していた。なんか横に自信満々そうな少女がいるが誰だろういったい誰だろう?うーん、あぁ、そういえば昨日集団行動をすることに決めた...えっと...ゆ...黝か。俺の人の顔と名前の覚えの悪さは生前と何ら変わりない。

「おはようございます。」

「お、おはようございます。」

改めて考えると、昨日出会ったばかりで名前を呼び捨てにしていた俺はどうかしていると思う。まあ、頼まれたから仕方がないんだけれども。寝起きであまり出会ってから時間が経過していない相手だったのでついつい丁寧語で話してしまった。

「?どうしたんですか蘇芳すおうさん?急に口調が堅くなりましたね?」

「い、いや、やはり朝の挨拶は大事だろ?」

「?まあ、そうですけど...?体調でも悪いんですか?」

なにやら黝に心配されるという事柄にまで発展してしまった。こういう時は、少し強引なような気もするが話を変えよう。

「いや、ところで、今日は何かしたいことがあるか?俺はスキルを身につけた...」

「今日も昨日と同じように戦いましょう!今日は私が前衛をやるので蘇芳さんは後ろでみててください。」

「あ、ああ。分かった。」

なんかやたらと戦闘を押してくるな...。何かあったんだろうか?まあ、自発的に戦闘をしたいというのなら別に良いんじゃなかろうか。


「蘇芳さん、周囲の敵は3カ所ほど反応があります。まず、例の団体行動を行っているグループ2つ、それに加えて、単独行動の攻撃的な奴ですね。」

「毎日毎日、よく飽きもせずにそういう輩が現れるな。」

「確率の問題ですから飽きるとかないと思いますよ。あと、まだ2日しか観察してないじゃないですか。希望を持ちましょうよ、希望を。」

「まあ、こっちにとっては単なるカモだから逆にありがたいけどな。」

とにかく、単独行動の奴は黝に叩かせても大丈夫だろう。危なくなったら参戦すれば良いし。あ、そういえば敵襲のこと考えてなかった。どうしますかね。こういう時は、存在力隷従の出番である。とりあえず黝さんの一部を吸収してみるとしましょう。

「ヒャッ!!」

なんか声でてますよ。

「す、蘇芳さん、今私から何か抜き取りませんでしたか?」

「イヤ、ベツニ」

「それ、絶対嘘ですよね1?ほらやっぱり!能力に索敵が増えてるじゃないですか!」

チッ、バレるの早いな。ばれたらしょうがない。今の俺のステータスはこんな感じだ。


名前:蘇芳

存在位:下位霊Lv.1(71/72)

能力:存在可能(固定)

   吸収(固定)

   移動(固定)

   思考(固定)

   外部接触(固定)

   記憶保持(不完全)         

   存在力隷従(任意)Lv.3(78/106)

   索敵(任意)Lv.1(72/72)

称号:自転車のベルに敗北した 能力無しにも容赦しない 操作を極めた男 名を得た者 奪われた者 奪ったもの


黝からきっちり1Lv分奪うことに成功した。あと、称号に奪ったものが増えた。昨日経験値を横領していた分だと思ってほしい。

「酷い...。私の索敵が...。」

「諦めろ。昨日の経験値分だ。」

その後、落ち込んだ黝の機嫌をとるのに30分ほど費やし、そろそろ遠ざかろうとしている敵に近づいていくことにした。


 敵はやはり一人だったが、昨日倒した敵に比べて若干威圧されるような感覚を覚える。これがレベルの高い奴と低い奴の差か。

「それでは、行ってきま~す」

「ちょ、気をつけろよ!(小声)」

そういうが早いか、黝は早速つっこんでいき、敵を殴った。恐らく今回の敵は俺たちよりもレベルが高い。つまり、それだけ強い。だから黝では一撃では倒せないだろ...って、倒すのはやいな。一撃だったぞ今の。いったい何をした。

「見ましたか?私の活躍。これで蘇芳さんの存在力隷従に頼る必要はありません!」

なんか、今の俺だと殴られたら一撃で死にそう。というかこんなに強いもの何だろうか。

「実を言うと、今のは近接破壊を使ったんですよ~。」

要するに不正だな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る