存在力操作
さて、(存在をかけた)茶番はオシマイだ。はい、死ぬかと思いました...。神が言わなかったのには理由が有るようだ。不名誉な称号を得た代わりに、能力に存在力操作が増えた。何に使えるのかは名前から察するしかない。そのままとるなら、存在力を...操作するんだろう。分解しても理解出来ないか。これは、相手から存在力を強奪できるかもしれない。チートを使っても痛い目を見る事は先ほど学習したばかりなので、実行しないが。
下らないことをしている内に日が暮れてきた。別に幽霊に朝とか夜とかは無いのだが、俺は夜中には出歩かないようにして自分の家に籠もっている。夜間に襲われると、幽霊といえど見えないのだ。そういえば夜に肝試しに来た若者たちを驚かせたり彼らに取り憑いて(恐らくそういう能力なんだろう。)いる幽霊の諸先輩方は良く見えるなぁなんて事を思っていると、目の前にフッと何かが現れた。
丸い球体が宙に浮かんでいる。そう言えば自分以外に体って見えないんだっけと呑気な事を考えていると丸い球体が襲いかかってくる。攻撃的な幽霊ってこういうのを言うのか。今まで見たことがなかったから分からなかったが、かなり唐突に現れるようだ。痛っ痛い痛い痛い。体に鋭い痛みのような物を感じる。生前に傷を負ったときより、よりダイレクトに痛みを感じる。と同時に何かが削られていく感覚もある。このままだと消えかねないので、こちらも殴りかかってみる。ガツッという手応えとともに、敵の存在力を削った感触がした。だが、どう考えてもこちらの方が不利だ。何しろボーッと殴られるが儘に数発殴られているのだから。ここは存在力操作に賭けるか逃げるかだ。耐えられてあと4発というのが直感的に分かる。これは賭けてから逃げても間に合うだろう。と、そこまで考えて俺は自転車のベルにしたのと同じような気持ちで再び殴りかかる。今度はガツッという手応えだけでなく、何かが雪崩れ込んで来るような感覚がある。相手は露骨にうろたえた(ように感じた。動きが今にも逃げ出したそうだからだ。俺は少し手加減して殴ってみた。球体は動きを止めた。
というか、気絶してた間こんな無防備だったのか。危なすぎる...。俺はそれ以上なぐるのを止め、これ以上殴られて消えてしまうのも夢見が悪いと思い、家まで連れて行くことにした。反抗されても今の俺(先程の攻防で得た存在力で密度が体感で1.2倍程に増えた。)なら瞬殺できるだろう。攻撃する意志がなければ触れても問題ないので、そのまま押すような形で家まで帰った。俺の部屋はまだ片づけられていないので、そこでいつも籠もっている。やはり夜は部屋に籠もって実験するに限る。
二階の壁をすり抜け(そいつを押したままだったが)、俺の部屋に入るとそいつを宙に浮かしておく。さて実験だ。今日の出来事から、能力が増えるのは分かった。神が言っていた事から察するに、能力は何かを極める(若しくは消える程の無茶をする)と増えるようだ。ならば、もっと便利な能力を増やせないだろうか。俺の知ってるゲームなら、スキルツリーというものがあって、根元に当たるスキルを入手すると関連したスキルをどんどん解放していけるシステムだった。しかし、本当にスキルが上達するのかすら分からない。まあ、時間は有限では無くなったので、今夜は存在力操作をひたすら鍛えてみる。
まず自分の体を千切る(案外痛くない)。千切った体の一部、今回なら腕を引っ張るように動かしてみる。すると、腕はふわふわと動き始めた。訓練すればもう少し機敏に動かせるんだろうか。そうこうしている内に、腕は霧散して戻ってきてしまった。概要、と心の中で唱えてみる。
名前:??? ????
存在位:下位霊Lv.1(36/72)
能力:存在可能(固定)
吸収(固定)
移動(固定)
思考(固定)
外部接触(固定)
記憶保持(不完全)
存在力操作(任意)Lv.1(49/72)
称号:自転車のベルに敗北した 能力無しにも容赦しない
何か増えている。こいつ、能力無かったのか。一つや二つは持ってて当たり前というのは嘘だったのだろうか。それと、Lvの上がり方がすごい。存在力操作に至っては、何もない状態から49も増えている。これは朝まで修行、もとい特訓したらLv.12位まで行くんじゃないだろうか。俺は期待に胸を踊らせつつ、再び腕を千切った。
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