神との遭遇


 と、ここまでが、一週間前の俺の出来事だ。名前が思い出せないようになっているらしく、生きていた頃の名前は思い出せない。まあ、仮に名前をつけるなら、色の名前をつけるのがそれらしくて手っ取り早いだろうが、今の所話しかけられる相手を発見したことがないし、必要性を感じないのでつけない。他の霊と言語(?)コミュニケーションを取ることに成功した暁には相手につけてもらおうと思っている。家族には、俺がいることを伝えることはできなかったので諦めた。しばらくは悲しみに暮れている家族を見ては自分も悲壮に暮れていたが、やがて5日ほどで悲しみも消えた。俺はここに存在するし、家族は気がついていないから悲しんでいるだけで、別に悲しむ理由もないだろうという考えが強まったからだ。


霊になって便利になった事といえば、物を通過することが出来るようになったため、移動がかなり楽になったことと、俗にいう三大欲求が消えたので、食事や睡眠を取る必要がなくなった。もちろん、覗きまがいの事も一切していない。断言しよう、。あと、神らしき存在とも出会った。どうやら、俺は下位の霊という扱いになるらしい。死後の世界なんて存在しないと思っていたので、こんなファンタジーのような事になっているとは思いもしなかった。そういえば、アメリカのホラー映画で悪魔とかが取り付いたときに悪霊退散するべくやってきた神父が

「この悪魔は位が高すぎて除霊ができない。他をあたってくれ」

のようなことを言っていたのでそんな感じで理解している。その神(自称)は正六面体の表面にそれぞれの面の中心からまっすぐに、或いは直角に折れ曲がりながら光る線が伸びているような姿だった。神秘的な後光が射していたような気がするが、実際こんなものなのかという落胆であまり神々しくは見えなかった。神を名乗るだけあって、俺の考えはわかっているようで、自分のこの姿はあくまでも仮の姿であり、お前(つまり俺)の位が低すぎて認識することができないため、この姿になっている。のような事を言っていた。まあ、こんな住宅街に突如出現する後光付きの正六面体というシチュには、かなりくるものがあったが、それはおいておこう。


話がそれたが、神(自称)が言うには、位というのはつまり、存在、敷いては魂の格(格なんてあったのかという疑問もあったが)そのもののことを指すらしい。その辺りで売っている(うちの最寄りの文具屋は徒歩十分のところにあるので微妙に遠い)鉛筆や消しゴムではどちらが存在が高いのかといえば、鉛筆と消しゴムだと基本的には消しゴムの方が球体に近いのでそちらの方が格が高いらしい。もちろん、生物と無生物ではその存在の格には絶対的な差がある。無生物のほうが存在の格が高い。(生物のほうが格が高いと思っていたので驚いた)更に、実体がある方が存在の格が強い。神は、その法則を超越した(つまり、実体がなかったとしてもそこらの物質より存在の格が高い)物に与えられるらしい。何が言いたいのかといえば、下位の霊である俺も、努力すれば神の称号を得ることが出来るらしい。そのためには、存在の格を上げなければならない。


どうすれば存在の格が上がるか、についてだが他の霊たちから回収して回る(存在の格というか、力が0になると消滅するらしい)か地道に空間中に存在している格の力を取り込む(こちらは長い歳月を要する)かの2つらしい。神の称号を得るほどに存在の格が上がれば、信仰を得る(認識される)事によって、力を得る、とか特定の事象についてつかさどるなどの格の上げ方があるが、下位霊には無理とのこと。ちなみに俺が遭遇した神(ryは「認識」を掌っているらしい。意外とすごい神だった。(まあ、聞いてみたら江ノ島観光に来ていたらしいが)他の霊から回収して回るとのことだが、そこらに下位霊がいるかと聞かれたら、生者と同じくらいの人工密度だといえば伝わるだろう。つまり、いるところには通勤ラッシュ時の都内の主要駅並みの人口密度でいるというわけだ。出会い頭に攻撃してくる者が十人に一人ほどいるので、そういう者を撃退するらしい。幸い、神に会うまでは一人も遭遇しなかったので危険な目に合わずに済んだ。


攻撃方法としては、備わっている能力を使って攻撃するという浪漫あふれる戦闘方法もあるらしいが、基本的には肉弾戦らしい。よもや、死んでから他人を殴る蹴るするとは思わなかった。俺は、神(笑)から教わった方法で能力を確認してみることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る