存在をかけるのはもう少し後にしましょう

Mt.韋駄天

一章 基本説明

死亡


 彼は中学二年生だった。将来の夢に憧れ、趣味に溺れ勉強はそこそこできる。そんな彼は、死を恐れていた。怖い、死ぬのが怖い。死を迎えるときは自分で認知することができないし、輪廻転生や神ですらも、人の想像に過ぎず、死を迎えれば、そこで終了だと思っていた。心霊現象特集などを見て、死後の世界に確信を持とうとした。比較的優等生だった彼は毎日同じように学校に通い、比較的真面目に授業を受け、家に帰ってゲームをする。復習や予習は滅多にしなかったし、する気もなかった。その分学校で真面目に授業を受ければ良いだけだ。彼の趣味は科学と化学だった


14歳の冬、12月23日にやっと終業式が終わった帰り道、何となく違和感を覚える。おかしい。妙な静寂が辺りを支配していた。ふと横を見ると、大型車両が彼に向かって突っ込んできている真っ最中だった。彼の意識はそこで…


ふと気づけば、病院のベッド…ではなく自室だった。

(今、明らかにトラックに突っ込まれたような…?)

彼はゆっくりと自分の部屋を見回した。何ら違和感はなかったが、敢えて言うならば身の回りのものが少し埃をかぶっている。確かにこの部屋は、埃が積もりやすいが、毎日使う目覚まし時計に積もることはない。部屋においてあるカレンダーには、12/23日まで印がつけてある。今朝つけたばかりの印だ。今何時かと思い、部屋のデジタル式の電波時計を見れば、15:27分である。しかし彼は、その日付が少しおかしいことに気がつく。電波時計には、12/27と出ている。それはつまり、彼の最後に確認していた日付とこの電波時計とでは、誤差が生じているということだ。彼は不思議に思い、二階の部屋から、一階の部屋に下りてみる。家の中はやけに静かで、耳鳴りがしてきそうなほどだった。家の中には誰もいなかった。専業主婦である母親すらも、だ。この辺りは住宅街のはずなのに、珍しく祝詞が聞こえてくる。そういえば、近くに神社があったなと思いつつ、物珍しいのでそちらに向かって出掛けてみることにした。もしかしたら知人の葬式かもしれないし、暇だったので、彼は靴を履いて外に出る。外に出てみれば、そこはいつもどおりの住宅街だった。家の近くには古びた商店街があったが、最近流行りのコンビニエンスストアは増えず、なかなか不便である。今度自宅周辺を散策してみるのもいいかもしれないななどと考えつつ、彼は駅(と言ってもかなり小さい)を通過して、反対側の神社まで来た。


何故か、そこには彼の母親や父親、親戚まで集まっている。悲嘆にくれる家族たちを前に、彼は立ち尽くした。一体、何があったというのだろう。そこで立ち止まっていた彼は唐突に事実を理解した。

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