50 深江エツ子の場合

生きてる人間が専門というのは、本業。

ただ、生きていない物をみるのは、趣味だった。

よくある東大vs京大とういうやつに、当時はまつりあげられた。

その相手は、男だった。

「それで、韓国人と推定されてた焼死体から、その何年か前の重要参考人だった堤下っていう男のDNAが検出されたってわけね。

それ、よくわかったね。その先生。」

「このレベルの案件だとなかなか手を焼きますよね。そうとう時間かかってるんじゃないですか?しんどそうっすね。」

「かなり、尽力していただいてるみたいだよ。エツ子さんも覚悟してね。」

「それで、ナツ子さん。そのお医者様とやらに会うために僕は今どちらに?住所だけ聞いて走らされてますが。」

「文京区の観察医務院。あ、そこ一通だからとばしてね。」

「という事は観察医だね。男?女?」


運転席にはエツ子の助手。助手席にはナツ子。後部座席にエツ子が乗車している。


「もうエツ子さん、そればっか。コンプレなおってないのね。」

「当たり前だろう。人間、男と女という性別は組織レベルで超えられ壁なのさ。」

「私の上司の元奥さんで、臨時の助手が息子さんなんだって。息子さんも医者って言ってたかな。」

「へぇ…父親がデカで母親が医者ねぇ…どっかで聞いたことある家族構成だ。よくあるもんだなぁ。」

「でも検案の後、監察医の元奥さんが行政解剖したってことは事件性なしって判断だったんじゃないんですか?」

「人手が足りないから、手伝ってもらってるんだって。」

「異常死体がわんさかでてきて手に負えないのと、関与する人間を信頼できる範囲にしぼりたいみたいで。」

「どうやら殺人事件かもしれないって話じゃおさまらなさそうだものな。出向くからには、その監察医の先生からお話聞けるといいね。解剖は10時間かかるからねえ。お疲れのところ悪いけど。」


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