48 心理士

死んだ患者は相手にしないから、この人が何を思っていたかは性格に分からない。けれど、その身体が何があったか、少し推測はできる。それは、ある特定の仕事じゃなくても想像力豊かな人なら誰でも可能だ。ただ、この痛ましいものを見なければならないが。


視線が右上を向いている場合は、本当の事を言おうとしいる。心理学セラピストのリチャードバンドラー、語源学者のジョンがリンダーは神経言語プログラミングという学説を提唱し、人は何を考えているかによって視線を向ける方向が違うというされた。視線解析というやつだ。つまり、死んだ人間相手には、視線がないから、意味がない。


「なぜ僕を呼んだのさ。生きてる人間専門だって、君知ってるだろう。」

「ええ、もちろん。事が大きくなったから、信頼できる仲間の人手が足りないの。これから恐らく生きてる人間も相手にしなくちゃならなくなるから。」

「つまり、僕が相手にするのは結構厄介な件ってわけだ。」

「どうかな、ええ、多分恐らくそうね。」

「それで、元気だったの?なっちゃん。」

「元気ですよ。あなたは?姉とはよく連絡するんでしたよね?」

「ああ、相変わらず。姉さんとも仲良くさせてもらってるよ。彼女が神戸に来る際は連絡くれるからね。」


彼女はじっと見つめてきた。

警戒されている可能性がおおいだ。

それはそうだ。久しぶりに会った従姉妹の風貌がまるで別人になってしまっているのだから。

この心理士は女として使えるケースとそうでないケースがある。

使い分けが必要だと気付いたのは仕事を始めて何年か経ってからだった。その時も、彼女の姉に親身になって相談にのってくれた。


「エツコさん、まるで男の人みたい。」

ほら、できた。

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