44 電話

「もしもし、お久しぶりですね。貴方から電話なんて。私の事なんてとうの昔に忘れたか、もう気にしてないのかと思ってた。

人伝の人づてにしか、元気なのか気にしてたとか、連絡来ないとか聞いてたけど、先生から直接連絡よこさなかったじゃない。

だから私、もう飽きられちゃったのか捨てられたんだと思ってましたよ。」

「ああ、まずは元気だったかと聞かせてくれ。だが、その様子だと絶好調みたいだな。」

「貴方からの電話まではね、今何時だと?」

「朝の3時だよ。昼間は君が電話に出ないだろう。」

「先生、貴方からの電話なら何時だって出るわ。それで、朝から叩き起こしたのは長電話するため?」

「久しぶりだってのに、やけに尖った言い方だなぁ。昔は先生、先生って後ろついてきて懐いてただろう。君は教え子の中でも群を抜いて可愛がってた。今もな。」

「一番可愛がってるのに一番疎遠になってるみたいだけど、先生。」

「かわいい子には旅をさせろ、というだろう。」

「長い旅ね。」

「積もる話はまただ。それより、君、私の名を名乗るのは何かの当てつけかい?」

「あら、誰に聞いたんですか?」

「分かってるだろう、妹くんが、橋本くんに連絡を寄越したそうじゃないか。何か手こずってるみたいだね。」

「情報がはやいのね。因みに私は、妹が橋本さんにアプローチしたなんて聞いてませんよ。姉なのに。」

「それはともかく、こっちまで降りてくるって事は何か掴んだな。何を追ってる。」

「ええ、勘も鈍ってないみたいですね。上を引きずり降ろそうと思ってて。少しずつ尻尾を掴みはじめたところです。」

「そうか、やっとその時が動きはじめたな。人手がいる。こちらも準備を始めよう。」

「ありがとうございます。」

「西は任せろ。動きがあったらすぐ連絡しよう。あと、念のためだ。1人連絡係を会わせたい。いいかね?」

「ええ、もちろん。」

「明日立たせる。だが、約束はしない。タイミングを見させて会わせるから、君はなにもするな。いいな。」

「ええ、恩にきるわ。先生。」

「君は、本当にいつまでも手がかかる。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る