42 勘

勘は冴える方だと自負している。

自分の親もそこそこ出来た人だったからだ。

「マキさんが関わってから、主軸があらぬ方向へ向かってる気がするんだ。俺の気のせいか?」

「君が疑うのも無理はない。君が言う軸とやらを掘るために私は表舞台に上がってきたんだからね。」

「マキさんが言う上がお姉ちゃんなら、なぜ私たち末端に調べさせるの?ハイリスクだし、そもそもこの班がグレーゾーンなのに。」

「だからだ。」

小笠原諸島という変地で少人数制、さらに部外者には一切関与させない独立した組織である。

「私が何かあると遠路はるばる来る理由、何となく勘付いてるでしょう。でも確信が持てない。そこへ彼、マキさんがご来島。

もう、後戻り出来ないところまで来たって事よ。」

「だから、その来たって、」

「グレーなのは我々だけではない、という事だ。私を配属させたのは大臣だけの意見ではない。加えてその話を進めると、大平くんの年齢詐称してまで委員会に介入している件も話せばならなくなる。」

「ちょっと待ってくれ、グレーってまさか…」

「追っているのは初めから刑事事件じゃなかった。政府関係者による反逆計画と、それに関わる国際テロ組織。どこまで世界犯罪組織と繋がってるかわからないけれど。」

「政府関係者がグレー…そんな事って…」

「戦時時代はよくある話だ。それが表に出るか出ないか。私を配属させた国務大臣と総理は信用してくれ。彼らは旧友だ。」

「総理…そんな所まで関わっているのか。」

「よく言うじゃない、何事も疑ってかかれ、って。」

「バカ言えよ。俺たちは公務員だ。国の為に生きてる。それを疑ってかかれって。」

「佐伯さん、その時が来たって事ですよね。だから、来たって。ねえ、そうでしょうお姉ちゃん。」

すがるような妹の目が涙目に見えた。

「そうねぇ。

ハルちゃん、小さい頃から手がかからないってお母さんよく言ってた。そんな訳でないのにね。反抗期逃してすれちゃって、散々だったって、言ってやろうよ。私はこの先に居るんじゃないかなって疑ってるからさ。」

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