32初めての経験
配属されてすぐ殺人事件に当たったのは、幸か不幸か。
遅かれ早かれ訪れる事に、心の準備はしていたものの動揺は隠せなかった。
ナツ子は食べかけのおにぎりを、ラップにくるんだ。
「帰ってきたらしばらく米は食えないから捨てちまいな。」
そう言ったのは、ダンだった。
詐欺も関与している事から組織犯罪対策部と合同捜査となった。
「嬢ちゃん、ソタイとはあんまり絡むなよ。今日は初ヤマなんだからなぁ、舐められちまう。俺から離れるなよ」
俺から離れるなと言う割に、ずんずんと歩いて行くではないか。
離れるなと、付いて来いは別でしょうと思いながらも、自分よりも背丈の高い波を掻き分けながら歩いていく。
新顔なのか時々、振り向かれてじろりと見られるが、もはやそれは慣れっこであった。
現場は悲惨な状況であった。
黄色い規制線から離れたところに、青いビニールに覆われたテントのようなところの中に、遺体はそのままの状態で素早く検診が行われていた。
「何処か別の場所で殺害した後、ここに破棄した、と言うのが見立てです。」
「死後、2時間てところでしょうな。」
体温計を持った鑑識課員が言った。
2時間…2時間前、何をしていたっけとふと思った。その頃この人は。
「感傷に浸ってる時間はないぞ。現場を完璧に頭に記憶させろ。傷ひとつ忘れるなよ。」
「はい。」
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