31兄弟の愛

埼玉県草加市のとある部屋


バルコニーもないような1Rの一人暮らし用の部屋。

窓から見る景色は決していいものではなかった。ただ、生活の最低限のことができる部屋。

「少しは家から物持っていけばよかったじゃないか。」

「無理だよ、見ての通り狭いだろ。寮は安いけど入りたくなかったから、これで充分だよ。実家も行けない距離じゃないしね。」


スグルは、今年の春から一人暮らしを始めた弟のススムの部屋に来ていた。

配属先が決まって、少し実家から遠い事から、部屋を借りたのだ。

その少ない荷開けの手伝いだ。

スグルは、ススムより先に実家を出ていたので弟に少し寂しい思いや、両親のことを任せてしまっていたとも感じていた。

けれど、当の本人は勉学も実技も多忙だったため、さほど気にしていなかった。

それは、共働きの両親も同じであった。

自分の事は、自分で。

小さい頃から言われていた事だ。

なかなか帰ってこない父親に、多忙な母親。

はじめは、何の仕事をしているか分からなかったが、歳をとるにつれ、うっすら、少しずつ分かるようになり、

今では兄弟揃って、両親を追うようなかたちで仕事につきはじめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る