28闇

警察庁と警視庁の間にあるとある地下の一室。


天井の低いその部屋にはスーパーコンピュータがずらりと並んでいる。

そのとある一角に、コードをひいてノートパソコンで操作している人影がある。


その人影に、気配を悟られないように近づく1つの影。


カチャ、と銃を構えた音で、

パソコンを、操作していた影は、驚く事もせずに静かに手を挙げた。

「早朝からお勤めご苦労様ね。」

暗闇の中から、すっと伸びた細い腕にパソコンの光が照らされる。

「時差ボケがまだ抜けてないんですよ。」

視線は画面に向けたままで、誰に銃を向けられているか確認していない。

「やるならもっとコソコソしなさい。」

「あなたと直接お会いしたかったんです。噂の天才ハッカーなら気付いてくれると思ってましたよ。」

そこでようやく、加賀美は顔を暗闇の方へ向けた。

「"誰"の事を洗ってるか知らないけど、少し目立ち過ぎよ。」

「あなたが"俺のボス"ではない事は、分かってます。けれど、謎が大きい上に多過ぎる。"刑事だった頃"、ある噂を耳にして、少し内密に調べ途端、突然、公安に飛ばされた。偶然じゃないところか、尻尾の毛が触れただけでこれとは…。」

「…目立ち過ぎなのよ。貴方は"優秀"だったから、遅かれ早かれ対応はとる算段だったのよ。」

まあでも、と続けて銃を下ろして一歩歩みよる。

パソコンの光で顔が現れた女性は、フユ子だった。

「あなたがわざわさ、天才ハッカーさんにラブレターを出してくれたおかげで、今回シロだってはっきりしたわ。あっちでの働きなんて、文句無しよ。」

「それならもう少し、信用してくれたっていいじゃないですか。」

「してるわ。でなければ、みすみすこんな地下に潜らせないわよ。二人きりで話したかった、そう読めたけど?」

パソコンを片手で静かに閉じて、フユ子は静かに言った。

「これからは、忠実になりなさい。」

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