27親子

司法解剖が始まると物々しい雰囲気につつまれる。

しかし、一般の人には全く気付かれないようにはじまる。

通常ならば、機動鑑識、刑事調査官、検察庁、所轄警察署などの車が5.6台到着するが、今日は違った。

「ご苦労様、スグル。悪いな。」

「やあ父さん。」

白衣にサンダルを履いたスグルが出迎えた。

一度検案し、解剖した死体をまた改めて行う事はとても希である。

署長からの書類を渡し、確認を終えたらすぐ取り掛かるとの事だ。

今回、関係者としてダンと鑑識官が数人だけだ。

キャップ、メガネ、マスクを着用し、入室した。

遺体の身元が不明のため、身長、体重、遺体の直腸内温度、室温などがボードに書き込まれていく。

「まさか"干物"を二回も開くとはなぁ。」

「僕も見たけど問題なかったよ。確認でいいね、少人数だし。」

「ああ、問題ない。」

二度目の司法解剖は、新たに判明した入国審査のデータと照合するかたちで行われた。結果に変化はなかったが、合致の点が増えたことは進歩だった。

「DNA鑑定の結果待ちだけど、あまり期待しない方がいい。きっとそのデータとこの人別人かも知れない。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る