21同族

「しかしボス・クルトなんて、よくパッと出たもんだな。」

「"ローチュス号事件"って知ってるわよね?国際法関連にモデルケースとして有名よ。1926年8月2日、公海上で起きたフランス船舶のローチュス号と、トルコ船舶のボス・クルト号の衝突事件。

あなた法学部出なんだからピンとくるでしょ。」

「こねぇーよ。俺はそう言っても体育会系だからな。大抵の人間は、外国籍の男性名で思い起こすと思うが、やっぱそこは外キャリとの差かねぇ。」

「同族に嫌味吐かないでよ。」

小笠原諸島のとある建物の屋上で、フユ子と佐伯は落ち合っていた。

「あいつ、海の向こうは専門外だって嘆いてたぜ。マキさん居なかったらやばかったな。」

「このヤマ、想像以上にバケるわね。」

「分かってて委員自ら首突っ込んでんだろ?おかしーぜ、お前にしろ、マキさんにしろ。気付いてない奴等多いが、デカすぎる。」

ファイルをピラピラめくりながら確認する。

「仏さんの国籍も、もしかしたら…」

「それはあっちが今洗い直してる。それでこの件はココに頼みに来たの。」

「ボス・クルト号ってトルコ船舶だろ?なんでローチュス号の名前を使わなかったんだ?」

「さあ、犯人も賢いんでしょう。コードネームかそう呼んで欲しいのか知らないけれど、自分の事、クルトなんて言わないでしょ。」

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