16in NY

通信傍受防止の部屋から班員は出て廊下を歩く。

そこにフユ子の姿はなかった。

「そういやお前の身内に医者、いなかったか。」

「いません。いるのは臨床心理士です。」

「医者じゃねぇのか。」

ナツ子は言った。

後ろを歩く若い2人が話を聞いていた。

「他人に期待はしたくないが、ダンさんの奥さんも手一杯なんだな。」

「毎日、何人バラしてもキリがないそうよ。」

土井は言う。

「そりゃ臨床士じゃ口を聞かない相手じゃお手上げだわな。」

パラパラと書類を目を通しながら言った。

「土井、お前、ニューヨークにドクターの親父がいるって言ってたな。」

「言ってません。」

目を合わせないように土井は言った。


その頃

ニューヨークのとあるレストラン

「フォアグラとオリーヴを加えた鴨のチェリーソースでございます。」

早朝の静かなレストランは、とても静かであった。

男が店内でたった一人、食事をしている。

「"スプリング"の味がニューヨークで食べられるなんてな。わざわざパリに行かなくてすむ。」

小鳥のさえずりが聞こえた。

「なんて素晴らしい朝た。」

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