12男2人

都内某所の廊下にて。

束になった名簿を手に2人の男が歩いている。

「木ノ下さん、さっそくリストから、消えてますね。代わりにそっくりな名前が。」

班員からはダンと呼ばれている男。隣を歩く杉本とはそう歳は変わらない。

「まあ、これが本来、デカイとされるヤマに当たった時のやり方だからなぁ。古株の俺らが外されたのも例外じゃあない。気張れよ。」

「小笠原組の手早さったりゃありゃしないですよ。」

「お前も充分早いよ。おかげで俺なんかと組む事になっちまってすまないな。」

「馬鹿言わないで下さいよ。」と持っていた書類で軽く叩いた。

「"困難と障害とは、いかなる社会にとっても、力と健康の価値ある源泉である"…。」

「アインシュタインか。お前、嫁先生の所行くのか。」

「元だって何度言ったら分かるんですか。検死解剖結果、聞きに行かなきゃ行かんでしょう。」

「先生、生で足運んでやらねぇと拗ねちまうからなぁ。」

「あんたも付き合い長いのに、何でそんなにツンケンしてるんですか?」

「助手の子は素直で可愛いんだがなぁ。」

ふーっと煙草の煙を吐いて一息つく。

「しかしまあ、胃の中に生き物の目ん玉を何百個も詰めてたんだろ?飴玉のため瓶じゃあるまいに。」

「狂殺人者の心情に同情は、専門外ですよ。だから"わざわざ"行くんですから。」

「気を付けろよ。あんまり寄ってると染められちまうぞ。」

「でもそれが仕事ですし、俺、結構好きなんすよ。

「どっちの話だ。」


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