10偉い人

都内某所。

国務大臣室に、フユ子と佐伯は呼ばれていた。

「委員の君達に言うのも何だ悪いんだが、増員を考えているんだ。」

委員は本来、個々の具体的な警察活動について直接の指揮監督を行うものではなく、"あくまで"、警察庁を管理し、また、警察庁に補佐をさせながら仕事を行うものである。

しかし、この2名に関しては特例であり、また本来の2人が表立って委員として活動する事は制限されている。

長官は机に両膝をつき、手を組んでいた。

「それは、"彼女"のですか?」

「ああ、今回の合同捜査で、君達2人も色々動く事になるだろう。専任を一人、付けようと思ってね。"彼女"もうちの預かり者だ。」

「何かあれば、こちらも困りますが…」

佐伯は続けた。

「増員は構いません、が、前の件のような事は大変困ります。本庁にもいるでしょう、サイバー対策本部。あれもいいんですが、信用できる人材で無い限り、俺一人で結構です。」

「それは私も、同意見です。もうエサに使わないで下さい。でなければ、こちらに引き抜きます。」

すかさずフユ子は言った。

「まあまあ、すまなかった。まあもう、耳に入っていると思うが…」

眼鏡を持ち上げ長官はためた。

「"マキ"、を考えている。」

フユ子はそれを聞いて、手に持っていた書類をパサっと頭にたたく。

「マキさんね、段々長官の考えみえてきましたよ。」

食わされたという態度だった。

「俺は反対ですかね。魂胆隠して下さいよ。」

おやおやと「けどウチじゃあ、"私の次"に信用出来るだろう。私の片方の腕なんだ。」

「あー歯、欠けそう。」

「まあそう言うな。」

2人の反応に悪い気はしない長官が小さく笑った。

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