3姉妹の夜

神奈川県横浜のとある会場。

普段、涙を見せない彼女が今日は他人の為に泣いたのだ。それはとても美しい事だ。

フユ子は思った。

隣に居る、ナツ子の涙を見た。


「終わっちゃったね。10年間・・・はやかったね。年は取るんだね、はは。」

首にかかったマフラータオルを取り、汗をぬぐい、メイクが崩れてないか確認している。

「明日は会議か・・・長い夢、浅き現実。数時間はマジックタイム。冷めるね、泣くなよ〜。」

「泣くわ、君はラスコンが初参戦なのに泣いてるじゃん。」

「他人事でも、人の人生の大きな分岐点あるいは節目に立ち会うってのはぐっとくるね。」

ぞろぞろと横浜アリーナから人が雪崩出てくる。

警備員やスタッフの声が響くとともに、今日で見納めのグループの名前を呼ぶ声も聞こえる。

「課長も今夜の来てたら、余韻に浸る為にとかいって明日の会議は休みだったろうに・・・。」

「それなら毎週ラスコンしてもらわないと。」

「毎週デビューか、それも悪くないね。」

なかなかすすまない道で、お互いがスマホのチェックをする。

ずっと機内モードにしていたためだ。

2人休めませんかって聞こうっと言い出したナツ子は文を打ち始めた。

「ちょっと2人して特捜会議休める訳ないじゃん。」

「どうせ課長にどやされるの私だし、いいじゃん。」

「いい訳あるか。出ろ。」

「あんたがな。」

「あんたもね。」

「・・・チケット私が取ったんだよ。姉ちゃんは出てよ。」

フユ子のほうのスマホにメッセージが受信した。

「・・・休むなってきた。」


The third younger sister

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る