第9話
手紙を開くと、中には僕では到底読むことのできない達筆な文字が書かれていた。仕方なく、和尚さんにお願いをし、読み上げてもらうことにしたのだ。
"24代目 宵継殿
貴方がこの文をお読みになっている頃には、私は仏様のもとでお仕えしている頃でしょう。貴方にはやらなければいけないことがございます。
一つ目に、貴方は貴方の代でこの呪いを終焉させなければなりません。
怨霊と化し、輪廻の輪に戻れなくなってしまった先代を貴方がお救いするのです。
二つ目に、その石をあるべき姿に戻し、あるべき場所へ返しなさい。それは本来この世にあってはならないものです。そして、その石は本来、そのような形はしていなかったはずです。本来の場所から奪い、己が為に使おうとしたことで、貴方の先祖は罰を受け、それは末代まで続く呪いとなっております。
しかしながら私もどこにあったものか、どこから手に入れたのかは存じ上げません。なので、自力で探しなさい。
三つ目に、貴方の母を探しなさい。
全てを終わらせる為に、己の過去を読み返しなさい。
仏様は貴方を輪廻の輪に導こうとしてくださっております。
貴方は己の為のみならず、一族の為に全てを懸けなさい。
二十四代目が全てを解かねば一族は永遠に闇を彷徨い、輪廻転生はできません。
最後に、翔殿は血が濃い者です。
もし、何も出来ずに終わるのならば、貴方は玷となり、怨霊として永遠に彷徨います。そうなれば誰も救うことはできません。
惨劇を防ぎなさい。
まだ、間に合います。
貴方の最愛の者も、本当の父も、本当の母も、貴方の家族はまだ現世におります。
探しなさい。
仏様のご加護があらんことをお祈りしております。”
和尚さんは僕が理解をしやすいように、少し噛み砕いて読んでくれた。
本当はもっと昔の言葉で書かれていたようだけど、僕には理解はできないし、ましてや今の手紙でさえ理解が追い付いていないのだ。
結局、球の正体は分からないままだし、死んだはずの母を探せと言われた。
文末には最愛の者も、本当の両親も生きていると書かれていた。
僕にとっての最愛は、千春だ。
もし、彼女が生きているなら今すぐにでも会いに行きたい。
本当の両親も気にはなる。けれど、それよりも真っ先に彼女に会いたい。
僕はぽろぽろと涙が流れる頬を擦り、全てを終わらせる決意を固めた。
そんな僕をただじっと見つめてくれていた和尚さんは、優しく微笑み
「貴方ならきっと大丈夫です。」
と言い、お寺のお守りを一つくれた。
きっと始まりがここならば、終わりもこのお寺になるだろうと
そんな感じがした僕は、お守りを返しに来る約束もした。
手紙によれば石を本来の場所へ戻す必要があると書かれていた。
何の石かは分からないままだけど、この石に触れた時、僕は確かに宵継玷の記憶を見た。それならば、彼が鬼、怨霊になる前から身に着けていた、あるいは祀っていたものなのだろう。
考えれば考えるほど訳が分からなくなる。
「あぁ、そうゆうことか」
僕は一瞬の閃きが妙にしっくりきたので、つい声に出していた。
そして立ちあがり、僕を見ていた和尚さんの方を向いた。
和尚さんは少し驚いた顔をした後で、にっこりとほほ笑むと、
「行き先がお決まりになったようですね。どうか、ご無事で。」
と言い掌を合わせ、ゆっくりとお辞儀をする。
僕もお礼を言いながら深々と頭を下げると、和尚さんは僕の手を握り
「またいらしてくれるのをお待ちしております。」
と言ってくれた。
そうして僕は、僕の閃きに従って、石を元に戻し本来の所へ戻すために欠かせない場所へ向かうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます