少女二人、裸婦デッサン

晴天。心地よい風が吹く中、アトリエで裸婦デッサンをする。


彼女は服を全て脱ぎ、手足を適度にだらんと伸ばして空中にたゆたっている。

彼女の小さな動きに合わせ長い黒髪もまた静かに揺れている。

しなやかな曲線をキャンバスにかきとっていく。


「今日はここまでね。ありがとうツミ」

「ふん。こんなこと“二人目“にでも頼めば良いじゃない」


彼女──ツミは一人目の私の作った少女であり、罪の概念である。

作品は全部で二点。二人目とは幸福の概念の少女、エアーのことだ。


「エアーに裸婦デッサンなんて頼んだら、貴女拗ねるでしょう?」

「……どうして二人目なんて作ったの。私だけで良かったじゃない」

少しの沈黙の後、裸体に簡単な布を羽織って彼女は不満そうに呟く。


「貴女が寂しいと思ったのよ」

「疎いのね」

彼女の細く長い指が私の制服のリボンをするりと抜き取ってしまう。

私はこんなに彼女を美しく作っただろうか、それは自惚れか。

そんなことを考えているうちに、肌と肌が触れ合っていく。


「貴女に求められない方が寂しいわ」

これは私の妄想か。惚れているのか、惚れられているのか。

微睡むように考えることをやめて彼女の温もりに溺れていく。それが例え儚い幻だとしても。

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