双子姫の邂逅
「これは貴女と同じトルマリンの石なの。貴女にもらってほしい」
コバルトブルーの雫型をした宝石はキラキラと輝いている。
「ありがとうございます。これはパライバトルマリンですね」
トルマリンの中でもかなり希少な石であることよりも、滅多に人を訪ねない彼女に内心驚いている。
「そうよ。話したくなったら立ち鏡にかざすといい」
話したくなったら──? 聞こうとした頃には彼女はもういなくなっていた。
「……気を、遣わせてしまったのでしょうか」
宝石が露出してしまった右眼を指でそっと触れる。
元々両目共普通の人間と同じ瞳だった。しかしつい最近宝石が歪に露出してしまったのだ。
きっとこのプレゼントの宝石は慰めの品なのだろう。このプレゼントはどういうわけかわからないが話し相手として使うべきなのだ。
「では早速使わないといけませんね」
立ち鏡の前に宝石と共に立って目を閉じ、話しかける。
「綺麗で希少な宝石さん。話し相手が欲しくなったらこうしなさいと言われました。わたくしの話し相手になってくださいますか?」
「ええ勿論ですわお姉様」
声に驚き目を開けると、無数の青く光る鏡のカケラと共に自分そっくりの少女が鏡の中からたゆたっている。
それは恐らくわたくしが鏡に映った姿そのもので──
「はじめましてお姉様。わたしは」
「あなたっ! 目は! 左眼は」
「えっ?」
彼女の左眼は長い前髪で隠れている。
挨拶もよそに髪を掻き分け人間の瞳が健在な事を確認する。
「良かった……」
彼女もわたくしの宝石の瞳を見て察したのだろう。
先ほどの無礼を謝罪する。
「ご心配ありがとうございますお姉様。その瞳は特に特殊ですから写されなかったようですわ」
「改めましてはじめましてお姉様。わたしはパライバトルマリンのリーシェ。中々人の姿をしたトルマリンに出会えず、姿が得られなかったのです」
宝石の生まれは様々で、リーシェは写し身の姿を取る宝石らしい。
それからお茶をして、同じままでも良かったけれど髪を結って服を見繕って──そうして今日まで楽しい時間を過ごしている。
話し相手が必要だったのはリーシェも同じだったのだ。
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