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 ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ。

「――――うわあああっ!」

 紡はベッドの上で、勢いよく起き上がると、体を子供のように丸めた。

 ――ちゃんと胴体は繋がっている。

 痛みも、傷も何も残っていない。

「は、はぁ……はぁ……」

 なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ、なんなんだ……。

 安堵を感じる間もなく怒涛のように感情が押し寄せてくる。それは、つい数分前までに感じていた恐怖と、それに対する激しい疑問。

 意味が解らない。

 どうして僕が殺される?

 有栖川は何者なんだ?

 あの力は何なんだ?

 紡は体を丸めたまま、唸った。泣いていた。そうすることしかできなかった。

「がっ、はっ……。なん、なんだ、よ……」

 嗚咽が漏れた。ぐちゃぐちゃになった意識が、記憶を容赦なく掘り起こしていく。

 それは、二度――いや、三度に渡る自身の死についても例外ではなかった。

 実体験に勝る恐怖は殆ど存在しえない。紡は何度もフラッシュバックのように思い出しては、嘔吐した。

一〇分か、二〇分か、若しくはそれ以上かの時間を掛けてようやく落ち着きを見せた理性の中、紡は呟く。

「じいちゃん……」

 ぎゅ、と。膝に抱えた本を握りしめる。

 鎮はこう言った。


『神船君、貴方はお祖父様から何かもらったりしたかしら。例えば、本とか』


『持っているのでしょう? あの、本を』


 それが何を指すのか、はっきりとした確証はない。

 しかし、薄々は勘付いている。

 ただ、自分が持つ特別な『本』はこれだけだ。

「じいちゃん……一体、何なんだよ……」

 鳴りやまない目覚まし時計をよそに、紡は祖父の事を考えていた。

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