5 『第77回 皐月賞』

「めぐさん、このレース名の『サラ系三歳未勝利」ってどういう意味?」

「サラ系はサラブレッド系、の略だねー、昔はアラブ系とかもあったらしいんだけど、今はサラ系しかないから無視していいよ。三歳はそのまま三歳の馬の、まだレースに勝ったことのない馬だけでやるレースってことね」

「なるほどー。……あとこれ馬名の上に数字が2コ書いてあるんだけど、どっち見たらいいの?」

「上のが枠番、下のが馬番ね。枠番はあまり使わないからとりあえず馬番だけ見てれば大丈夫だよ」

「ふむふむ」


 大変とっつきにくい見た目のめぐさんであったが、話してみるとあんがい話しやすく、競馬の説明も分かりやすかった。とっつきにくい見た目の友人が他にいないわけでもないので、わたしはすぐに違和感なく話せるようになっていた。まあ、赤色のサイドテールがちらちらと揺れて非常に目には悪いのだが。


「この、レース名の下に(混合)って書いてあるのは?」

「男女、というか牡牝混合ってことね。競馬は人間ほど牡牝の差がないから、いっしょに走るレースも多いんだよー。もちろん、女の子だけのレースもあるけどね」


 ちなみに、めぐさんに質問しながら見ているのは競馬新聞ではなく、ややおも高校競馬新聞部が出している『おうまさん週報』なる小冊子である。1レース毎に1ページを割いて、馬名とそれぞれの馬の過去レースの結果などがこと細かに書いてある。


 ちょっと古めの魔法少女ものアニメみたいな表紙がついていて、持ち歩くにはちょっと抵抗があるシロモノなのだが、これもあらぬ誤解を受けて補導されないためのいち防衛策なのだそうだ。というのも、競馬新聞を持ち歩いていると「レースを見るだけではなく、馬券を買おうとしている」と判断され易いらしい。しかし馬券勝負にはやはり情報が必要なので、あえて競馬新聞とは似ても似つかない見た目に仕上げてあるのだそうだ。


 とはいえややおも校生については常連でもあり、競馬場の職員もだいたい分かっているらしいのだが、まあ李下に冠を正さずというし、疑わしいことをしないに越したことはない。


 そんなわけで『おうまさん週報』を片手にめぐさんにいろいろ教えてもらっていると、ふと所在なさげに立ったり座ったりしている田之倉くんが目に入った。何をしているのだろう、と思って見ていると、どうも横目でめぐさんの方をちらちらと見ているようだ。ははあ。


「たーのーくーらーくん?」

「な、何だよ。……っていうか君付けやめろ」

「遠慮しないで田之倉くんも混ざっていいのよ?」


 わたしは後半の言葉を無視して、にっこりと慈母の微笑みを浮かべた。これが予想外に効果てきめんで、田之倉くんは顔を赤くして口ごもる。


「……っ、いや、別に俺は」

「? どーしたの、田之倉くん」

「な、なんでもありませんっ!」


 めぐさんに話しかけられ、なぜか直立不動になる田之倉くん。学年は彼の方が上のはずなのだが、めぐさんに君付けされるのは良いのだろうか(もちろん、わたしが言うことではないが)。


「田之倉くん」


 と、冷たい目で話しかけたのはわたしだ。


「……ファンなの?」

「……」


 ふいっと目を逸らされる。……ファンなんだ。ていうかめぐさん、ややおも高校のアイドルという肩書きは割とマジらしい。まあ可愛いことは可愛いもんな、巨乳だし。


「ファンなら遠慮しなくていいのに」

「うっさい、お前には関係ないだろ! ……俺はもうパドック行くぞ!」


 素直じゃない田之倉くんは、そう言い捨てると背中を向けてどこかへ行こうとする。


「……ぱどっく?」

「ホントだー、もうそんな時間ね! サトミちゃん、あたしたちもパドック行こ!」


 めぐさんはわたしの手をとって立ち上がった。急に手を握られてちょっとドキっとしたが、全ての指につけた指輪(めぐさんは「ぱーふぇくとふぃんがー!」と呼んでいた)がちょっとごつごつして痛い。


「パドックって何のことです?」

「おうまさんが見れるとこだよー」

「おお」


 そういえばせっかく競馬場に来たのにまだおうまさんを見ていなかったな、と思いつつ、わたしは少しわくわくしながら、めぐさんに手を引かれるがままに付いていった。



「うまだー!」


 馬場とはスタンドを挟んで反対側、中庭のような場所にパドックはあった。小さなグラウンド状の場所を、おうまさん達が轡を引かれてぐるぐると行儀よく歩いている。


 わたしはまばらな人だかりの中をすり抜けて、ちょうど空いた最前列に取り付いた。正確に言うと、わたしが懸命に背伸びをしておうまさんを見ようとしているのに気づいて、赤ペンを耳に差したおじさんが場所を空けてくれたのだ。ありがとう赤ペンおじさん。


「これがパドックだよー」


 めぐさんはわたしの反応に満足した様子で、いつの間にか隣に来ていた。少し距離をとって田之倉くんもいる。


「すごいねー、うまだねー」

「ねー」

「……競馬場なんだから、そりゃ馬はいるだろ」


 めぐさんが一緒にいるからか、田之倉くんのツッコミにはいつもの勢いがない。まあ、この人混みで大声で突っ込まれたら迷惑この上ないが。


「うまがいるのは分かってたけど、こんな近くで見れると思ってなかったんだもん。すごーい、くさーい」


 我ながら頭の悪いコメントをしている自覚はあるが仕方ない。馬はその巨体に漲らせた筋肉を、一歩ごとにぶるんぶるんと揺らしながら歩いている。


 初心者丸出しのテンションで馬を見ているわたしに比して、周囲の人たちは冷ややかだったが、馬のほうでもテンションは様々だ。大人しい、というか頭を垂らしてなんだかしょんぼりと歩いている馬もいれば、盛んにヘッドバンキングしているのを二人がかりで引かれている馬もいる。


「めぐさん、なんでこのうま達は同じとこグルグル回ってるの?」

「次のレースで走る馬の、ようはお披露目会ね。ここで体つきとか調子とかを見て、予想するんだよ」

「へえー……、見ただけで調子とか分かるんだー」

「まあ、簡単なことじゃないけどな。パドックで状態の良し悪しが分かるようになれば、一人前の馬券師といったところだ!」


 田之倉くんが自慢げに胸を反らしたが「田之倉くんは分かるの?」と聞くと「俺にだって、わからないことくらい、ある……」と眼を逸らされた。それっぽいことを言いたかっただけらしい。


 しかし良し悪しは分からないものの、こうして間近に見るうまの迫力はかなりのものだった。ぽたり、と落ちる汗の様子まで見える。


「あ、ウンコした」


 ぼとり、と汗以外のものを落とす馬もいた。うんこなので当然クサいが、なぜか不快な臭さではない。なんというか、牧場の匂いという感じで、都会っ子的には和む感すらある。


「女子がさらっとウンコとか言うな」

「……うんち? をしちゃうのはどうなの? 良いの、悪いの?」

「あんまり変わってない気がするが、まあいい。便を漏らすのは基本的にはあまり良くないとされている。緊張しているとかそういう理由だな。だが一方で、出すもん出してスッキリするから逆に良い、という意見もある」


 ようするによく分からないらしい。田之倉くんはアテにならないことが(だいたい知ってたが)判明したので、ではめぐさんの方はというと、どこからともなくガチな一眼レフカメラを取り出して一心不乱に馬の肢体をシャッターにおさめていた。意外にもそういう系の趣味の人らしい。


 めぐさんの方も邪魔をしては悪そうなので、わたしはわたしでじっくりと馬を見ることにする。よく考えたらここには勝負に来ているわけで、まあ真面目にやる気はあんまりないとはいえ、とにもかくにもどれか一頭を選ばないといけないのだ。


 じっと見てみると、うまというのもなかなか不思議な生き物だ。脚の先はその巨体に比べて細く、後足を交互に踏み出すさまはのしのしという重量感と同時に、よちよちといった危なっかしい感じも同時に感じさせる。


 そうしてぼやっと見ていたわたしだったが、やがて一頭の馬に眼がとまった。その馬は、まあかわいらしいことにタテガミを綺麗に切りそろえてもらって、それがさらさらと爽やかに揺れている。頭にかぶってる覆面みたいなの(メンコというらしい)も眼がまんまるに見えて愛嬌があるし、ちょっと他の馬よりも背が高いように感じられるそのうまは、見事な美人さんであった。


「ねえねえ……めぐさん」


 わたしはシャッターを切るのにひと区切りついた様子のめぐさんの袖をひっぱった。


「あれはやっぱり女の子なの?」

「そだよー……というかこれ牝馬限定戦だから、全部女の子なんだけどね」

「そーだったのか……なんていう子?」

「えっと……カンバンムスメだって」

「看板娘!?」


 手元の『おうまさん週報』をめくり、ゼッケンに書かれていた番号と照らし合わせてみるとなるほど、『カンバンムスメ』と書いてあった。嘘のようだが実際の馬名である。


 うむ、馬名にはちょっと面食らったが、よく考えてみればあの美人さんにはぴったりの名前ではないか。わたしは確信を持ってうなずいた。


「よし、決めた! わたしは看板娘を指名するよ!」


 なにやらいかがわしく感じられるセリフだが、ここは競馬場であり、もちろん馬券勝負の話である。


「えっと、式別はどうするのかな?」


 立会人であるめぐさんは、きちんとわたしの指名をメモしながら聞いている。式別というのは来る途中に副部長から聞いた、ようするに買い方のことだったな。


「えっと……確か単勝っていうんだっけ。カンバンムスメの単勝に1000円!」

「円言うな!」

「円言っちゃダメ!」


 田之倉くんのみならず、めぐさんからも切羽詰まったツッコミを頂戴し、わたしは不用意なことを言った口を押さえた。もちろん後ろ暗いことなど何もないが、いかにややおも校生たちがそこらへんに気を遣っているかが感じられる。わたしも気をつけねば。


「ご、ごめん……、1000ポイントね」

「よろしい! んじゃ、サトミちゃんは十六番の単勝に1000ポイント、っと……」

「ふん、単勝でいいのか? カンバンムスメは七番人気だぞ?」

「看板娘なのに人気がないとはこれいかに……」

「くだらないこと言ってんな。ほら、あそこ見えるだろ」


 と田之倉くんが指差した電光掲示板には、さまざまな数字がぎっしりと並んでいる。あれが現時点でのオッズらしい。


 見方を教わりながらわたしのカンバンムスメのオッズを探してみると、なるほど単勝で24.6倍とある。つまり勝てば24600ポイントも貰えるのだ! ……と喜ぶばかりのことではないらしく、高いオッズがつけられるということは、それだけ勝つと思っている人が少ないということであるらしい。ちなみに一番人気の馬は3.1倍となっている。単純な話、カンバンムスメの八倍ぐらい期待されている、ということだ。


「でも実際のレースがどうなるかなんてわかんないわけでしょ?」

「そのとーり! サトミちゃんは勝負師だねー」


 パドックを巡回していたうまにはいつの間にか騎手がまたがっており、一頭ずつ地下道へと消えていく。あそこから馬場の方に抜けていって、いよいよレースが始まるのだ。


 田之倉くんも指名が決まったようで、めぐさんがメモを書き取っている。どうやら一番人気の馬を中心に、馬連という式別を何点か指名したらしい。よく分からないがめぐさんが「カタいね~」とコメントしていたのから察するに、キャラ通りの無難な買い目であったようだ。


「確かにレースは終わってみるまで誰にも分からない。だがなサトミ」


 そう言って田之倉くんはまったくサマになってない格好でびしりとわたしを指差した。そうとう自信があるらしい。


「見た目で選んだ馬で勝てるほど、競馬は甘くないってことを教えてやる!」




 結果から言うと、カンバンムスメの圧勝でした。


「『競馬は甘くないってことを教えてやる!』」

「やめろぉーーーー!!! 掘り返すのはヤメロォーーーーー!!」


 田之倉くんは十分前の自分のセリフに大ダメージを受けていた。ふふん、ビギナーズラックを甘く見るからこういう目にあうのだ。


 レースはずっと二番手で走っていたカンバンムスメが、残り200メートルぐらいで先頭の馬をかわしてトップに、そのままじりじりと差を広げて最後は余裕をもってゴールした。田之倉くんの指名した馬も最後二着まで来ていたらしいのだが、カンバンムスメを指名してなくて馬連も外したそうだ。


 これでわたしのポイントは合計で33600ポイント。何とたった一レースで初期値の三倍以上である。何だ、競馬なんてチョロいもんじゃないの。


「すごいねーサトミちゃん! さっすがななこに選ばれた女、才能あるのねー!」

「えへへー」


 少し前までなら、「そんな才能いらねーよ」と思っていたであろうわたしだが、実際に自分で選んだ馬がものすごい勢いでどこんどこん走って勝った後に聞いてみると、まんざらでもないのだから我ながら現金なものである。


「良かったなサトミくん。これであとは寝てても勝ち確だぞ」

「勝ち確じゃねーよ! まだあと11レースも残ってんだろうが!」


 スタンド席でのんびりしていたらしい副部長に、田之倉くんが口角泡を飛ばしている。まあでも実際、このリードはかなり安全圏なのではなかろうか。


 わたしは馬場の上に広がる青い空を眺めながら、なんだ、競馬ってあんがい楽しいかも、なんて思いはじめていた。


「いいか、勝負はまだまだこれからだからな!」

「そうだね、競馬は甘くないってことを教えてもらわなきゃならないもんね!」

「ヤメロォーーー!」


 しばらくはこれで黙らせられそうだな、と思いつつ。またわたしたちはぞろぞろとパドックに移動する。田之倉くんが言った通り、まだまだレースはたくさん残っている。レースはだいたい三十分間隔で行われ、スタンドからパドックまではそこそこ歩くので、けっこう忙しい。


「んじゃ、次は九番のキョウワヒラリーかな」


 第二レースは牡牝混合競争だったので、わたしはパドックを見ながら、数少ない牝馬の中から一頭を選んだ。


「ほいな、また単勝でいーの?」

「そうだね、じゃあめぐさん、単勝を2000ポイントでよろしく」

「おりょ、そんなに使うの?」


 めぐさんはメモる手を止めてきょとんとする。馬券勝負のルール上、勝っている側は下限の1000ポイントだけ賭けるのが普通だろうから、当然の疑問だ。


 しかしわたしは、田之倉くんの方を見ながらこそっと言った。


「いや、さすがに守りに入るのは悪いかと思って……」

「ああ……」

「おい、聞こえてんだよ!」


 ぷりぷりと怒りながらも田之倉くんも指名馬を告げる。よくわからないが、また一番人気からの指名であるらしい。


「今度こそはカタい決着になるはずだ。そう何度もさっきのように荒れてたまるものか!」


 田之倉くんはよせばいいのに、そんなフラグにしか思えないセリフを吐いていた。



 ……が、意外なことに第二レースは田之倉くんの馬単が見事的中した。馬単というのは一着二着に入る馬を順番も込みで当てるという式別で(例えば①→②の馬単なら、一着に②番、二着に①番ではハズレ扱いになる)、単勝よりも難易度が高いためオッズも高くなりやすい。勝った馬は単勝1.7倍のガチガチの一番人気だったが、馬単だと6.4倍と、そこそこの倍率がついていた。


 わたしの指名したキョウワヒラリーは五着。やはり一度指名するとレース中も指名した馬ばっかり見ていることになるわけで、それが早々にトップ争いから脱落してしまうと、見ていても面白くない。


 むーん、と口を尖らせていると、メグさんが肘でつついてくる。


「サトミちゃん、もっと声出して応援しないとー」

「ええ~? あれですよね、『差せー!』とかって言うやつ……」

「そうそう!」


 レースで馬群が最後の直線に入ってくると、スタンドはにわかに盛り上がる。もちろんややおも校生たちも例外ではなく、「差せーっ!」だの「そのままーっ!」だのと叫んでいた。


「指名した馬が後ろにいたら『差せ』、先頭にいたら『そのまま』って叫ぶんだよー。これ、競馬場のマナーだから!」

「うるさいマナーもあったもんですね……」


 さすがに花も恥じらう女子高生として、そんな真似は遠慮したい。


 めぐさんと話していると、ものすごく得意げな田之倉くんが近づいてきた。さっきのレースでは一番大声で叫んでいた男である。


「ふふん、どうだサトミ。これで少しは追いついたぞ」

「うんまあ、少し、ね」


 現在のポイントはわたしが31600点、田之倉くんがさっきの分を加算して13400点。確かに差は詰まっているのだが、体感的にはそれほど変わってない気がする。


「しかし、田之倉くんがプラスになっているとは珍しいな。明日は雪が降るのではないか?」


 と茶々を入れたのは変わらずくつろいでいた副部長である。


「珍しくねーよ! 俺だってたまには勝つことだってある!」


 珍しいんじゃないか。


「見てろよお前ら、今日の俺はひと味違うってところを見せてやる……!」


 と、田之倉くんは拳を握りしめながら、いかにも弱キャラっぽいセリフを吐くのだった。



 ところが実際、今日の田之倉くんはひと味違ったらしいのである。


 続く三レースは外したものの、四レースでは馬連を的中。さらには七、八、九レースをなんと三レース連続で的中させたのだ。これには若干田之倉くんを馬鹿にしていた感のあるギャラリーも、彼を見直す流れになった。競馬が下手だとヒエラルキーの下に置かれるのがややおも高校クオリティだが、競馬の結果次第ではそれが簡単にひっくり返るのもまたややおも高校クオリティなのである(たぶん)。


 まあどれもオッズが低い組み合わせばかりで大して増えてはいないのだが、それでも堅いレースを堅実に当ててくる、シブい立ち回りが光るのが今日の田之倉くんなのであった。


 さて、残すところはあと三レース。コツコツと当ててきた田之倉くんのポイントは現在20600点。それに大してわたしのポイントがどうなっているかというと……。


 ……17600点。なんと、第一レース以来一度の的中もなく、めちゃくちゃ渋い顔をさせられるハメになっていたのである。あれだけのリードを奪っておきながら、逆転を許してしまったのだ。


「ん~、どうしたサトミ、勝ち確じゃなかったのか~」

「むぐぅ」


 超絶ムカつく顔の田之倉くんに煽られても、わたしは何も言うことができない。まあ勝ち確ゆってたのわたしじゃないし、とはちょっと思ったのだが、勝ち誇っていたのは事実だ。過去の自分からのブーメランに苦しまされるのは、今度はわたしの番だった。


「……まだまだ勝負はこれからでしょ!」


 午前中に田之倉くんが言っていたセリフをそのまま返しつつ、わたしはめぐさんを引きずってパドックへ向かうのだった。




「めぐさん」


 第十レースのパドックは、メインレースが近づいてきたとあって人混みはいっそう膨らみ、今までのように近くから見ることは難しくなっていた。わたしは見やすいようにと移動した二階のテラスで、めぐさんに宣言した。


「わたし思ったんだけど。やっぱりカワイイ名前のうまを指名するだけじゃ勝てない気がするわ」

「……だいぶ時間かかったね、気づくまでに」


 めぐさんは呆れたように言う。


「だってさー、せいぜい十数頭しか走ってないんだから、テキトーに指名しても一回ぐらい当たると思わない?」

「一回ぐらい当たったよね? 一番最初に」


 ……そうだった!


「ってことは、わたしはもう当たりを使い果たしたってこと!?」

「いや、そうは言ってないけど……」


 たじろぐめぐさん。この人、格好は奇抜だしキャラも作ってるけど、中身はけっこう普通の人なような気がする。


「とにかく! ここからが本気だからね!」

「はあ……」


 わたしはぎろり、とパドックを睨みつける。


 もとは興味のなかった勝負である。ぶっちゃけ今でもそんなに興味ないし、こんな馬券勝負なんてものに必死になるややおも校生は頭がおかしいと、今でも思っている。


 だけど。


『馬券勝負で賭けているものは、紛れもなく命そのものなんだ』


 頭の中でふと、水月先輩の言葉が響く。……そうだ、たとえ興味のない戦いだって、負けるのは気に入らない。ここでヘラヘラ笑って、「しろーとなんだから負けて当然じゃないっすかー」なんて言ってるようでは、それこそ命をすり減らしているようなものじゃないか。


 わたしは真剣に、パドックの一頭一頭を吟味していく。わたしだって、今日いちにちボーっとしていたばかりではない。毎レースちゃんとパドックを見てきたのだ。なんとなく、どの馬が強そうかぐらいは分かる、気がする。


「……ふう」


 たっぷり10分ほども眺めていた馬たちが、パドックから出ていくのを見てわたしはため息をついた。


「決まった?」

「ううん、まだ。でもだいたい分かった気がする。3番、5番、8番が強そうに見えたんだけど……」


 間違いない。その三頭だけ雰囲気が違うというか、目に入った瞬間から強そうなのがオーラとして見えそうになっていた。


 あとはこれをどうやって一頭に絞るかだ。……いや、オッズ次第では三頭とも指名するのもありだろうか。


 わたしが悩んでいると、めぐさんがふと思いついたように顔をあげた。


「サトミちゃんが選んだ三頭って、黒い馬ばっかりだね」

「あっ……」




「初心者あるあるだな」


 わたしの10分間はなんだったのか。スタンドに帰ってきたわたしの話を聞いて、副部長はそうずばりと切り捨てた。


「心理的に、濃く暗色の物ほど大きく、強そうに見えるものだ。オリンピック柔道とかを見ると外国人選手が青い柔道着を着てたりするだろう、あれもそういう理由だな」


 と、聞きたくもない薀蓄を聞かされる。けっきょくわたしはしょーがないので黒い三頭のうちから、一番名前がカワイイのを選んだところである。進歩がないと言ってはいけない。


「そういえば、副部長はパドック見ないんですね」


 皆が慌ただしくレース毎に行ったり戻ったりしているのを尻目に、この男だけはスタンド席からほとんど動いていない。


「うむ、俺はデータ派だからな。パドックなどという不確定要素が強いものは見ないことにしているのだ」


 と、『おうまさん週報』をひらひらさせる。


「わたしもデータを参考にしたいのはやまやまなんですが……」


 おうまさん週報に書かれているのは、例えば



『 3/22中山4未勝利芝2000 460①16ト 2.01.5 35.2 +0.5 福永祐54 』



 とかいう暗号ばかりである。見ているだけで頭が痛くなってくる。


「まあ、いきなり馬柱を見ろとは言わんし、初心者がパドックを見て予想するのは間違ってはいないな。ななこ部長もパドックは大事だとおっしゃっていたよ」

「あの人パドック見れるんですか!?」

「当然だろう、部長を何だと思っているのだ」


 アホ毛つき安楽椅子だと思ってますけど。そもそも競馬場に来れるんだろうか……いや当然あのまま来るわけじゃなくて、中の人の話なんだろうけど。


 まあ、中の人のことも気になるが、今は競馬予想の話だ。


「ななこ部長はパドックについて、何か言ってませんでした? ほら、どこを見るべきだとか……」

「それは俺も気になったのでな、一度似たような質問をしたことがあるよ。『部長はパドックで何を見ているのですか』とな」

「それ! ななこ先輩はなんて答えたんですか!?」

「『全部』と」

「ぜんぶ……」


 寡黙なななこ先輩らしい答えだし、そこはかとなく含蓄が深いような気もしなくもない気がするが、今はこれ以上なく役に立たない答えである。


 わたしががっくりと肩を落としていると、副部長はわざとらしく、はたと膝をうった。


「そういえばななこ部長から、君が困っているようだったら渡してくれと頼まれたものがあったな」


 と、自分の鞄から白い巾着袋を取り出した。


「おそっ!? 十レースもう決めちゃったし、あとニレースしか残ってないですよ!?」

「うむ。実は忘れていたのだ」


 悪びれもせず言う副部長にツッこむ気も起こらず、わたしは両手で布の袋を受け取った。開けてみると、小さな紙片と黒いモノ……双眼鏡だ。双眼鏡が入っていた。


 紙片にはかわいらしい字で、ななこ先輩の非常に簡潔なメッセージが書いてあった。


『よく見える』


 ……。


 双眼鏡を目に当ててみた。うん、確かによく見える。


 ……。


「だから何ですか!?」


 わたしはべちーっと紙片を地面に叩きつけた。


「ふむ、何だな。俺は『馬券勝負で困ってたら渡してくれ』という意味だと思ったのだが……」


 と、わたしの叩きつけた紙片を副部長が拾い上げた。


「『レースがよく見えなくて困っていたら』という意味だったようだな」

「まぎらわしいよ!」


 すごい期待したのに! 一瞬すごいパワーアップアイテムが入ってるかと期待したのに!


「まあまあサトミ君、十レースが始まるぞ。せっかくだからそれを使ってみるといい」

「はいはい……まあせっかくなんで使ってみますよ」


 第十レースは芝コースの1200m戦で、スタート地点はトラック状の馬場の、わたしたち側のちょうど反対側だ。双眼鏡を目に当てると、豆粒みたいだったスターター(スタートの合図を出す人だ)が旗を振っているのがはっきりと見えた。


「確かによく見えるのは見えますね……お」


 かしゃん、とゲートが開いて、十五頭が一斉にスタートを切る。一応わたしが指名した馬はどこかと追ってみると、何と先頭を走っている。


「お、案外いいじゃないですか。そのままそのまま……」

「さすがに早いよサトミちゃん。まだ200mしか走ってないよ」

「わかってるよう……ん?」


 はて。わたしは一回双眼鏡から目を離して、くるっとひっくり返してレンズを見る。特にレンズに異常は見られない。


「どうしたの?」

「いや、何か変なものが見えたような……」


 もう一度、双眼鏡を目に当ててみる。馬群はコーナーにさしかかるところ、わたしの指名馬であるラズールリッキーは相変わらず先頭を走っているが、その隣にぴったりとつけて二番手を追走している馬がいる。ジョッキーの緑色の帽子が目に鮮やかな、ゼッケン十番をつけた鹿毛の馬だ。


 その茶褐色の馬体が、どこかきらきらと光をまとっているように見えるのだ。


「じっ、十番! 十番なんかオーラ出してません!? ほら?」

「ん?」

「じゅーばん?」


 左右にいた副部長とめぐさんも目を凝らす。が。


「……何も見えないが」

「十番、フィドゥーシアだよね。人気もしてないし、特に何も感じないけど……」


 二人はかぶりを振った。確かに肉眼では何も見えない。じゃあやっぱりこの双眼鏡のせいだろうか。


 1200mは短く、考える間もなく馬群が最後の直線に入ってくる。わたしはフィドゥーシアの謎のきらめきから目が離せず、ぎゅっと双眼鏡を握りしめた。


 中山競馬場の最後の直線には、スタンドから見てもはっきりと分かるぐらいの登り坂がある。先頭を走っていた馬(わたしが指名したやつだ)はその坂で失速し、後方の集団に飲み込まれていく。他の先行勢も同様に脚色が鈍り、後方で脚を溜めていた馬たちが殺到してくる。


 だが、フィドゥーシアは止まらない。坂をものともせず駆け上がる後足は、土くれとともにますますはっきりと星のような形をとりはじめた光を蹴立てて、先頭の座を譲ろうとしない。


「がああ、差せーっ!」


 田之倉くんの悲鳴のような叫びが聞こえる。その叫びに応えたわけでもないだろうが、後方待機組がフィドゥーシアに迫る。のこり半馬身差というところまで追い詰めたところで……。


 そこが、ゴールだった。


「がーっ、くそう!」


 田之倉くんの声とともに、場内に落胆のどよめきが広がる。フィドゥーシアは15頭中の9番人気、このレースを当てられた人間は極少数だろう。


 しかしわたしには見えていたのだ。レース開始直後から、フィドゥーシアを取り巻いていた光が。ウイニングランに移ってゆったりと走るフィドゥーシアを、その光は最後にやさしく包み込んだあと、ふっと消えた。


「……サトミちゃん?」


 双眼鏡を目に当てたままぼーぜんとしているわたしに、めぐさんが声をかけてくる。


「……っ! わたしパドック行ってくる!」

「え? あたしも一緒に、ってちょっと!」


 わたしはもどかしい気持ちで、双眼鏡を握りしめてパドックへと駆け出した。




 第十レース終了時

 サトミ 15600pt(-2000pt)

 田之倉 19600pt(-1000pt)


 皐月賞。中央競馬競争の中の最高峰レースであるG1競争であり、また数あるG1の中でもクラシック戦という、注目度が高い一連のレースのうちの一つであると言う。


 わたしは人で埋め尽くされたパドックを、三階テラスから見下ろしていた。少し距離はあるが、双眼鏡があれば問題ない。


「……」

「ど、どーしたのよサトミちゃん。置いてかないでよー」


 息を切らして追いついてきためぐさんに、わたしはじっと一頭の馬から目を逸らさずに問いかけた。


「……めぐさん、11番のアルアインってどんな馬?」

「え? どんなって言われても……。毎日杯の勝ち馬だけど、あんまり注目はされてないよ。毎日杯から皐月賞に出て馬券に絡んだ馬ってほとんどいないし、持ちタイムも平凡だしね」

「そっか。じゃああんまり人気はしてないってことだよね」

「うん、今のとこ9番人気みたいだけど……」

「全部」

「へ?」


 極端にオッズが低いと、当たっても逆転できない、という可能性がある。それさえ避けられれば、十分だ。


「全部だよ。アルアインの単勝に、わたしの残りポイント全部」

「え、ええーーっ!?」


 驚愕の声をあげるめぐさんの隣で。


 わたしの双眼鏡ごしの視線は、アルアインに纏わり付く微かな煌めきを、しっかりと捉えていた。



「はあ? アルアインに全部!?」


 スタンドに戻ってきたわたしたちを、田之倉くんの素っ頓狂な声が出迎える。


「お前、勘違いしてるんじゃないのか? 確かに皐月賞はメインレースだが、この後にももう一つレースがあるんだぞ?」

「知ってる」


 わたしに残された15600ポイント、その全てをアルアインに賭けた。本当はそこまですることはないのかもしれない。次レースの分、1000ポイントだけでも残しておけばいいのかもしれない。


 第十レース、双眼鏡ごしに見つけた光をまとった馬が勝った。それはただの偶然や、レンズの付着物や、わたしの気のせいだったかもしれない。勝つ馬が分かる魔法のアイテムだなんて、信じているわけじゃない。


 信じているわけじゃないが、賭けてみようと思ったのだ。ななこ先輩から託された、この双眼鏡に。


 それがダメだったら、何ポイント残っていようが意味がない。


「成る程、背水の陣というわけだな。サトミ君も立派な馬券師に……」

「えい」

「サトミ君、痛いぞ」


 訳知り顔に頷く副部長にイラっとしたのでその向う脛を蹴りつけつつ、わたしは席についた。いずれにせよ、もうあと5分もしないうちに全ての結果が出る。


 もちろん馬券を買っているわけでもないし、勝って誰かから何かが貰えるわけでもない。だけどわたしは間違いなくこのレースになにかを賭けているし、この勝負に負けたらわたしはそのなにかを失うだろう。


 水月先輩が言っていたのは、こういうことなのだろうか。


 スタンドの下、立ち見エリアは将棋倒し事故が起こらないのが不思議なぐらいにぎゅうぎゅうに押し合っていた。わたしたちが座っている周りの通路にも、立ち見客がぎっしりと詰まっていて、一度離れたらもう戻ってこれなさそうだ。皐月賞の動員客数は例年五万人を超えるという。来たときあれだけ広いと思った中山競馬場は、今やレースへの期待と興奮と単純な物量で、でパンパンに膨れ上がっていた。


 やがて発走時刻になり、スターターが壇上に向かい始めると、誰からともなく場内に手拍子が響き始めた。それはさざなみのように場内全体に広がって、轟雷の拍手となった。初めて競馬場に来たわたしにもはっきりと分かる。


 これが、G1なのだ。


 第七十七回皐月賞の、ファンファーレが鳴り響いた。


「……ここを当てて、決めてやる」


 そう呟いた田之倉くんの本命は、ニ番スワーヴリチャード。リードしているから1000ポイントのみだが、『G1を当てたい』という気持ちは別格らしい。勝負としても、わたしの自滅で勝つよりは、自分が当てて決めたいという思いもあるだろう。


 だが、わたしだって勝ちたい気持ちでは負けてない。


「負けないよ」

「言ってろ」


 もちろん走るのは競走馬たちであって、わたしたちではない。しかしわたしたちはわたしたちで、明確に戦っているのだ。


 かしゃん。


 大歓声とともに、皐月賞のゲートが開かれた。皐月賞は芝2000m競争、スタンド前の直線の一番右側からスタートし、わたしたちの正面を通り過ぎたあと一周ぐるっと回って、また同じ直線に戻ってくる。


 双眼鏡を覗き込む。アルアインはやはりあの輝きを纏ったまま、先頭から三番手あたりの位置につけて、正面を通り過ぎていく。スワーヴリチャードは後方で脚を溜めている。


 コーナーを曲がって馬群は向こう正面へ。前半1000mのタイムは59秒ちょうどと発表され、場内がわずかにどよめく。道中のペースはかなり速めらしい。


 ペースが速くなると先行した馬が不利になり、追い込みが有利になると副部長が言っていた。アルアインも、快調に飛ばしていく先頭集団に着いていけないとでも言うように、ずるずると位置を下げ始めていた。


「うむ……」

「あー……」


 副部長もめぐさんも、わたしの全ポイントをつぎ込んだレースとあってアルアインに注目していたのだろう。元々九番人気と、期待されていなかった馬である。そのアルアインが、第四コーナーの出口では後ろから殺到してきた馬群に飲み込まれていくのを見て、力尽きたと思ってため息を漏らしてしまうのも、無理からぬことだ。


 だけど。


 双眼鏡を通して映るアルアインから、煌めきは消えていなかった。


 むしろそれは、どんどん強くなっていって――


「……え!? 来た、来てるよサトミちゃん!」


 馬群に飲み込まれるかに見えたアルアインに鞍上の騎手の鞭が一閃、今度は馬群から押し出されるかのごとく、馬群を割ってアルアインが伸びてくる。


「まさか……二段ロケットだと!?」


 副部長の言う通り、一度位置を下げたのはこの力を溜めていたのだとばかりに、力強く坂を駆け上がる。坂の頂上に達する頃には、内から先頭に立っていたペルシアンナイトに並びかけていた。


「さ、さ……」


 わたしは思わず、あらん限りの声で叫んでいた。


「差せーーーーーーーーーーっ!!!」


 そして、わたしにははっきりと見えていた。


 アルアインの体はあふれんばかりの光に包まれ――


 その走ってきた軌跡に、流星のごとく煌めきを噴射しながら――


 ゴール板の前を、一着で駆け抜けていった。




「あ……」


 どうっと湧く中山競馬場、その一画、ややおも校生ゾーンだけが、一瞬の沈黙に包まれた。


「か……」


 いつの間にか身を乗り出していたわたしは、双眼鏡を下ろし、ぱっと振り向いた。すべての視線がこちらに注がれている。


「か、勝った……!」


 拳を突き上げる。


 その瞬間、場内からやや遅れて、ややおも校生たちからも大歓声が上がった。


「っすすすすっすすすっっっっっっっっっっごいよサトミちゃーーーん!!!」


 大興奮しためぐさんが飛びついてきて、その胸の中にぎゅうぎゅうと顔をめり込まされる。わたしはめぐさんの双丘にぼよんぼよんと顔を揺さぶられながら、信じられない気持ちで呆然としていた。


 信じられないというのは、劇的な勝ちを収めたことよりも、自分の眼に映った信じられない光景。彗星のように煌めく尾を引きながらゴールしたアルアインのことだ。周りの反応を見る限り、あれが見えていたのはわたしだけのようだ。双眼鏡ごしに見た、わたしだけが見た奇跡だった。


「おめでとう、サトミ君」


 副部長が近づいてくる。いつも通りに落ち着き払った態度だが、眼の奥には隠しきれない興奮が浮かんでいた。


「これがアルアインの最終単勝オッズだ。まったく、とんでもないデビューを飾ってくれたな」


 そう言って差し出されたスマートフォンの画面を覗き込む。


 11番 アルアイン 22.4倍


 わたしが賭けたのが15600ポイントだから、払戻は――


「ああ、払い戻し額は349440ポイントになる」

「さっ、さんじゅうよんまん!?!!」


 めぐさんはわたしを抱いていた手にぎゅうっと力を込めた。


「すごいよ! これ、ちょっとした記録かもよ!?」

「すげえ、さすが馬券師部だ!」

「これはとんでもないルーキーが出てきたもんだぜ!」


 周囲のギャラリーからも口々に賞賛の声が上がっている。


 そして、少し離れたところに、ぽかんと口を開けて田之倉くんが立ち尽くしている。さすがの田之倉くんもここで「勝負はまだ分からない」とは言えないようだった。


 最終12レースでは、わたしは双眼鏡は使わずに最低額の1000ポイント、田之倉くんはイチかバチか高倍率の馬券に残りポイント全額を充てたのだが、奇跡は起きず。


 348440pt 対 0pt


 という結果は、長くややおも高校馬券勝負の歴史に刻み込まれることになったのだった。

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